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4年生の校外実習は、2人1組で森の最奥へ行く。
今年度の狙いは2人で行う戦闘のようだ。
バランスよく組を作るため、実力1位とされているイチイは、最下位に近い生徒と組むことになった。
「あのあの、キャサリン・エーミスです!キャシーでもキティでもケイトでもケイでも好きに呼んでくださいっ!!」
「イチイ・ヒツジ。よろしくね。えぇと・・・キティ?」
金髪碧眼の彼女は、その髪をサイドで一つに結び、赤いリボンを付けている。
狙ってるのか。ハ○ーキティ。
「私、実践が苦手で・・・足を引っ張ると思うんです、ごめんなさい・・・」
「大丈夫、落ち着いて頑張ろう?」
「・・・はぃ」
落ち込まれると苛めてるような気分になる。
なんせキティは150センチない。
18センチ以上小さいってことだ。
俯かれるだけで傍から見るといじめ現場なんじゃないだろうか。
「実践が苦手ってことは、授業では大丈夫なのかな?」
「はぃ。モンスターを相手にするとどうしてもパニックになってしまって・・・」
なるほど、パニック体質なのか。
偶にいるんだよな、実力は問題ないはずなのに不思議なくらいパニックになる人。
獣道を進んでいく。
低レベルなモンスター一匹ではパニックにならないようで、水魔法やレイピアの物理攻撃で割と落ち着いて倒していく。
ただ複数匹同時に出現すると、どれから倒せば良いのかわからずパニックになる。
イチイの場合、カウンターで倒していくことが多いのでキティにもそれを進めてみた。
頭では理解しているものの、一匹に攻撃して、その結果を見届けないと次に攻撃できないという、何とも不器用なことを言い出した。
実践が苦手というより、実践に向いていない。
良く言えば慎重ということにもなるが。
兎に角、キティは一匹目を完全に仕留めるまでいちいち確認する。
確認しつつ、次を攻撃すれば良いだけなのだが、それが難しいらしい。
キティが一匹目で手間取る以上、その間にイチイが他を倒すしかない。
この森レベルのモンスターならそれで攻略可能だ。
「うううぅ、ごめんなさい、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。キティは落ち着いて一匹目を倒して。その間に他を倒しておくから」
「ぅぅぅぅ」
このやりとりを何度か繰り返しつつ、最奥へ到達。
今回は折り返して戻ることだけが目標だ。
今年度も少しずつ難易度が上がって行くだろう。
キティ、大丈夫なんだろうか・・・。
割りとスーも心配だ。
組んだ相手によっては苦労するだろう。
フォローの上手い人だったら良いのだが。
校外実習は100Ptだった。
きちんとフォローが出来ていたからだと思う。
語学も猛勉強の甲斐あって減点はほぼなかったし、他筆記も同様。
騎馬は4位とちょっと惜しい感じではあったが、総合では僅差で1位だった。
最後の一年も好成績が保てるように頑張ろう。