side.レン
「おはよう!」
魔法が使えるようになったからか、イチイは朝から明るかった。
上機嫌でオムライスを作っている。
オムライスは、イチイがこの家に住むようになってから初めて食べた。
イチイの作る料理はどれも変わっていて、美味しい。
ハンバーグも、グラタンも、カルボナーラも、卵サンドも、初めて食べたものばかりだ。
食生活が充実した。
庭にハーブが増えた。
家が毎日綺麗だ。
家が、明るい。
イチイが来てからすべてが変化した。
世界が変わった。
また、世界が変わる。
だけどそれは元に戻るだけだ。
寂しいだなんて思わない。
最初から、そういう予定だったはずだ。
近いうちに、イチイはこの家を出る。
イチイに身寄りはない。
もしかしたらあのいけすかない男のところに行ってしまうかもしれない。
自分と違って背も高く、鍛えあげられた肉体。
比べて自分の貧弱なカラダ。身長もイチイより5センチ程しか高くない。
思考を切り替える。
魔法薬のことを考えよう。
ずっと魔法薬の研究に没頭してきた。
これからもそうであればよいのだ。
「レン?」
「・・・何?」
「いや、溢してるんだけど」
「あ」
「どうしたの?寝てる?」
「寝てるかもしれない」
「みたいだね」
「ねぇレン」
「出て行くの、いつでも良いんだよね?」
「あぁ」
「じゃあ・・・」
「ずっと、ずっと先でも良いよね」
見上げると、イチイの目が潤んでいた。泣きそうだな、と思う。
「レン、いつでも良いって言ったし。それにほら、何かあったとき一人じゃないほうが便利だよ。夜花草だっていつでも採りに行くよ」
「・・・家族、みたいだって、思ってる。レンにも、そう、思って欲しい。ここに、いたい」
「・・・良いよ」
今は家族でも。
いや夫婦も家族だし。うん。
イチイは、僕の、