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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
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20・ホルン

1台目の馬車に案内人のナッティ・従者のロニ・イチイ、2台目に貴族の長男であるポール・ポール専属の護衛・クライス・カーク、三台目に次男であるジョン・従者のカイン・コヅがそれぞれ乗り込んだ。

貴族と同じ馬車ではなく、3人には悪いがイチイはほっとした。

日中だけとはいえ7日間限られた空間で貴族と一緒では戦闘でもないのに疲れてしまう。

挨拶をした時の様子だけでいうと、ポール様もジョン様も良い人そうだった。しかし様付けをしないとならないというだけで疲れる。慣れていないのだ。

一台目の馬車の役割は先導は勿論、盾でもある。

一番狙われやすいのはやはり一番先頭なのだ。そのため、魔法が使えるイチイが一台目に乗った。モンスターを視覚してすぐ、遠距離からでも討てるようにだ。

従者のロニも長剣・弓の扱いに長けているらしく、イチイのフォローをしてくれた。

貴族の従者ということはロニ自身も貴族かそれなりの身分なのだろうが、とても気さくな人物だった。イチイと歳が近いこともあり、すぐに打ち解けた。

見えない、未成年かと思ったと大いに驚かれたが。

因みにこの世界の成人は女性は14歳、男性は16歳である。

婚姻に関しては未成年でも関係なく、10代であればよく、それでも婚期は10代後半から20代が一般的で、中世ヨーロッパ風なのに意外と晩婚だと思った。



「しかしイチイは、魔法が上手いな。学校へ行ったのか?」

「そう?ありがとう。学校は行ってないよ。お金が貯まれば行きたいとは思っているけど」

魔法が上手、下手というのはイチイにはわからない。

技術で言えば桁違いなレンしか知らないし、それも系統が違う。

「へぇ・・・プリアレスト伯爵に推薦してやろうか?イチイ程の腕があれば伯爵も喜ぶし」

「えーと・・・それって、卒業後仕えるのが条件なんだよね?」

「まぁそうなるな。自由ってわけにはいかないが条件は良いと思うぞ」

「ありがたい話だけど・・・私菓子屋経営したいし」

「はぁ!?」

何故そこまで驚く。そんなにおかしいことなんだろうか。

「そんな魔法の腕あって、冒険者やってて、菓子屋?」

「うん。おかしい?」

「おかしいっていうか勿体ないっていうか子供みたいっていうか」

「子供みたい?」

勿体ないはわかる、菓子屋では魔法の腕は生かせない。

「ニトロプリアの子供の8割は菓子屋になりたいっていうんだよ。人気店があるからか」

なるほど、あの店をみて育ち、憧れる子供は確かに多そうだ。

「実際食べられるってわけでもないし、成長につれて皆現実的になっていくけどな」

「んー・・・私、お菓子作るの好きで、よく家でも作るんだ。オリジナルのお菓子とか考えるのも好きだし」

「ふぅん・・・飴とか、メレンゲ菓子とか?」

おっと、何だか侮られた気がする。

飴やメレンゲ菓子は乳製品が入っていないため、安い菓子屋で売られている代表だ。高級菓子屋でも売られているが肩身は狭い。被害妄想だろうか。

確かにイチイは古いローブを着ていて中の服も銅貨一枚の代物だったりするが、ローブはレンの加護付きで大切なものだ。

ある程度見た目で判断するのは仕方がないことだと思うが、本人を侮辱するようなこと、何故口にするのだろう。次女には悪意があったが、ロニに悪意があるかどうかは判断がつかない。

「飴はあまり作らないかな」

メレンゲ菓子は作ることもある。オーブン代わりの熱魔法が面倒ではあるが、軽い食感がお茶によく合うのだ。ナッツを入れると美味しい。

バタークリームを挟んだマカロンやダッコワーズも好きだ。

メレンゲ菓子は庶民の味、というイメージが定着しているため、バタークリームを挟むということに思い至っておらず、どちらも開発されていない。勿体ない。

「うち、わりとお金あるのでバターも牛乳も使ってお菓子、作ってますけどね」

イチイはにっこりと笑って言い放った。






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