初めての月末テスト
自然魔法の授業程、孤独なものはない。
担当教諭のミレイユの説明を聞きながら、イチイは一人で基礎の基礎の呪文と唱え続ける。
他の人はミレイユの説明に沿って新しい呪文を覚えていくのに、だ。
自然とイチイの定位置は後ろの隅で、皆の邪魔にならないように縮こまっている。
入学してから一ヶ月、火・水・緑・光・地・風と6つの系統の基礎の基礎は皆もう完璧だ。
基礎の基礎くらいなら向いていなくても割と使えるらしい。
上級魔法になればなるほど向き不向きが関係してくるらしいので、2年からは系統別に分けるようだ。
「来週、月末テストを行います」
月末、テスト?
「入学して初めてのテストですね。語学・歴史・地理・自然魔法の4つの筆記テストと、実技は自然魔法・選択課目1種です」
来た、来てしまった・・・。
顔色を青くしているイチイに気付いたのか、付け加えた。
「・・・補習もありますので、大丈夫です」
優しさが痛い・・・。
「総合の点数・順位が上位者のみ張り出されます。あとは前回からの順位の変動もですね。休暇中以外の月末はすべてテストがありますので、心しておくように」
せめて筆記・・・。
テスト前の休日2日間は、お菓子を大量に作った。
勉強するには甘いものが必要なのだ。
兎に角授業内容を頭に詰め込んでいく。
元の世界と同じようなテストなら、経験が多い分、有利なのではないだろうか。
鬼気迫るイチイの勉強振りに、レンが心配そうに見ていた。
さて、いよいよ筆記テスト当日。
筆記に関しては一学年一斉に行われる。
1科目当たり40分と想像より短い。中身も少なかった。
引っ掛かる問題は特になく、時間は半分以上余ってしまった。
午後は、実技である。
剣術と槍術、棒術を選択している生徒はそれぞれの会場でトーナメント戦となる。
残りの生徒は一人ずつ、教室で自然魔法のテストを行う。
イチイは棒術なのでトーナメントの方だ。
自然魔法は明日のテストになる。
貴族の経験といえば剣術と馬術がほとんどである。
棒術は未経験者が多く、イチイも未経験ではあるが、一応冒険者なわけで、圧勝であった。
全試合1分未満ということで文句なしの100Pt獲得だ。
自然魔法が壊滅的な分、ここで稼げて良かった。
翌日。
体術はトーナメント、馬術はタイムアタックを行うらしい。
その間に自然魔法のテストが行われ、今日は人数が多いので一日掛かりだ。
そのため、終わった生徒から順番に帰ることができる。
イチイは特別措置で一番最後だ。
そのまま補習に入るらしい。
補習確実なのだが、そう決めつけられるのもちょっと癪だ。
・・・しょうがないけど。
全生徒が下校して、イチイひとりが残った。