帰宅
ホルン滞在最終日、朝。
朝食を食べたら出発となる。
仲良くなった料理人たちとももうお別れである。
また遊びに来ると約束した。
今度はレンと栗拾いしたいな。
麻袋いっぱいに詰まった栗を持って、いざニトロプリアへ。
今回の旅は色々収穫があった。
食材は勿論のこと、友達?も増えた。
料理人もそうだが、ナッティとロニとはかなり打ち解けた。
ナッティとは、3歳の娘・ノアを連れてピクニックへ行く約束をした。
ノアは母親を亡くしているので、寂しがっているのだとか。
ニトロプリア北にある平原は、観光地でもあり、モンスターが出ない用に配慮されてある。
休日に家族連れが賑わう、アスレチック公園のようなものだ。
ロニには上から目線良くない、と懇懇と説明してやった。嫌みたっぷりに。
反省しているようだったので仲直り。
ピクニックについてくる気満々のようだ。そんなに弁当食べたいか。
ポールとジョンの覚えも悪くないようで安心した。
礼儀はなっていなかった筈だが実力はないわけではなかったし、イチイの作った菓子を気に入ったようだった。いつでも遊びにおいでというお言葉を頂いた。
次女がいなければ行ってみたいものだ。
カインとは唯一ほとんど話をしていない。
まぁお屋敷に行けばいるだろうし、機会があれば親しくなれるだろう。
冒険者という職業故か、イチイには女友達がいない。
ミィのような幼女は別として。
何故か極端に女性と知り合う機会がない。
貴族ではない女性と知り合いたいものだ。
この世界の菓子以外の流行など、何ひとつ知らないのである。
プリアレスト伯爵家に到着すると、レンが迎えに来てくれていた。
どういう風の吹きまわしろう。
「レン!ただいま!」
「おかえり」
そのやり取りを目撃したポール達は目を見張っている。
「どうかしました?」
「いや・・・イチイ、さんは、レン殿の・・・」
何故突然さん付け。
不思議に思ったがそこはスルー。
「お久しぶりですね、ポールさん。うちのイチイがお世話になりました。久しぶりなので今日は連れ帰りますよ。また明後日」
レンはイチイの手を引いて、ずんずんと歩いて行く。
イチイにばれない様にクライスを睨むことを忘れない。
「・・・電撃には、お気をつけて」
その声はクライスにしか届かなかった。
イチイは麻袋に詰まった栗の半分を砂糖とアルコールに漬け、そのまた半分をシロップ漬けに、残りを料理にした。
栗ご飯に魚の干物、茶碗蒸し、汁物といった和食仕立てだ。
今回の大豆で味噌・醤油が製造出来れば本格的な和食も作れる。
久しぶりの家族団欒な夕飯に、上機嫌な2人。
イチイの土産話(主に新しい友人たちの)に段々と機嫌の悪くなるレンに、イチイは首を傾げた。