ケイトの心情 *少し暗い?
物心付いた頃から、彼女の記憶が少しずつ視えるようになった。
幼すぎて自分の記憶か、彼女の記憶かわからずに、おかしな言動を繰り返していたように思う。
周囲は立場もあってか腫れ物扱い。
勉学の才能、魔法の才能はあったから、神童だと騒がれた。
俺の才能?違うな。彼女の才能、努力して手に入れた実力、だ。
俺がどれだけ努力しても、それは彼女の才能があってこそ。
俺の才能でも実力でもない。
暗い感情だけで満たされた俺を助けたのは、やはり暗い感情だった。
才能溢れる彼女の、失くしたモノ。
彼女の息子。
彼女が息子をなくす記憶、それを見れば見るほど、歓喜した。
彼女でさえ、どうしようも出来なかったこと。
彼女の堕ちていく記憶。
俺が、もし、彼女の息子を見つけたら?
それを考えるだけで良かった。
彼女は既に故人、どうすることも出来ない。
俺は今生きている。
息子を探すことも出来る。
その事実だけで、救われた気がした。
何度も繰り返し記憶を見ることで、何故か息子への執着が生まれる。
元々親子だったからだろうか?
会いたい、会いたい、会いたい。
彼女の呪縛から解けたと思ったら、次は息子への執着。
精神状態がおかしくなった俺は、よく息子の話をしたらしい。
息子の話を聞いた両親は転生の可能性に思い当たる。
そして転生といえば、神教だと、総本山であるガデス神教の大神殿へと連れて行かれた。
戒名の名を。
そう聞かれて、俺は答えた、らしい。
キャサリン、と。
それは女性の名だといわれ、俺は初めてここで意識が戻ったのだと思う。
キャサリンが駄目なら、ケイト。
彼女は俺だ。
この時から俺は俺になった。
イチイに初めて会ったとき、すぐに分かった。
すぐに話し掛けた。
イチイに記憶がなく、俺のことがわからないのは残念だったが、それはそれ。
近くにいられるだけでよかった。
遠くから見守れるだけでよかった。
愛しい我が子。
イチイが元の世界に帰ることはわかっていた。
もし術が成功すれば再びこちらの世界に戻って来ようとすることも。
だから魔方陣に手を加えるべく、ハロンに向かった。
そして―――――
「ケイト?」
「ん?」
「どうしたの、ぼーっとして」
「んー・・・幸せ、だなぁって」
「?、?」
「イチイが傍にいてくれるだけで、幸せ」
イチイさえいれば、それだけで。
「だから一生、傍にいてね」
―――――この魂の呪縛から、そう易々と逃れられないと思うけどね―――――
後日改稿します・・・orz