9・ニトロプリア
少し休んで、まずしたことは荷物の回収だ。
回復薬を飲むとかなり楽になった。
コンパスで方角を確認し、西へ向かう。
そのうち誰かに合流できるだろう。
「カークさん!」
「イチイ!良かった、無事だったか」
「はい、なんとか」
カークはほぼ無傷だ。この森のモンスターは、彼ら1人で負けることはない。
よほど囲まれるか、ああいうイレギュラーが発生しない限り。
徒歩組はあとフィン、ボルフ。合流出来れば良い。
馬組はもう街に着いている頃だ。
森になっている林檎をもぎながら、ゆっくりと歩く。
ボルフ、フィンとも無事合流出来、街を目指す。
あのモンスターを倒したことを告げると、かなり驚かれた。
眼球や口内を狙うなど、今まで聞いたことがなかったらしく、ギルドに情報を寄せれば謝礼が貰えるかもしれないらしい。イチイでも思いつくくらいのことなのだが、常識に捉われると見えないものもある。
合流してからかなり急ぎ足だったおかげか、その日のうちに森を出ることが出来た。
ただもう真夜中だったので、2人ずつ睡眠をとり、朝になってから歩くことになった。
そうすれば昼過ぎには街へ着くだろうとのこと。
疲れたせいか、爆睡した。
が、ほんの少しで起こされた。
クライスたち救援が到着したのである。
馬車に全員乗れるということで、そのまま街へ向かい、勧められた宿にそのまま倒れこむように眠った。
とりあえず今は爆睡させて。
昼まで寝たい。
イチイの目が覚めたのは、昼過ぎだった。
宿屋の受付へ下り、昨日払ってなかった料金を払う。宿屋は基本前払いだ。
銀貨1枚で3日。ロハの宿屋の倍以上の物価だ。部屋は新しかったが。
「おー、起きたか。腹減ってね?麺食いに行こうぜ」
「はい!」
全身筋肉痛ではあったが、お腹は空いている。
クライスさんお勧めの屋台で塩ラーメンもどきを食べた。
久々の麺は美味しい。
魚介ベースの塩味のスープに、パスタに近い麺。
具は海老や貝、魚、水菜。
「夜もお勧めの店あっから行こうぜ。迎えに行く」
何となくヨーロッパ風なので夜はピザとかパエリアとか来そうな気がする。
楽しみだ。
食べ終わった後、冒険者ギルドに案内してもらった。
冒険者として生きるつもりはないが、便利だそうなので登録だけしておく。
それから昨日のモンスターの情報、素材などを売った。
上級モンスターを討伐したということでランクは下から2番目、Fとなった。
ランクはSS、S、A~Gらしい。
5人はC、Dランクらしい。一番多いランクでDで一人前、といわれている。
クライスとはそこで別れ、そのままクエスト一覧を眺める。
採取系も討伐系も、地名やモンスター名がイマイチすぎてわけがわからない。
理解することは諦めて、街中を散歩する。
この街にも中央広場があり、屋台が並んでいる。
先程の麺屋もここにある。屋台は国の文化なのだろうか。
適当に屋台を覗く。
「いらっしゃい!焼き米どうだい?」
「焼き米?」
「これだよこれ」
若い店主が指さすもの、それは。
炒飯!?
この世界初の米だ。
この世界へ来て約1ヶ月、恋しかった日本食。
炒飯は日本食ではないが米は米。
正直お腹は空いていないが、ついつい買ってしまう。
店主はサービスだと言って、すごいパフォーマンスを見せてくれた。
ふるわれる中華鍋に炎の龍が踊る。
「炎の、龍・・・」
「俺この火系魔法得意なんだよね、それでこの商売ってわけ」
焼き米は火力が命!と言って笑う。
イチイ、魔法との邂逅、である。