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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
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狩りと夕食

ある意味、初の狩りである。

ハロンの山で狩りはしたものの、あれは生きるためであり、娯楽としての狩りではない。

娯楽の狩りは初めてである。

狩りに使う弓矢に中華包丁もどきを背負う。弓矢が増えたのでロッドはお休みである。

上からローブを羽織るため武器はすっぽりと隠れた。

回復薬と傷薬を携帯し、馬に乗る。


今日の狩りに行くのはポール・ジョン・ロニ・カイン、それからカークとイチイだ。

三人ずつ二手に分かれるくらいがちょうど良いらしいので、調子の悪そうなクライスとコヅは明日狩りに同行する。


獲物は鳥類とウサギ、シカ、クマである。

そう、クマなのだ。下手なモンスターよりよっぽど強敵である。

そのための護衛といっても過言ではない。

下級モンスターくらいなら、ロニとカインだけでも十分なのである。それなのに護衛を雇ったのは、クマの存在。それから、まぁ、端的にいえば疲れるからである。

これだから貴族は、とイチイが思ったのは言うまでもない。



弓矢の扱いはほぼ初めてで、イチイには上手く扱えなかった。

それならばいっそのこと魔法で射る方が簡単だ。でもそれだと楽しくないので、結局イチイはほとんど狩りに参加しなかった。

代わりに籠いっぱいの木の実や果物、栗を集めた。こちらの方がよっぽど楽しい。元々フルーツ狩りは大好きだ。

ジョンの仕留め損ねたクマを魔法で仕留め、その日はそれでお開き。

仕留めたクマやシカ、キジなどで豪華な夕食となった。

クマ肉を少し分けて貰えた為、レンに良い土産が出来た。

栗と組み合わせた創作料理でも作ろうか。


2日目はフリーとなったのでカークと共に食堂で栗料理を食べた。

栗のポタージュとコロッケの定食は美味しかった。とくにポタージュは美味しい。是非家でも作ろう。


日中の暇な時間、折角なので町中を散歩する。

とは言っても小さな町なので、すぐに暇になってしまう。


「カークさん、どうしましょう?」


イチイもカークも、良い案が浮かばず困り果てていた。

狩りの最中は邪魔になるので栗拾いにも行けない。


「お菓子作るとか、どうかな?」

「お菓子、ですか?」

「そう。貴族にぎゃふんといわせるお菓子」


なるほど、イチイの愚痴を覚えていたらしい。

カークはなかなか、良い性格をしているようだ。


ありがたいことに別荘の厨房を使わせてもらえることになった。材料もあるものを使って良いという。

折角の栗の産地なので栗を使ったお菓子を作ろう。


何にしようか、モンブラン?マロンパイ?タルト?栗きんとんや栗饅頭という手もあるが材料が不足している。ここはマロンパイにしておこう。


まずはパイ生地。休ませている間に栗の下拵え。

中に詰めるのはアーモンドクリーム。

バターが大量に使われるので栗一個分の大きさで小ぶりに仕上げよう。

焼き上がりにアイシングで模様をつける。


余ったパイ生地はカスタードを挟みミルフィーユと、パルミエにした。

パルミエはいわゆる源氏パイ、パイ生地が余るとよくこれを作る。


興味津津に料理人たちから見つめられるので試食会を開いた。

その味に食感に感動した料理人たちと何故か夕食も一緒に作ることに。


イチイは楽しい時間を過ごせた。

あと一日あるフリーの日は、また一緒に作る約束をした。


今まで見たこともないデザートに舌鼓をうつ貴族に、イチイは笑顔で「庶民の作ったものですがお口に合ったようで何よりです」と言い放つのだった。


その様子をみていよいよ不敬罪になるのでは、と冒険者一行はハラハラしていたという。



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