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4年生になった。
基本的に教室は4年間変わらないので、いつもの教室に向かう。
初日だからか、随分騒がしい。
「おはよ」
「おはようございますっ!イチイ!待ってましたわ!」
「はい?」
「よ」
ヘレンの挨拶の後、声を掛けられた方向。
「・・・なんで?」
卒業したはずの、ケイト。
「卒業しなかった」
「は・・・何で?」
「出席日数足りなくて?」
そういえば、冬休み明け見かけなかったが。
だがこの魔法学校では出席日数不足など何とでもなる。
「イチイと一緒にいたかったから」
ケイトはイチイの頬に手を添えて、甘い声で囁いた。
途端に教室中で歓声が上がる。
何なんだこれは。
怪訝そうなイチイに、ケイトは面白そうに笑う。
「あと一年しかないだろ。だから」
「え・・・?」
何だそのセリフは。
まさか本当にイチイと一緒にいるためにとでもいうのだろうか。
「一年間よろしく」
ケイトは慈愛に満ちた微笑みで、イチイの額に口づけを落とした。
「モテ期なのか?」
イチイは今までもてたという経験はない。
あと一年で帰るからっていう褒美?試練?
「もう帰らずにこっちで嫁いじゃえば?」
「軽くいうなぁ。帰るって」
「ちぇー」
「ちぇー」
「スーもそこは真似しなくてよろしい」
「まぁケイト先輩のは恋愛感情ではないと思うけど」
「そーなの?」
「うん、何となくね」
泣き黒子仲間だし。
何か引っかかるというか。
一年間って言っていたので引きとめることはしないだろう、きっと。
「でもAクラスだったのにCクラスに移動だなんて、ズルイよね。おれも移動したかったなー」
「なー」
「確かに一緒だと楽しそうだけどね」
学校側からすると面倒そうだが。
「まぁなんにせよ、面白くなりそーだなー」
・・・トマの楽しそうな笑顔が怖い。