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馬を2頭、パーティから借りられることになった。
イチイは乗馬体験くらいしかしたことがなかったので、午前中いっぱい、クライスに指導を受け、なんとか乗れるようになった。尻は痛いが。
馬があるなら昼過ぎの出発で良いということで、昼はクライスお勧めの店へ行った。
トマトリゾットに肉の塊が乗ったもので、ボリュームもあり美味しい。
ボリュームのせいか男性客がほとんどだ。
フライドチキンやポテトフライもあるらしく、アルコールを飲んでいる客も多い。
「揚げた肉もうまいんだ。食べると飲みたくなるから今はあれだけど」
一皿穴あき銅貨3枚と安かった。また来よう。
お腹がいっぱいになったところでのんびりと出発する。
森の入口に着いたのは夕方だった。
早すぎるので火を焚き、交替で仮眠を取った。
蝙蝠型を数匹倒したので小銭が稼げた。
素材も剥ぎ取る。
夜の森で一番の強敵は夜行性型の獣モンスター。
金色に光る目、頭の中央に角が一本。
角と爪、牙、毛皮が素材で割と稼げるらしい。
大量に倒せばランクも上げられるかもしれない。
花が咲くのは森の中央よりニトロプリアに近い場所。
あの大木に割と近いところに咲いていた。
簡単に手に入り助かった。
獣モンスターも数匹しか現れず、多少の擦り傷はあるものの大したことはない。
槍で薙倒し、その隙に突き殺すのだが、開けていない場所では戦いにくく、そういった場所ではクライスが倒してくれた。
もっと小回りのきく武器が必要だ。槍は場所を選ぶし、短剣ではさすがにリーチが短すぎるので難しい。というか怖い。
森を出たのは明け方で、そのまま放置していた馬に乗って街へ戻った。
馬には魔除けの鈴をつけていたのでこの辺り弱いモンスターは寄ってこれないのだ。
街へ戻りギルドに報告に行った後、依頼主である魔法使いに会いに行くことになった。
依頼主とはギルドを通しても良いし、直接話しても良いことになっている。何かトラブルがあればギルドが対応することになるが。
魔法使いが住んでいるのは街の角にある2階建の一軒家だった。
煙突があり、煙がでている。
煙突がある家は少ないので目立つ。暖かい季節なので煙が出ているのはこの家だけだ。
「夜花草の配達?わざわざご苦労様」
魔法使いは黒いローブ姿で、ファンタジーっぽいなと思う。
作業台の上で花の仕分けを行う。
「うん、量は足りてるね。はい、報酬の銀貨」
「ありがとうございます。あの、貴方は何の魔法を使うんですか?」
「僕?割と何でも得意だけどね。城下へ行けば光で有名かな」
「あの、呪文を教えてもらえませんか?」
魔法使いは首を傾げ、イチイを見る。
「魔法、使いたいの?」
「はい」
「・・・そうだね。君、住み込みでげぼ、お手伝いしてよ。家政婦っていうか」
今下僕って言った?
「見たところ魔力あるみたいだし、ある程度覚えられるように教えこんであげるよ」
かなり扱き使われそうな予感はするが、とりあえず、まぁ・・・一歩前進?