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4回戦の苦戦は何だったんだ。
5回戦、6回戦は5分も掛からず終了。
あっという間に準決勝である。
相手は珍しく鎧を着ていない、ローブ姿。
イチイと同じく魔法主体らしい。
今まで見て来た中で一番の腕前なんじゃないだろうか。
(レンは攻撃魔法をあまりつかわないので除外)
魔力量はそこまでではないものの、遣い方が上手いので勉強になる。
「っと」
突然背後から光弾が向かって来た。
魔力の感知が遅かったら終わっていた。
対戦者とは違う方向から飛んでくるなんて出来るんだ、と感心するイチイ。
「あ、あーあーあー」
なるほどなるほど。
さっきから背後からやたらと光弾が来るなと思ったら。
どうやらイチイ自身の影から放たれているらしい。
光魔法の応用でこんなことも出来るのか。
さすがに影を使用だなんて考えたことなかったな。
「ちっ」
気付いたことを気付いた対戦者が舌打ちした。
確かに気付かれてない方が使いやすいしね。
対戦者方向と影方向から攻撃を受けるのは結構キツい。
さてどうするか。
接近戦に持ち込むか、影をなくせば良い。
照明を落とす?
それとも・・・・・
飛んじゃうか?
実際空を飛んだところで影がなくなるわけではない。
ただ影が密接してないというだけで断然避け易くはなるわけだ。
折角魔法対決みたいで楽しいのだ。
空を飛んで面白い対決にした方が良いと思う。
そんなわけで。
掌を天井に向け、地龍を創り出す。
直接空を飛ぶことはしたことがないので、地龍に乗ることにしたのだ。
割と小型の地龍に乗り込み、空から攻撃を仕掛ける。
目を見開いて絶句している対戦者に、軽く攻撃魔法を放った。
なんだろう、驚きすぎで油断してたのかな。
その一発で身代わりの石が砕け散った。
いよいよ決勝戦。
対戦相手は4年生。
オースティンはこの対戦者に準決勝で敗れている。
身体程ある大剣。
白銀に輝く鎧兜。
トマがこの人も魔法騎士団に入団する人だと言っていた。
剣術大会に出場していなかったので実力は知らないが。
「ふぅん」
「?」
値踏みするような視線。
あまり気持ちの良いものではないな。
「天才2人を倒したにしちゃあ強そうには見えないな」
「はぁ、そうですか・・・」
そんなこと言われても。
どうリアクションすれば良いのかわからない。
因みに天才2人というのは4回戦の彼と準決勝の彼らしい。
名前は既に覚えていない。
「オレはダイ。ダイ・ベイカー・ディ・ブラックマン」
「ブラックマン?」
「ああ、出身は神国の平民。腕を買われてブラックマン侯爵の援助を受けている」
「・・・ブラックマン」
ブラックマンは初戦敗退しているのでイチイとは当たらなかった。
「御子息から手加減するなって言われてるんでね。悪く思うなよ」
「へぇ・・・」
ブラックマンの言葉も気に食わないが。
「既に勝つ気でいるってのが気に食わないな」
「あ?」
「はは、悪く思うなってのはこっちのセリフだ」
試合、開始。