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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第六章
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小説本文 イスフェリアは割と温暖な地域だが、それでも冬はそれなりに寒い。

学校へ通うのも、ローブの上にコートを羽織り、たまに手袋をすることもある。


「寒いし温かいものが良いよねー」


今日の放課後から早速準備に取り掛かろう。





翌日。

店の新しいディスプレイはチョコレートファウンテンだ。

バイキングのお店に偶に置いてある、チョコレートの滝なのか噴水なのかという、アレである。

こちらの世界にはバイキングのお店は存在しない。なのでファウンテンは受け入れにくいだろうと、提供はチョコートフォンデュにする。

今日は試食会ということで、ファウンテンとフォンデュ、ついでにチーズフォンデュも用意。

チーズの一般流通価格はまだまだ高いので、商品としては出せないのが残念だ。


「うわーなにこれ!おもしろい!」


「カカオファウンテンかな。勿論これは魔道具。カカオがこう、巡回してるっていうか」


「あー!なるほど!いいな、おれもこういうの作りたい!」


トマに作り方を聞かれたので答えておく。

トマはこういうの好きだし、得意だから商会の魔道具部門をメインに担当してもらいたい。


「おいしい!」


「スーの国では、こういうのあった?」


「ない!あたたかいは、ある。じぶんでする、ない」


フォンデュの鍋は鍋自体が熱を持ち、カカオの融解を助けている。

火は演出にすぎない。本当に火でやると焦げ付くので魔法で微調整。

具はマシュマロ、スポンジ、バナナ、苺など、お決まりのものを集めたつもりだ。

チーズフォンデュにはパンと海老、じゃがいも、ブロッコリーなど。

ミカとレンはこちらの方が良いようだ。


「これは出さないのか?」


「出したいですけど、チーズはまだ高価なので」


「確かにあまり高すぎるとこの店には合わないな」


ヒツジ菓子店の軽食は安価なものばかりなので、高いものをいれるとそれだけ浮いてしまう。

高級嗜好の店舗も出してみたいが、よっぽどうまくやらないとすぐに立ち行かなくなるだろう。


「それよりも流通かな・・・魔方陣の開発が進めばチーズも安くなるだろうし。そしたら商品化出来るかな」


「そうだな。イスフェリアもチガヤも魔方陣の開発に大分力を入れているようだ。前例が出来た分、今までよりも予算も人材も割けるだろう」


イチイたちの魔方陣がチガヤに認められたことにより、その魔方陣の細部が四カ国に買い取られた。

買い取り価格は三人で分け、イチイはそれでレンに借りた金額をすべて返済。

四カ国では勢力をあげて魔方陣開発に勤しんでいる。



「イチイの作るものっておもしろいもの多いよねー。おれも色々作りたいなー」


「・・・トマがおもしろそうって思うもの、色々作ってみて。ヒツジ商会の魔道具部門」


「いいなーそれ!魔道具開発しつつ店番!」


「私が故郷に帰ったら。それに加えて代表者もして欲しい」


「帰るの?」


「帰るよ。遠過ぎて、お店出来そうもないんだ」


トマは何も言わず、イチイをじっとみる。


「・・・かえる?」


スーが泣きそうで、イチイもつられそうになる。


「帰りたいな」


もう3年と半年以上経っている。


「・・・スー、つくる。いっぱい、つくる」


「うん、ありがと。お願いね。出来れば皆も、協力してくれると嬉しい」


「・・・しょうがないな」


「はは、ありがとうございます」


「俺も、手伝うよ。つっても表しか出来ないけどな」


「・・・トマ?」


「やる。おれ、イチイのしんゆーだもん」


「トマ」


トマは割とスキンシップが激しい。

よく抱きついてきたりするが、今回のはそれとは違う。

泣いているのに、帰らないでとは言わない。



「ありがとう」



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