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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第七章
134/154

132


イチイとトマが草原で遊んで(?)いる同時刻。


―――ニトロプリア、プリアレスト伯爵家―――



その日ロニは、久しぶりの実家で惰眠を貪っていた。


「あーそろそろ起きるか・・・」


のそりと起きてベッドサイドのグラスに手を伸ばす。

次は水差し。


「水、水・・・」


ばっしゃああああああ


「・・・は?」


上から水が降って来た。

思わず天井を見る。

何もない。


「・・・何で?」


ぼたぼたと髪の毛から水が滴る。


「何事だよコレ・・・」


ともかくメイドだ。メイドを呼ぼう。

ベルを鳴らし、メイドを呼ぶ。


「ここ片付けといてくれ」


「畏まりました」








「ロニ、ごめんなさいね。あの水差し、水の魔石製なの」


「・・・母上?」


「すまんなぁ、ロナウド。お前よっぽど水の魔石と相性が良かったんだな。吃驚したぞ」


「・・・一番吃驚したのは俺ですからね?」


「良かったじゃない。魔力に目覚めたなら魔法の勉強しなさいな」


「もう21なんですが」


「いいじゃない。魔法の一つや二つ使えないと、兄の威厳ないわよ。そうでなくても兄弟で貴方だけ爵位がないんだから」


「はっきり言いますね・・・」


長男・次男は家督相続で爵位は伯爵。

トマは功績を認められ男爵。

ロニは3男なので相続はないし、認められる功績は何一つない。

確かに兄の威厳など何処にもないのである。

職にしても冒険者と菓子店の手伝いと貴族らしからぬものだ。


「冒険者を続けるなら尚更魔法が使えた方が良いだろう。城下町で水の魔法が得意な人間を探しておこう」


「ありがとうございます」


確かに使えないより使えた方が便利である。

ここは厚意に甘えておこう。



「せめて好きな女性より強くならないとな」


「ぐっ」


ロナウド・プリアレスト(21)、好きな女よりもランクが下である。







「ただいま帰りましたー。あれ、兄上、冬なのに水浴び?」


「・・・気にするな」











ニトロプリア最終日、本日はお店の手伝いである。

ランチタイムはやはり忙しい。

イーシュは鍋を振るいっぱなしだ。

イチイは給仕と洗い物を手伝っている。

菓子店とは比べ物にならない洗い物と回転率。

目が廻りそうだ。



「う、あ~・・・」


「お疲れさん」


「ありがとーございます・・・」


ランチタイムが終了し、貴重な休憩時間。

イーシュからアイスレモネードを貰い、一息つく。

少し休憩したら次は夜の仕込みをしなくてはならない。


イーシュがばてているイチイの頭をくしゃりと撫でる。


「汗かいてますよー」


「イチイ」


急に真剣な声を出すイーシュに、イチイは不思議に思い顔を上げる。


「どーしました?」


「帰るのか」


「はい」


「そうか・・・」


今度は自分の頭をくしゃくしゃにし始める。


「イチイ、帰らずにこの国にいることは出来ないのか?」


「この国も好きですけど、やっぱり故郷に帰りたいんです・・・。このお店はこのまま続けてください。城下町にも、2号店っていうか、食堂を出す予定が進んでるんですよ。イーシュさんにはそっちの店の料理人の修業をお願い出来たらなって」


「・・・わかった」


「ありがとうございます」


「本当はこの国じゃなくて、この街にいて欲しいんだけどな」


「すみません・・・私、この国に来てイーシュさんに会えて、良かったです。あの時、故郷の料理を久しぶりに味わえたのも、初めて魔法を見たのも、全部イーシュさんのおかげっていうか・・・」


「そういえば、そうだったな。懐かしい」


この世界に召喚されて一ヶ月後、イーシュに出会い、もう4年以上経っている。


「あの時から綺麗な子だとは思ってたけど・・・大人っぽくなって、ますます綺麗になった」


「なぁっ!?」


「ぶはっ、照れてんのか?」


「そりゃ照れますよ!からかわないでください!!」


「からかい甲斐があるやつだ」


「う~ッ!!」


イーシュは笑いながらイチイの頭をまたくしゃくしゃと撫でる。


「・・・嫁に来て欲しいくらい、綺麗になったな」






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