魔法使いのクリスマス
妄想部の活動、隣の世界にトリップから続く蛇足の蛇足です。
未読の方は是非。
http://mypage.syosetu.com/144526/
まず店の壁にサンタやトナカイ、家やツリー、プレゼントといったクリスマスらしいものを描く。
魔法で消すことが出来るので、割と好き放題出来る。
丸くて平べったい、おはじきのような形の魔道具を、線に沿ってペたぺたと貼り付けていく。
この魔道具は、明るいうちに魔力を吸収して、暗くなると光るのだ。
おはじきもどきに一個ずつ魔方陣を描き、常時点灯型と点滅型の2種類を作った。
勿論着色もしてる。
赤・黄・青・橙・緑・紫・桃・緑とカラフルだ。
「ねぇいっちー」
「うん、いっちーはやめようか」
間髪入れずに言ったイチイに、トマがこっそりぷくく、と笑う。
そこ、笑わない。
「この魔道具さぁ、名前何にするー?」
3人で徹夜して作ったこの魔道具。
そういえば名前なんて考えてなかった。
イルミネーション。電飾。チカチカ。ライトアップ。ルミナリエ。
いやルミナリエは駄目だろう。
世界は違うから駄目ではない気もするが。
「んー・・・魔玩具部門だし、トマの好きな名前で良いよ」
「じゃあ考えとくー」
店のディスプレイに使用する他、試験的に魔玩具として販売することにしたのだ。
値段も高いわけではないが安くもないので、そんなに売上は伸びないだろう。
同じ色を5個セットにして販売。
色や数を揃えれば色々描けて面白いと思う。
ただこの世界ではルミネーションなどないので、どこまで受け入れられるかわからない。
「よし、完成」
店内とディスプレイショーケースが一気にクリスマスらしくなった。
ただしイチイの知る日本のクリスマスだ。
クリスマスのないこの世界では。サンタクロースなんかただのおじいさんにしか見えないだろうな。
「夜が楽しみだねー」
トマが楽しそうに笑う。
「家の庭にも描こうかな」
「いいね、それ」
トマの提案に賛成する。
自宅でやっていれば、それを真似する人も出てくるだろう。
町中がにぎやかになれば面白い。
貼れる場所は壁だけではない。
魔法で固定されるようになっているので、植物にだって、生物にだって貼り付けることが出来る。
夜中にウォーキングしている人がよくつけている、安全帯にもなる。
まぁ必要ないけど。
日本でなら似たものをよく見掛ける。
ライブ会場、祭り、階段、自転車、ペットの首輪。
応用はきくが果たしてこの世界でそれが必要かどうか。
夜になり、店がにぎやかに光る。
量が多すぎて目がチカチカするような気もするが、トマは楽しそうだ。
レンも魔道具の完成を見て、安堵している。
お客さんの反応も上々だ。
物珍しさからか楽しんでくれている。
魔玩具もひとつ売れた。
少しずつ売れる良い。
「明日家の庭ぺたぺたしよーっと」
「じゃあ私は雑貨屋と食堂の方に貼り付けようかな」
2人がああでもない、こうでもないとアイデアを話し合う。
その様子を見てレンは微笑みを浮かべる。
魔玩具の開発は主に2人の遊び心から生まれる。
この光の魔道具も、色々と進化していくことだろう。
翌日2人はそれぞれの芸術を作り上げた。
その作品を見た他の商店が、模倣を始めるまであと3日。
謀ったかのようにクリスマスイブだった。
そして毎年、この時期のイスフェリア城下町は光に溢れ、新たな観光地として発展するのであった。
だがそれは数年後の、今はまだ誰も知らない話。