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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第六章
104/154

102

「情けないわ」


「・・・面目ない」


マーサは考える。

イチイ・モンテ・ハロン・ヒツジ。

知り合った時はイチイ・ディ・ニトロプリアだった少女。

あっという間に男爵位を賜り、現在はイスフェリアとチガヤ両国に認められた子爵。

成り上がりという点は気に食わないが、逆に言えば実力があるということ。

美人とも可愛らしいとも違うが、神秘的な美形。

男性であれば引く手数多だっただろう。

髪の毛を伸ばせば淑女らしくなろうものだが本人に伸ばす意思はないようだ。

ローブの下がいつも白いシャツとチェックパンツと女性らしくない。

イチイに良く似合っているが、少し不満だ。

女性らしく着飾ってくれれば、リンクがその気になってくれるかもしれないのに!


口では決して認めはしないだろうが、マーサはイチイを気に入っている。

学校を卒業してしまえば、滅多に会えることはなくなってしまう。

屋敷や避暑地が近隣でなければ、夜会以外で会うことは適わない。せいぜい文のやり取りくらい。

マーサの婚約者はオースティンの兄。

イチイがリンクかオースティンに嫁げばこれからもずっと一緒にいられる。

リンクは今のところイチイに興味がない。

ならばオースティン。

オースティンは明らかにイチイに好意を寄せているし、婚約者も決まっていない。

それなのに・・・!



「早くしないと、イチイが帰ってしまうかもしれないわ」


「それは・・・」


「故郷がどこか、聞いた?たぶんチガヤ王国なんじゃないかしら」


イチイは遠いところとしか言わなかったが、語学が苦手だと豪語するイチイが、チガヤ王国言語では満点を取り続けているのが証拠。

他国ならばますます会う機会が減ってしまう。

城下にあるお店もきっとトーマス・ニトロプリア伯爵子息辺りに任せてしまうだろう。


「オースティンがダメなら、リンクお兄様にお願いするわ」


「それは・・・!」


「じゃあ早くしてよね」


「う・・・」



でもきっと、オースティンでは無理だ。

マーサからイチイにアプローチしてみようか。

オースティンの良い所を並びたてて。










「イチイ」


「マーサ、どうしたの?」


「イチイには婚約者いなかったわよね?」


「いないよ」


「リンクかオースティンの婚約者になって」


「は・・・いやいやいや、私こっちで結婚はしないよ」


断るとマーサが頬を膨らませて憤る。


「何でよ!いいじゃない、故郷に良い人がいるわけじゃないんでしょう!?オースティンの婚約者になりなさいよ!」


「えぇー・・・ってえええええ!?」


何故か泣き出してしまったマーサに、イチイは動揺する。


「だ、って・・・イチイ、かえっ・・・あえな・・・ぃ、ひっく」


「えええええ」


とりあえずマーサを抱きしめて、否、抱き抱え、移動する。

ここは目立つ。学校の廊下なのだ。



「ごめんね、マーサ」


マーサが泣き止み真赤になって逃げ出すまで、イチイはマーサの頭を撫で続けた。







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