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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第二章
20/154

菓子店

イチイはお菓子も好きである。

ニトロプリアの菓子店は、専門店ということもあってかロハの町の食料品店よりも、種類も質もついでに値段も比べ物にならない。

乳製品が高価なので、バターやクリームを使うお菓子は庶民には手が出ないような代物だ。

レンはこういうお菓子に糸目はつけないので、イチイもその恩恵に授かっているが。

だがやはり、乳製品の流通が十分でないということは、向こうの世界に比べて菓子業界が発達していないということでもある。

すなわち、種類が少ない。

イチイの好きなお菓子の半分以上がこの世界には存在していないようなのである。

甘味大王なレンが知らないというのだから、きっと存在していないのだろう。

残念すぎる。

なので最近は自分で作るようにしている。

自然魔法と補助魔法(主に使うのは固定魔法・空間魔法)を覚えたおかげで不自由なく作れるようになった。

元の世界に戻れる方法が見つからなかったらお菓子屋さんを営むのも良いかもしれない。

ついでに調理器具やレシピを売れば一財産築けそうだ。

やっぱり目指すは一国一城の主ってやつだ。




菓子店に入ると、煌びやかな世界が広がっていた。

ちょうど貴族の遣いが来ているらしい。

この店は高級嗜好なので貴族の茶菓子としても使わているようだ。

イチイはこの貴族たち気に食わない。

ニトロプリアの菓子店はこの店以外はお手頃価格なのだが、貴族たちは食べたこともないのに安さで馬鹿にするのだ。

確かに乳製品を使っていないお菓子がほとんどなので、味の種類も質も違うのだが、別に馬鹿にしなくても良いと思うのだ。

好きでないならそれで良いと思う、ただそれなら話題にしなければ良いのにと思うだけだ。

安くて美味しい店を出して貴族お断りにしてやろうか、そう思うほどには嫌っていた。

さっさと帰ろう。

イチイはまだ食べたことのないお菓子をふたつ手に取り、会計を済ませた。

この世界のお菓子は全種類食べて作れるようになりたいと思っているので、勉強のためだ。

「いやぁね、こんなところにまで貧民が」

「しっ、聞こえるわよ・・・」

くすくすと笑い合う女達。

中心にいるのは領主の次女であるジュリエッタと、その侍女たちである。

貴族が連れ回す侍女達は下級貴族の出が多く、庶民にしてみればどちらにせよ頭が上がらない。

下手をすれば不敬罪にされてしまうからだ。

彼女たちに比べれば綺麗な格好をしているわけではない。しかし庶民ではなく貧民とは失礼な。

イチイは下手な貴族よりよほど金持ちである。

しかしわざわざそんなことで張り合っても仕方がない。

聞こえてない振りをして素早く店を出た。



「イチイ!」

店を出てすぐ呼び止められた。

「クライスさん、こんにちは」

「おー。なぁ、良いクエストあるんだけど、ど?」

「良いクエストとは?」

「とりあえずギルドに行こうぜ。詳しいことはそれからだ」

いつも以上に笑顔のクライスに、イチイも期待に胸を膨らませた。







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