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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
24/154

ホルン3

イチイの乗っている1台目の馬車には、案内人であるナッティが同乗している。

元はホルンの出身でこうしてホルンに赴く際は同行し、普段はお屋敷で庭師をしているのだという。

イチイは普段から不思議に思っていた。

あんなに好き勝手成長してしまう植物のいる庭を、どうやって整備するのかと。

好き放題成長するおかげでハーブや野菜・果物の一部はまったく買わず住んでいるのだが。


「ん~、普通はそんなに好き勝手成長しませんよ」

ナッティはにこにこと、穏やかな口調で言う。

「緑系魔法の得意な方で大きい魔力の持ち主だと、そういうこともあるかもしれません」

なるほど、とイチイは思う。

緑系魔法が得意、というわけではないが、イチイもレンも大きい魔力の持ち主だ。

2人もいるからどんどん成長してしまうのか。

ナッティの作る庭は、女性受けの良い華やかな花の多い表の庭と、四男であるトーマスが遊ぶために作ったという中庭がある。

特に中庭はイチイの興味をそそる。

登りやすい木、おやつになる果物のなる木、蔓が工作に使えそうなもの、など。

今まで食用以外の植物には興味がなかったのだが、中庭の植物は面白そうだった。

主人の了承を得られれば、中庭を見せてもらえることになった。

トーマスがもし貴族でないのなら良い友達になれそうだったのに、残念だ。

イチイがナッティの隣で馬車の扱いを覚えながら談笑しているのを、ロニは何か言いたそうにちらちらと視線を投げる。

先ほどはオヤツに持ってきていたシフォンケーキをナッティにだけお裾分けした。

何か言いたそうだったので「何か?」と笑顔で突き放した。

シフォンケーキはまだこちらの世界では流通していないらしい。

バターを使わず油を使うので、クリームを添えないのであれば安く仕上げることができる。

あのふわふわの生地は受けるんじゃないだろうか。

いずれを店を開くことになれば、主力商品に出来そうだ。


日が暮れる頃、またもや村に辿り着く。

そんなにホルンに行きたいならもういっそのこと住めば良いのでは、とすら思う。

この日の夕食は鶏肉の香草焼き、豆のスープ、バケット、フルーツという前日とは打って変わってシンプルなものになっていた。とは言ってもバケットについていたペーストは数種類ありどれも高級食材で鶏肉も骨付きでがっつり出て来たのだが。

さて問題は、豆のスープである。

今まではひよこ豆だとか白いんげんだとかだったのだが、今回はなんと、大豆である。

イチイのテンションはがつっとアガった。周りが引くくらいには。

その勢いのままポールに絡み、大豆を分けてもらうことになった。

庭で栽培して、醤油や味噌を作りだすことも可能かもしれない。

イチイのポールに対する好感度がわかりやすく上がった。

貴族たちに大豆がそんなに美味しく感じるとは、今までどんな生活を・・・と変な誤解を生んでいるとは知らず。




今回のクエストは本当に有意義だ。

今までも色んな食材を入手してきたが、今回が一番凄い。

あとは出汁用の昆布などがあれば、和食が一通り出来る。

帰ったら出来るだけ早く醤油・味噌作りに着手しよう。

うどんやそばの麺類も作りたいし、どんぶりものも良い。

刺身はもちろん、照り焼きや煮物、楽しみだ。

菓子屋だけでなく和食屋もよいかも、と夢が広がる。











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