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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
蛇足
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リオレサーエル伯爵邸 *ミカより視点

リオレサーエル伯爵邸にイチイがやって来たのは、戻って来て半年以上経ってからだった。

すぐ訪ねて来てくれても、と思う反面、自分も会いに行かなかったし、そもそもトマのいない状況で会うのは初めてかもしれない。

端的に言うと、そこまで親しい間柄とは言えない、ということ。


「ミカ様、お久しぶりです」


「あぁ、久しぶり」


「これ、お土産です」


流石はイチイ。

お土産といえば食べ物と決まっている。


「今日はどうしたんだ?」


ただ懐かしいからと会いに来るような人間でないと分かっている。

意外と淡泊というか、商人というか。


「実はですね・・・」







「翻訳機・・・?自分用か?」


「や、まぁ自分のためもありますが、あると助かると思うんですよね。誰もが学校で語学を習うわけでもないし・・・」


「それは確かにそうだが・・・」


「4カ国の結びつきをより強固なものにするため、とでも言いましょうか」


言っていることは立派だが、本心は自分のためだ。絶対そうだ。


「考えているのは、四カ国の言語を専門的会話以外をすべて収録して、音声なり打ち込みなりで翻訳するもの。それとは別に、自分の伝えたいことを相手に直接わかる言語に変換して出力するもの」


「・・・なんだって?」


「長くなりますが・・・まずこちらを見てください」


それからのイチイは饒舌だった。

画面に文字の打ち込みが出来る板のついた装置を取り出したイチイは、素早い打ち込みで”翻訳”についての説明を始めた。

装置は元の世界で一つの家庭に複数あってもおかしくはない、一般的な道具であるという。

こんな進んだ世界から来たのであれば、この世界は酷く不便なのではないだろうか。


「で、こちら」


”電子辞書”という薄いカードのようなもの。

中を開くと装置と同じような文字列。


「翻訳だけを目的としたものなんですが・・・試作品第一号はこれを改造して作ってみました」


イチイの世界の言語を入力すると、リリスフィア語で変換されるというものだ。


「スーに協力してもらって作ったものです」


イチイの世界の言語とリリスフィア語なので、他の人には使えないが、これの4カ国共通のものを作れば確かに利用価値がある。


「まぁこれを改良して行きたいなと。で、ミカ様にも是非ご協力を」


「なるほど・・・確かにこれは面白そうだ。いいだろう、協力する」


「ありがとうございます。これは研究用に置いていきますね」


「あぁ。研究成果はお互い取りつつやって行くということで良いんだな?」


「はい。最終目標は言語の収録をせずとも意思の疎通の出来る魔道具、ですから」


「ああ。私はそちらから研究を進めていこう」


「それでは、また近いうちに」







元の世界特有なのか、イチイの発想力にはいつも驚かせられる。

学生時代から今まで、どれだけの発明をしただろう。

あれで婦人だというのが惜しい。

男であればもっと活躍出来ただろう。

ここ4カ国ではあまり女性の活躍の場はない。

若いうちはまだいいが、イチイの年齢はすでに、貴族として結婚していなければおかしい年齢。

そのうち頭の固い連中きぞくがイチイを排除しにかかるのでは、と思う。

”女の身で短期間で成り上がった”と、一部から軽視侮蔑されているのは周知の事実。

それに負ければイチイの未来は閉ざされる。

そこまで考えてはっとする。

イチイには後ろ盾があるではないか。

イスフェリアの王族・侯爵家・チガヤの王族・公爵家・リリスフィアの王族・ヘーリングの王族。

改めて考えると凄いな。



伯爵家という立場は、イチイの持つ後ろ盾に比べれば強くないものだ。

だがそれでも、イチイを排除しようとするならば―――

微力ながら阻止したいと思う。





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