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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第六章
112/154

110

今回の剣術大会は、前回に比べ参加者が少ない。

例年冬の参加者の方が少ないというのは聞いていた。

秋に惨敗した3年生の参加者が大分減ったようだ。


イチイも特に参加するつもりはなかったが、予想通りオースティンにより強制。

前回が前回なだけに剣術教師にも強く薦められ逃げられなかった。


一回戦。

対戦相手は4年生だったが、難なく快勝。

二回戦。

続いて快勝。

三回戦。


「終わったな・・・」


「まぁ、それでも最悪6位なわけだし」


人数が少ないおかげで、2回勝ち抜いただけで6位である。

3回戦は負け確だ。

対戦相手、オースティン。


「いいなー、イチイ剣得意だもんね」


そういうトマは剣、というより武術が苦手だ。

選択は比較的得意な弓を取っている。


「弓は壊滅的だけどね」


何故か命中しないのだ。

パチンコなら命中するんだけど。

別モノか。




「構え!」



双方、構え。

オースティンは一般的な構え、両手で剣を持ち剣先をイチイに向ける。

対するイチイはすこし変わった構えを取る。

普段はクライスに教わった通り、オースティンと同じ一般的な構えを取る。

今回は冬季休暇いっぱい練習した、愛用の得物に見立てた遣い方をする。

二刀流ではないが、片手で右下に構える。

一発目は明らかに薙ぎ払いだろう、といった構えになる。

勿論裏なく薙ぎ払いの予定だ。



「始めッ!」



読む、なんてことはせず、突っ込む。

一気に間合いを詰め薙ぎ払う。

オースティンは真面目一直線なので、読まなくても大体分かる。

分かっているのに勝てないってところがオースティンの凄いところだと思う。


一発目、防がれてカウンター。

イチイはそれを後方に跳び避ける。

更なる追撃をすべて回避していく。

防御はしない。



通常の剣術は、回避よりも防御、そしてカウンターといったスタイルだ。

そこでイチイは敢えて回避という手段を取ることにした。

体力は使うものの、制限時間も10分と比較的短い。

この世界の10分間ならば充分動ける。

直接の体術は反則とは言わないがポイントにならない。

わざとであれば減点対象ではあるが。

しかしアクロバティックな動きで翻弄することは減点対象ではない。

オースティンのような型に嵌ったタイプは苦手な戦法だろう。

まぁそれぐらいで勝てる相手ではないのは承知している。




動きが読めなさ過ぎて苦戦しているオースティン。

それを面白そうに観察する一同。


「さっすがイチイ!だけど今一歩ってところだなぁ」


クライスの呟きにトマが反応する。


「イチイ、勝てないですか?」


「そうですね、僅差ではありますが、オースティン様が勝つでしょう」


トマは不満そうだ。


「一応、剣術を教えたのは私ですから。イチイの戦法も分かっています」


あの戦法は剣術の練習中、たまにやっていた。

ただ剣が愛用のものと使うので遣り難いし、冒険すぎるため、イチイ自ら封印していたものだ。

だからイチイもオースティンにしか使う気はなく、今まではごく普通のスタイルを一貫してきた。


「お、勝負あったな」


イチイが勝負に出た。

オースティンのカウンターで、イチイの剣が弾かれる。


「そこまで!」


「「ありがとうございました!」」






「う、あー!つかれた、もうだめ」


「おう、お疲れー」


「このやり方はもう使えない・・・」


「ははは」


元々対オースティン用だと思って練習したものだ。

そもそも使う気はないのだが。


「いやでもなかなか良い試合だったじゃないか」


「そうですかー?それなら良かったです」


いつもより接戦だった。

全く成果がなければ凹むので、助かった。


「あ、こんだけ疲れてる状態でもう1試合あるんだった・・・」


忘れてたー。

3位決定戦があるんだった。

対戦相手は今の試合を見ているので正攻法で、たまに翻弄する感じでいこうか。


もう一つの準決勝は前回の優勝者だった。

実力は明らか、2連勝、昨年度から数えると4連勝という快挙を成し遂げた。

イチイも善戦、3位という嬉しい結果だった。







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