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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
蛇足
146/154

ヘーリング王国にて

トゥレがヘーリング国王の弟と婚姻関係を結んだ。

レンとトゥレは親戚扱いになるのだろうか?


イチイは爵位が子爵ということで、結婚式には招待が難しかったらしい。

トゥレは残念がっていたが、仕方がないことだ。

イスフェリアから結婚式に招待された重鎮は侯爵以上である。



イチイは結婚式の後日に開かれる夜会に招待された。

舞踏会とでもいうのだろうか。

貴族になって初めてそういうものに呼ばれたのでよくわからないのだが。


こちらは爵位の上位下位などはあまり関係がないらしい。

貴族同士の出会いの場ということもあり、若い貴族が挙って招待される。

ヘーリング城下町に支店を出す気であったため、ちょうど良い。

時期を合わせて動くことになった。

それもあってトゥレはイチイを招待したのでは、とまで思う。


イスフェリアにはスーとトマ、ロニもいるので問題ない。

イチイは単身ヘーリングへ入り、夜会終了後、中古の店舗を物色。

購入後、人材育成に入る。

そのため、短くても一月はヘーリングに滞在することになる。





夜会には結婚式に出席した貴族たちもいた。

結婚式はかなりの盛り上がりを見せたらしい。

トゥレのドレス姿はさぞかし綺麗だっただろう。



『イチイ』


『ディア。久しぶり』


ヘーリング語は少しは上達したとはいえ、未だ苦手なままである。


『そうだな。帰って来てくれて嬉しいよ』


今では仕入れを転移の魔方陣で行うようになっているので、ディアに会うことはあまりない。


『今度こっちに店を出すって?』


『うん。トゥレ様に?』


『あぁ。嬉しいな、暫らくこっちにいるんだろう?』


『そうなる。よろしくね』


『手伝うから、何でも言ってくれ』


『ありがとう』


『しかし・・・ドレスではないのだな。良く似合う』


イチイはドレスではなく、タキシードのようなものを着ている。

本来なら男性用の礼服なのだが。

上位貴族よりも下位貴族が着る、夜会に出席してもおかしくない服である。

男装っぽくてイチイは割と気にいっている。


「えーと・・・『レンが用意してくれて』


『虫除けか』


「え?」


聞きなれない単語だったため、聞き取れなかった。


『もう一回』


『いや・・・良く似合うなと。本当に性別さえ違えば好みど真ん中なんだが』


『・・・何かすみません』


イチイが悪いわけではないのだが、つい謝る。

だって本当に残念そうなんだ!


『いや・・・むしろ良いのかもな。兄上が結婚したから順番的に次は私だ。私と結婚しないか?』


『遠慮する』


愛のない結婚はいりません。

元より30くらいまでは仕事に専念したいので結婚する気もない。


『即答だな』


『愛のない結婚は要りません』


『愛ならあるのに』


笑いながら言われても。

女の中では好かれているのは分かっているが。

胸がないからか?

失礼な。


『その顔も細身なのに筋肉質なところも本当に理想通りだ』


『褒められている気、しない』


『褒めている。それにその胸の大きさも許容範囲内』


『セクハラで訴えて良いよね』


ディアの義姉2人とも知り合いである。


「ヒツジ様!」


「あ、トゥレ様。本日はご招待頂き、」


「堅苦しい言葉は要らないわ!ヒツジ様、良い中古の店舗が見つかりましたわ!」


「はい?」


「うふふ、もう確保しておりますのよ。近日中に是非見に行って下さいませ」


「・・・ありがとうございます」


行動、早い。


「早くヒツジ様のお菓子が食べられるお店が出来て欲しいですわ」


ヘーリング王国は暑い国だ。

氷菓子は屋台で売っていたが、焼き菓子の類は見なかった。

そんな国で上手くやれるだろうか?

やれなくてもやるのが仕事ではあるが。

そうだな、冷やし善哉やパフェ、ゼリーやムースの冷菓をメインにしてみるか。

勿論トゥレのためのマカロン、ロウェナのためのチーズケーキも取り扱うが。


「そうだわ、ヒツジ様、ディア様と結婚して下さいませ!」


「いやいやいや」


「駄目ですの?そうしたらヒツジ様、ずっとヘーリングに居られますのに」


「うーん・・・そんな理由で結婚はちょっと」


根っからの貴族ではないので、政略結婚もどきはごめんである。

国を担うわけでもないので特に。


「仲がよろしいのに?」


「仲が良いのとそれとは別問題ですよ」


トゥレはまだ納得のいかないような顔をしていたが、イチイは無理やり話題を変える。


「そういえば、店舗はどういった感じですか?」


「フォードが探してくれたんですの!凄く素敵なお店ですわ」


店舗についての話が始まり、内心助かったと思うイチイ。

イスフェリア語での会話なので、ディアはよく分かっていない。

黙ったままトゥレとイチイを微笑ましそうに見ている。


イチイを見ながら眼福だと思っているなどとは億尾にも出さずに。









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