121
初、騎馬授業である。
学園の馬は20頭で、4年生で騎馬の授業を選択しているのは14名、馬術は10名。
騎馬の半数程の生徒は春休みのうちに愛馬を連れて来ているので、ぎりぎり大丈夫なようだ。
しかし人数の多い新2年生1年生なんかは大丈夫なんだろうか。
学園の馬はすべて大人しく、賢い。
ボス的存在もいない、平和な馬社会だ。流石草食動物。
訓練されているので武器には怯まないらしい。
身代わりの石も付けられているので安心だ。
石が壊れたら即刻中止、馬への攻撃も禁止。
イチイは乗馬経験はあっても騎馬経験はない。
いつも森の外に繋いでいたし、馬車での中遠距離戦しかない。
馬に乗り、慣らすために軽く走る。
何度乗ってもお尻痛い。
何か良い魔道具はないだろうか。
武器は基本的に棒ということになっている。
騎馬なのでリーチが長くないと戦闘が難しいこと、馬に被害が行かないようにということで、棒。
希望者のみ長剣もOKらしいが、木剣である。
貴族の間では棒はダサイ、長剣こそが騎士の武器だとなっているらしく、半数ほどは木剣をもっている。
イチイは棒を選んだので、オースティンも其れに倣い棒。
ブラックマン他貴族は主に木剣。Cクラスのメンバーは棒が圧倒的だ。
初めのうちはところどころにある的を攻撃しながら、コースを一周する。
勿論攻撃の際は立ち止まってはならないし、うまく命中させなくてはならない。
これが中々難しい。
馬のスピードに慣れつつ、タイミングを合わせて攻撃。
際立って上手いのはやはりオースティンで、ついでブラックマン。
オースティンはともかくブラックマンに負けるのは癪なので特訓あるのみだ。
「やったー!!」
「お前ら、サイコー!」
テンションの高いトマと教師でお送りします。
あーまた喜び損ねた。
無属性魔法石を電池と考えて制作した卓上ライト。
無事、認められ、買い取って貰えた。
これで無属性魔法石の研究は進められ、大幅に魔道具は進化するだろう。
無属性魔法石の形式と卓上ライトは別件、別料金で、形式の方はかなりの額。
この費用はヒツジ商会魔道具・魔玩具部門の設立・研究費に充てた。
責任者はトマ。
手始めに店で使っている保温コースターや自動泡立て器などを販売。後はトマが面白がって作っているおもちゃたち。
ガンガン開発していずれ”アスレチック公園”遊園地””体感ゲームセンター”的な施設を作るらしい。
この世界にそういったアトラクションは皆無なので、面白いと思う。
卓上ライト以外のものも、どんどん魔法研究所にレポートを提出していく。
認められて買い取られる分、収入は増えるし、名前も売れる。
今回の件でトマは男爵位を賜った。
イチイはすでに子爵だし、ミカは次男、侯爵位を継ぐ予定なので男爵位はない。
「ふへへー、イチイ、イチイ、次はどんなのにする!?」
「やっぱり念話か浮遊か・・・」
「具体的に!!」
「遠い所に居ても話ができる道具と、空飛ぶ魔法および空が飛べる魔道具」
「いーねー!面白そうっ!!空飛ぶ魔道具って浮遊ボール的な??」
浮遊ボールはその名の通り、浮かぶボールである。
自在に飛ぶわけではないのだが、風に乗ってふわふわするので面白い。
「ボールじゃなくて人間が飛べるようなさ」
「中々難しそうだな。浮遊魔法で数センチ浮くことなら出来るだろうが」
「ミカ様でも数センチですか?」
「あぁ。イスフェリア最高で20センチ程だと聞いたことがある」
20センチか。
先は長いな。
因みにイチイは浮遊魔法、20センチと言わずメートル単位で浮くことが出来る。
地龍魔法などに乗れば空を飛ぶことも可能だが、何にも乗らず空を飛ぶ魔法が欲しい。
魔道具は箒か絨毯だと雰囲気出るのだが。
最終目標は大人数が乗れるもの。飛行機とかそういう類だ。
そうすれば移動も楽になるだろうし。
「地魔法・風魔法・浮遊魔法あたりでなんとか出来るような気がするんですよね。こっちは私がちょっと研究してみるんで・・・トマ、念話の方研究しない?」
「しよ!あれだよね、転移魔方陣で声が送れるようになれば良いんだよね」
「それが一番近道になりそうかな」
「よし!じゃあそれで!!転移魔方陣とメッセージを遺す魔方陣ってあったよね、あれの組み合わせでどうにかならないかな」
「メッセージを残す・・・記録用か。確かこの中に資料があったはずだ」
「よし探そ!」
ケイトも巻き込みつつ、資料を漁る。
予めメッセージを吹き込み、それを再生するという記録用の魔方陣を発見。
これと転移魔方陣で何らかのヒントにはなりそうである。
「とりあえず・・・この魔方陣の練習からか」
各自記録用魔方陣の練習を始める。
全員が描けるようになった頃、授業は終了。
次から応用と実験の繰り返しとなる。