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優勝賞金金貨10枚。
かなりの大金だ。
これは国から支給されるもので、今後の活躍に期待、という意味合いが込められている。
イチイは魔法騎士団に入るつもりはないので、せいぜい魔道具開発につぎ込むとしよう。
模擬戦終了の夜、祝賀会と称して菓子店を閉め宴会が開かれた。
身分が高い人間が数名混じっているが気にしない。気にしてはいけない。
一般の店に4カ国王族が集まるってどんなだよ。
まぁ元々周り王族多かった方だけど。
世界各国の酒に加え、イチイのつけた果実酒、それらを使ったカクテルで盛り上がる。
この世界にカクテルの概念は確立されてないようなので、いずれバーを開くのもよいかも知れない。
もう滅茶苦茶だ。
この世界の飲酒の制限は10歳と低いので、イチイも飲んでいる。
トマは笑い上戸でミカは泣き上戸。
このコンビは見てて面白い。
スー他学友陣は早々にダウンして気持ちよさそうに寝息を立てている。
レン・トゥレ・ロウェナ・ディア・ルーナは表面上変化なしの割に口が軽くなっている。
クライス・ロニはテンションアップ。
エルマとコヅは途中で消えた。
まぁ、ね、うん。
イチイは飲みながらも主にルーナ・ロウェナのためにカクテルを作り続ける。
レンの家族は酒強いな。
『今日は驚いたよ。強いんだな、イチイ』
『ありがと』
カクテルを作るイチイの手元を覗きこむディア。
遣り難いんだが。
『このカクテル、甘い割にはすっきりしていておいしいな』
ディアが今飲んでいるのはモスコミュールだ。
ジンジャーシロップを作り、炭酸水を作り、ジンジャエールにした。
あとはライムとウォッカもどきで完成。
ただの炭酸水は普及していないので、これも売り出せそうだ。
『こんな細いのに、良い筋肉だ』
ディアがイチイの腕をするりと撫でた。
「ちょっ、『くすぐったい』
その手が、イチイの顔を撫でる。
「え・・・?」
目の前には熱を孕む、ディアの視線。
「んむっ」
ぎゃああああああああ!キスされてる!しかも何か入って来たぁ!!!
ファーストキスではないがディープは初めてだ。
知識はあっても経験はない。
初めての感覚に混乱する。
「ふ、ぁ」
アルコールが入っているせいか、ふわふわする。
やばい、なんだこれ。
「ん、」
耳朶に首筋にディアを感じる。
「って、いやいやいやいや。ディア待って!私は女だ!」
「違う、『ディア、私、女!男、違う!』
『イチイなら大丈夫。女でもイケる気がする』
「え今何て言った?何が大丈夫?」
相変わらずヘーリング語は苦手だ。
此処はイスフェリア。イスフェリア語で喋れッ!
「あ」
大きく振りかぶられたイスがディアの頭上に振り下ろされ、終了。
助かった・・・。