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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
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栗を求めて三千里

この世界の生態系は特殊だ。

植物はかなり元の世界に近いのだが、季節感や地域など、まるっきり無視しているのだ。

温室でもないのに年中苺が生えていたり洋梨が実っていたり。

いつでも食べられるのは嬉しいのだが、情緒がないっていうか。

植物性食品も動物性食品も、流通がうまくいってないからか手に入りにくいものが多い。

そういうものは自分の手か人の手かで現地調達するしかない。

そう、現地調達すれば良いのだ。


「というわけで20日程留守にします」

「何がというわけでなの」

「栗拾いに行きたい。っていうか行く」

「誰と」

「クライスさんたちパーティと」

「却下」

何で、横暴だ、と駄々を捏ねるイチイに、レンの冷たい眼差しが突き刺さる。

「だって栗、美味しいんだよ。栗ご飯、食べたい。醤油なくても作れる和食は貴重なんだよ」

和食という言葉にレンが怯む。

イチイは事あるごとに和食が食べたいという。

でも醤油が、味噌が、と嘆くので、レンもそれとなく調べてみたが、見つからなかった調味料。

それらがなくても作れる和食となればそれは作りたいだろう、食べたいだろう。

和食というのはイチイの今はない故郷の料理だという。

「それにマロングラッセとか甘露煮にすれば長期保存も出来るし。お菓子の材料にも欠かせないんだよ、色々作れるんだよ」

ねぇねぇ、と強請ってくるイチイに、段々絆されていくレン。

「・・・わかった。ただし、条件がある」




今回のクエストは馬車で片道7日の道のりである。

ロハとは逆方向に山脈地帯に向かう。

ニトロプリアを治める貴族の護衛で、この貴族が栗拾いに行くのだという。

メインは栗拾いでなく狩りなのだろうが、イチイにとってのメインは栗拾いである。

わざわざ護衛をするメリットは、その給金と経費である。

馬車3台で野営はせず、途中の町や村で宿を取る。

宿代・食事代は向こう持ち。お金がかからず旅が出来るなんてなんてお得なんだろう。

貴族だということに引っ掛かりはあるが、行ったことのない地域の食べ物、おまけに栗も手に入るだなんて素晴らしすぎる。

他のクエストと被っていないクライス・コヅ・カーク+イチイで護衛を受けることになったのだ。

貴族と20日間も一緒で大丈夫かと心配ではあるが、長旅なので女性はいない。そうなると菓子店であった侍女たちはいないので、まぁ大丈夫だろう。居たらたぶん喧嘩になってしまうだろう。イチイは意外と短気である。

明日の朝、貴族の屋敷に挨拶に行き、そのまま出発となる。

今までで一番長い旅路となるので、万全な準備をしていこう。










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