伯爵家2
美女の名前はマーガレット。
プリアレスト伯爵家長女である。
年齢でいうとジョンの下、まだ10代の筈である。
にしては色気が。
長女が去ったあと、入れ替わりに四男のトーマスがやって来た。
ノアと3人でナッティの仕事を見学しながら遊ぶ。
中でも蔓を強化して行ったターザンごっこを2人はお気に召したようだ。
風魔法と緑魔法、地魔法も使ったので、イチイがいないと出来ない。誤ってけがをするということもないだろう。
ノアがトーマスのことをトマと呼んでいることもあり、イチイもトマと呼ぶことになった。
確かに3つほど年下ではあるのだが、相手は貴族。不敬罪になるのではと流石にイチイは思った。
しかしじゃあ、貴族命令、と言われてしまえばどうしようもない。
イチイは親友だとまで言われ、まぁいいか、開き直りトマが貴族だということは忘れた。
こちらの世界では成人しているとはいえ、イチイはまだ子供。子供だから仕方ないんだ、と誤魔化す。
オヤツに果物や栗おこわを食べ、植物で遊ぶ。
小学生の頃、通学路の雑草で遊んだことを思い出す。
トマに負けず劣らずの知識にナッティは内心舌を巻いた。
トマもピクニック行くことが決まり、また詳しく決めよう、とその日は別れた。
さて、大豆である。
味噌と醤油作りだ。
麹さえあれば材料は揃う。
麹もどきはレンに頼み、入手済みである。
日本で使われている麹と全く同じものとは限らないので、成功するかどうか、出来上がりを待つしかない。
火系魔法、熱魔法、空間魔法など、様々な魔法を駆使して仕込んでいく。
不眠不休で仕込み、その間家事などは一切出来なかったのだが、日頃から味噌醤油と唱えていたためか、レンは文句ひとつ言わなかった。
あとは熟成だ。完成はまだまだ先である。
出来あがったら絶対和食三昧にしよう。
仕込みが終わり、泥のように眠り、翌朝。
「お金、どれくらい貯まったの?」
「たぶん、金貨120枚くらいかな」
クエストの報酬と、素材の報酬はここのところかなりのペースで貯まっている。
「実は半年後に城下に移り住むことになった」
「へ?」
「ちょうどいい機会だから、学校通えば」
「へ??」
「3年分、無金利無期限で貸してあげるよ。生活費は今まで通りだからかからないでしょ」
「へ???」
そんなわけで、学校へ通うことが決定したのである。