125 リリスフィア王国 城下町
楽しい楽しい、夏期休暇の始まりである。
今年はリリスフィアということで、帰省するスーに同行する旅となった。
スーのご両親にご挨拶、馬車の中でも教材と睨めっこだ。
そして何故か。
「何故お前がここにいる」
「俺はイチイのいるところに存在するから」
ケイトもついて来ている。
半ば予想はついていたものの・・・っていうかレンと仲が悪そうなのが予想外?
レンはほとんど店に来ないので、接触している場面をあまり見たことがなかったのだ。
しかしスルー。
イチイは今忙しい。
教材しか目に入らないし、何も聞こえない。
リリスフィアに到着。
スーは実家に戻り、イチイ達は宿へ。
挨拶が明日の午後だ。
宿の部屋は最初、レンとイチイで1部屋、ケイトが別に1部屋という話だった。
しかし予想通り喧嘩勃発。
面倒になったイチイはシングルを3部屋取って自分の部屋に引き揚げた。
荷物を片付け身嗜みを整えてから部屋を出る。
観光、買い物、夕食だ。
リリスフィアに来るのは本当に楽しみだった。
ファッション先進国らしいリリスフィア、髪の短い女性がいたり、パンツルックも珍しくないという。
イスフェリアでは乗馬や戦闘時以外、パンツルックの女性はまず見られない。
4カ国の中で一番現代日本に近い服装。
そして何より、下着が充実。
いやここまで現代日本並に下着が充実してようとは。
イスフェリアではスポブラのようなものが一般的なのだが、リリスフィアではワイヤーのようなものが入った、しっかりした作りになっているのだ。
うん、これは買いだ。
輸入してイスフェリアで販売とか出来ないのだろうか。相談してみよう。
他にも靴やバッグ、装飾品など、すべてが現代日本のようで。
「すごい、楽しい」
こちらへ来て、一番買い物してるんじゃないだろうか。
今は夏だが、四季を通した服が置いてあるので、これから使えそうな好みの服を一通り買い漁る。
そして良い香りの石鹸、アロマオイル、アロマキャンドル、バスソルトなどが充実。
イスフェリアの石鹸はあまり良い香りがしないのだ。
「買い占めたい・・・!」
屋台でもまた、イチイは嬉しい悲鳴を上げる。
「たこ焼き、お好み焼き、焼きそば・・・!」
カカオバナナ、林檎飴、まるでお祭りのようだ。
ソースの良い匂いがそこら中から漂ってくる。
何て良い国なんだ、リリスフィア!!
勿論帰りは食料品店でソースを大量に買い込む予定だ。
食べたい、しかし夕食は3人で宿で取る。
ここは我慢だ。
リリスフィア滞在は割と長いので大丈夫。食べ尽くせる。
ヘレン達のお土産に下着を買いたかったが、流石にサイズがわからないため、他のものにした。
石鹸は送ると失礼かもしれないので、ふわふわもこもこのファーティペットである。
ファーで出来た襟のようなものなのだが、ローブの上からつけるとかわいいポンチョ風だ。
宿に戻ると2人とも不機嫌そうに、イチイの帰りを待っていた。
ドアの前にメモを貼っていたのである。
「ただいま」
「おかえり・・・どこに行ってたの?寂しかった」
何故か抱きついてくるケイト。
レンの眼が怖いんだが。
「メモの通り、買い物だよ」
「離れろクソガキ」
レンがケイトを引き剥がす。
「邪魔しないでよおっさん」
いやクソガキっておっさんって。
そんなに年齢離れてないし、そもそもケイトとイチイが同じ年齢である。
「まぁいいや。お腹空いたし、夕食にしよう」
宿の夕食は、期待通りだった。
サラダ、スープ、パン、魚料理、肉料理、デザートの順だった。
醤油味味噌味こそ出てこなかったものの、サラダのドレッシングが胡麻、肉料理がソースの掛かったチキンカツという懐かしい味。
リリスフィア最高。