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『いやぁ、はっはっは!聞いてはいたが良い腕だな!まさか優勝とは!!』
『アリガトウゴザイマス』
リリスフィアの招待客は、どうやらスーパパ・スーママのようだ。
去年はスーの異母兄だったが、今年はスーママの希望で夫婦水入らずイスフェリア旅行らしい。
リリスフィアならではの無防備さ。
まぁスーパパは腕が立つようなので、心配はないのだが。
『本当!格好良かったわ~!』
『アリガトウゴザイマス』
他国の王族と談笑ともなれば、魔法騎士団の勧誘組も寄って来れない。
スーパパスーママ様様である。
『なのにスーちゃんは・・・まぁ戦闘向きじゃないからこそ、イスフェリアに留学させたんですけどね』
イスフェリアは魔法の国とも呼ばれる、4カ国の中では魔法に優秀とされている国である。
各国の魔法騎士団入団希望者はやはり時自国の魔法学校に進むが、研究職希望の人間の一部はイスフェアに留学することもある。
特に薬学や精霊語に強い。
数々の著名人も輩出している。
イチイはレンしか知らないのだが。
『国王にも向かないし、自立心目覚めさせたいし、何か手に職をとは思ってたんだけど・・・イチイさんのおかげだわぁ!イチイさんの弟子にしてもらえなかったらきっと、何にもなれてなかったわぁ』
『母上・・・酷いです・・・』
『ハハ・・・ハハハハ・・・』
もう笑うしかないっていうか。
『まぁまぁお嬢さん、これからも息子を頼みますよ!』
『ハイ・・・』
「イチイ、優勝おめでとう!」
「クライスさん!ありがとうございます!」
今年もまた冒険者代表ということで、クライスが来ていた。
「これで連続優勝だな。引く手数多だ」
「はい・・・ありがたいことですが」
「・・・寂しくなる」
「私も、寂しくなります・・・」
しんみりとした空気が流れる。
嫌だな、この雰囲気。
「残念だなぁ、残るなら嫁に来てもらおうと思ってたのに」
「ははっ、何ですかそれ。ニトロプリアで流行ってるんですか?」
「・・・え?」
「え?違うんですか?」
きょとんとしたイチイに、クライスはにっこりと笑った。
「あぁ、確かに流行ってるな。ニトロプリアってことは・・・プリアレストの三男?それとも・・・イーシュ?」
「え・・・イーシュさん、ですけど・・・」
「へぇ・・・」
「あの・・・?」
「ああ、ごめんごめん」
「わ」
髪をぐしゃぐしゃにされる。
何、これも流行りなのか?
「元気でな」
「はい。クライスさんも」
「はぁ~・・・」
「まぁ、うん、気を確かに?」
「それは慰めになってないんじゃないかな、トーマス殿」
「大丈夫、イチイは全スルースキル発動中だから」
「何だそれ」
「帰るからって、自己防衛してるんだろうねー、無意識に」