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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
30/154

28

本日、快晴。


絶好のピクニック日和である。


イチイはたくさんのお弁当を抱えて、伯爵家を訪れた。

そして何故かポール・マーガレット・トマ・ロニ・ナッティ・ノアという、意外な大所帯でピクニックに行くことになった。



平原は多くの家族連れで賑わっていた。

まずは敷物を広げ、お弁当を広げる。

おにぎりの具は塩のみ、焼き鮭、おかずには唐揚げ、卵焼き、ミートボール、ウィンナー。

サンドイッチは卵、ポテトサラダ、チキンカツ、コロッケと王道からマイナーなものまで。

オヤツに色んな焼き菓子も持って来てある。

卵焼き・ウィンナー・ポテトサラダはこの世界にはまだないようで、皆の関心を集めた。ウィンナーの原材料は臓物類が好まれていないようなので、言わないでおこう。


お弁当を食べ終えると子供組は草スキーに興じる。大人組は優雅にお茶を飲みながらそれを眺める。

因みに子供組はイチイ以下3人である。

ロニは一つしか上じゃないのに大人振りやがって。

草スキー、楽しいんだから良いじゃないか。


「イチイは不思議な子だね」


大人組の話題に上がるのは最近知り合ったばかりのイチイ。

貴族を貴族とも思わない態度。魔法の実力。冒険者としての腕。料理に関する知識・技術。

本来なら不敬罪とされてもおかしくはない態度もあったが、何故か憎めず、ついつい許してしまう。


「ノアとトマが懐くなんて、珍しいですね」


ノアとトマは意外と排他的だ。

侍女には間違っても懐かず、むしろ嫌悪すらしているようだった。


大人たちは皆、優しい眼差しで子供たちを見守った。



草スキーに疲れきってノアが眠ってしまった。

大人組のところにノアを抱いて行く。

そのまま焼き菓子とお茶でまったりと過ごす。

こういう時、本当に熱魔法は便利だ。

お茶は熱いのに限る。

夏は冷たいお茶に限る、というのだが。



「そういえば、半年後、引っ越すことになって」


「え!?」


「レンが、城下に行くって。それで、魔法学校に通うことになりました」


何故かロニがショックを受けており、トマは羨ましそうにしている。

トマは元々魔法に興味などなかった。

植物に触れ、遊ぶことが楽しく、剣も勉強もほどほどに頑張ってはいたが、四男なので跡目を継ぐこともなく、将来について特に何も考えていなかった。

しかしイチイと出会ってから、短い付き合いであるが、魔法を目にする機会が出来た。

ターザンごっこの時に使っていた緑魔法、地魔法など、先ほどの草スキーでスピードを出すために風魔法など、遊ぶために使う魔法もあるのだと知った。

それまでは戦闘に使うものだという固定概念があった。遊びにも使えるのなら是非自分も使ってみたい。トマはそう思うようになっていた。


「おれも、魔法、使いたいなぁ」


幸い自分は貴族である。父親にいえば魔法を覚えるためにどうにかしてくれるかもしれない。プリアレスト伯爵は浪費家で子煩悩だ。正直ちょろい。


魔力溢れる地で時を過ごせば、魔力は増える。

才能がなくても、だ。

そのため金を出しそういう土地へ行ったり、買い取ったりする貴族は少なくない。

貴族自身が使うこともあるし、お抱え魔法使いを強化することもある。


トマに現在魔力はほとんどないだろう。

だけどこれからの頑張りようでは、半年後、イチイと同じ学年で学校へ行けるかもしれない。

城下まで7日以上かかるので寮に入ることになるだろうが、その価値はある。

魔法が使えるようになれば、将来の選択肢も増えるだろう。


それからも談笑は続く。

ニトロプリアのこと、料理のこと、お菓子のこと、プリアレスト伯爵家のこと。

楽しい時間は過ぎるのが早い。話題は尽きず、やがて夕暮れになる。

ノアが小さくくしゃみをしたのをきっかけに、帰路についた。



イチイはマーガレットという新しい友達を得、上機嫌でうちに帰った。


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