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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第七章
142/154

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模擬戦も終わり、修了式である。

修了式は卒業生のみ全員出席、教職員はいるが、在校生はいない。

先輩とは多少交流はあったものの、後輩は交流がなかった。

陰からイチイたちに憧れる後輩は多々いたが、恐れ多くて声を掛けることが出来ないという風に思われていたのだが、イチイは知る由もない。


一人ずつ名前を呼ばれ、修了証として免許証のようなものが手渡される。

大人数の名前が呼ばれたあとに功績を残した生徒という順だ。

名前などが記入されるのは表面、裏に功績が記されているのである。

この功績は学内の剣術大会や模擬戦の結果、勿論研究の成果も含まれる。

必然的に両面で活躍したイチイが一番長い。



「イチイ・モンテ・ハロン・ヒツジ殿。3年次、4年次模擬戦連続優勝。数多くの魔道具開発・魔法開発。国菓子の開発と史上最多の功績を残した貴殿を称え、本年度首席とさせて頂く」


一礼し、修了証を受け取る。

ずらりと並んだ功績の一番下、首席の文字がある。

其処も記載されるんだ・・・。



学校長やリリスフィア国王の言葉といったお決まりのプログラムを終え、修了式は終了。

あとは思い思い、先生と友達と語り会い、順次宿へ領地へと帰っていく。

城下町の宿は満室だろう。


イチイもヘレンやカトレア、メグと語る。

明日の朝それぞれの領地に帰るので、これで会うのは最後。

3人も同じ場所へ招かれるのでもなければ、今生会うことは叶わない。

そんな立場にいるのだ。

貴族の令嬢って大変だな。



「ヘレン!」


「ブラックマン・・・」


ブラックマンも、これでヘレンに会うのは最後かもしれないのだ。

領地は遠くないとはいえ、他の領地に行くことは早々あることではない。


「ヘレン、結婚しよう」


これにはイチイも吃驚する。

こんな大勢の前でプロポーズするとは。


「ごめんなさい、私は・・・」


まぁ、当然こうなる。

イチイもブラックマンも、こうなることは想定していた。

当然の結果である。


「侯爵家は継がない」


「え?」


「俺は次男だし、継がなくても大丈夫だ。アルフレシア子爵家に、婿入りさせて欲しい」


「何バカなこと言ってるの!?貴方侯爵家なのよ?それを子爵家に婿入りだなんて!」


貴族社会に疎いイチイにはよくわからないが、子爵家と侯爵家はものすごい差があるらしい。

イチイは最近まで爵位の順も知らなかったくらいなので、それも当然である。


「アルフレシア子爵殿。私をヘレン嬢の婿として認めて貰えないだろうか」


「しかし・・・侯爵殿は、ご存じなのですか?」


「許可は貰っている。・・・俺はやはり、ヘレンを諦めきれない」


ブラックマンはヘレンの手を取り、口付ける。


「愛してる。幼い頃からヘレンのことが好きだったんだ。俺と、結婚してくれ」


ヘレンの目から涙が流れ落ちた。


「バカ、じゃないのっ・・・!」


文句を言いながら、ブラックマンに抱きつくヘレン。

途端、周囲から歓声が上がった。


「はっ・・・バカぁぁぁ!恥しいじゃないのよー!!」


注目の的だったのを思い出したヘレンに、ブラックマンが殴られた。

早速尻に敷かれてるとは、やるなぁ。









引き継ぎも、お別れも、すべて終わった。

トゥレにも故郷に帰る旨を伝え、爵位の返上を申し出た。

しかし領地は元々山であるし、領主としての納税の義務も発生していないため、そのままで良いとのことだった。同じ理由でチガヤ王国にも爵位を返上していない。


夜が明ければ、城下町を出る。


「レン・・・起きてる?」


「あぁ・・・」


「そっちに、行っても良い?」


返事はなかったが、レンのベッドに入る。

そういえば起きたらレンがいることはあっても、その逆はなかったな。

レンに抱きしめられて眠る。

おやすみのキスにも慣れた。


「レン・・・元気でね」


「イチイも」


「うん・・・無理しないでね。トマのいうことよく聞いてね」


「俺の方が年上なんだが」


「でも意外とトマの方がしっかりしてるんだよね」


「・・・・・否定出来ないな」


「はは・・・レン、今までありがとね・・・私、少しは役に立ってたかな・・・?」


「充分だ」


「よかった・・・」


イチイはそう言ったきり、静かに寝息をたて始めた。


「イチイ、愛してる・・・」


レンもイチイの額に口付けて、目を瞑った。













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