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魔法使いの菓子屋  作者: クドウ
第六章
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軽量化されていない両手剣は、練習用と言えどそれなりに重い。

訓練を積んでいるとはいえ疲労感はそれなりにある。

特に来月の大会に向けて練習量を増やしているので殊更だ。


地面に寝転がり、空を仰ぐ。


良家の子女たちはそんなことしない。

イチイと同じように寝転がるのは「ディ」メンバーのみ。

イチイは子爵とはいえ気分は「ディ」のままだ。



気がつくと、オースティンが微妙な表情でこちらを窺っていた。


「何?どうかした?」


「イチイ殿は、何というか、女性らしくないな」


「・・・あぁ、うん、そうだね」


何と答えろと。

確かに例え平民だろうと女性は寝転がらないと思うが。



「いや、その、決して愚弄たわけでは・・・!」


「そんな必死にならなくても分かってるよ」


悪気がないことはわかる。

何が言いたいかはわからないが。



嘆息し、気を取り直したのか、オースティンはイチイの目を見る。

真剣な表情で真っ直ぐ見られると居心地が悪いというか何というか。


「違うんだ」


「うん?大丈夫、別に貶されたとかそういうこと、思ってないって」


「そうじゃ、なくて・・・マーサが・・・」


「マーサ?」


イチイがオースティンの目を見返すと、何故か見る見る間に赤く染まっていく。


「その、マーサが、”女の子は恋をすると女らしくなる”と」


「あぁ・・・」


その台詞を言うのが恥ずかしくて赤面してるのか。

なら言わなきゃ良いのに。


「・・・婚約者はまだ決まってないようだが」


「決まってないというか、結婚しないと思うし」


「そうなのか!?」


「うん、まぁ・・・故郷に帰るから結婚はしないかな」


どう考えても、こちらの世界で結婚はない。

向こうの世界に一緒に帰ってくれるならありかも知れないが、実際には戸籍もないし、現実的な話ではない。


「いつ、帰るんだ?」


「んー・・・早くて半年、遅くて4年くらい?」


「半年・・・」


オースティンが茫然と呟く。


「まぁたぶん、大分先の話だよ」


「帰らないでほしい」


言い切ったオースティンに目を見開く。

吃驚した。

オースティンは多少寂しく思っても、そういうことを言わない人間だと思っていた。


「寂しく、なる」


例えイチイが帰らなくても、お互いの領地は距離がある。

早々会うこともなくなるだろう。


でも、寂しいと言われるのは正直嬉しい。


「ありがとう」


オースティンはまだ何か言いたそうではあったが、そのまま何も言わなかった。















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