104
剣術大会は9位という割と予想通りな成績を残し、終了した。
次のイベントは、結婚式である。
秋も終わりが近付き、リーアたちが城下町に来ている。
結婚式は冬の始め、観光も兼ねて長期滞在のようだ。
女将さんたちは新居の整えやら何やらで忙しいようで、イチイはリーアとミィを預かっている。
話を聞くと、結婚式はガーデン・パーティという印象を受けた。
教会で神父の祝詞を受け、ガーデン・パーティのような結婚式へ移ると。
ブーケ・トスや花嫁の両親の手紙、DVD放映的な催しはなく、単純に皆で新郎新婦に祝いの言葉を投げつつ立食パーティ、のような感じらしい。
御祝儀もなく、皆思い思いの祝いの品物を持ち寄るらしい。
イチイのお祝いは勿論、ウェディングケーキである。
料理が多くなりすぎないよう、女将さんたちには大きなケーキを持ち込むと伝えてあるので、調整してくれるだろう。
「さて、リーア、ミィ、オヤツ食べ終わったらお姉ちゃんのお祝いケーキ、作ろうか」
「うん!」
「つくるー!」
ウェディングケーキと言えばやっぱり段々になったケーキだ。
レストランウェディングだと大きな四角のケーキだったりもするようだが、イチイの中では何となく、段々になったケーキの方が好ましい。
作るのは難しいだろうが、固定魔法があるので大分楽だ。
招待客は約30名と少数だと言っていたので、やや小ぶりのケーキにしよう。
まず一番下の段から作る。
「よし、リーア。卵を泡立てよう。うぃーんってなるから、吃驚して手を動かさないようにね」
「大丈夫!」
魔力を流し、泡立て器が稼働する。
ちょっとびくってなったけど、手は離さなかった。
エライエライ。
「じゃあミィは、粉を振るおうか」
ミィはかしゃかしゃと粉を振るう。
小さい粉振るい器なので何とか使えている。
力が足りないのは魔法でカバー。
本当に魔法って便利だな。
その間に溶かしバターと型を準備しておく。
「イチイねーちゃん、これいつまでやんの?」
「んー、もう少しもったりするまでね」
「わかったー」
「変わろうか?」
「大丈夫!」
粉も振るい終わり、後は卵が泡立つのを待つだけだ。
ミィは疲れたらしく、早々に休憩だ。
泡立った卵に粉を入れ、バターを入れる。
量が多いのでイチイが混ぜる。
2回目はリーアに混ぜて貰おう。
型に流しいれ、焼成。
大きな円が二つ、出来上がった。
「冷ましてる間に、2回目を焼こうか」
ミィはお昼寝タイムに入ったので、トマに任せた。
今度は卵をイチイが、リーアが粉を振るう。
最後にリーアに混ぜて貰い、型に入れ、焼成。
サイズ違いの円を2つずつ、計4つを焼き上げる。
6つの円を並べ、冷ましている間にデコレーションの準備をする。
間に挟む果物をカットし、クリームを泡立てる。
果物は桃と苺、ブルーベリーやブラックベリー、ラズベリーなどだ。
魔法を使っているので、冷えるのは早い。
予めシロップを打っておく。
台座に一番大きな円を置きクリームを塗ってから苺を並べた。
そのまた上にクリーム、同じ大きさの円、クリーム。
側面にも綺麗にクリームを塗る。
「こんな感じで、2段目、塗ってみる?」
「やるー!」
中段は桃を挟んでみた。
「難しいー!イチイねーちゃんみたいに綺麗に出来ない!」
イチイの塗ったものも、そこまで綺麗ではないが、やはり多少の経験はある。
「大丈夫大丈夫」
保冷魔法を掛けつつやっているので、やり直してもクリームがぼそぼそしないのは良い。
「うー!出来たぁ!」
「よし、上出来!上段も行ってみよう!」
「おー!」
リーアが上段で苦戦している間に、中段を下段の中央に乗せる。
少しずれた部分のクリームを均す。
最後に上段を乗せ、ベースは完成だ。
「後はクリームを絞って、果物置いて、側面にマカロンで完成かな?」
最後の仕上げなのでミィが起きるのを待つ。
起きるまでは休憩だ。