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「それでおかあさんとはどこで会うの?」
「城だ」
「また城・・・まさか!?」
「王妃だ」
またこのパターンか!
身分が高いことは勿論予想済みだった。
しかしレンが王子。
似合わない。
「王位継承順位は元々九位だし、そもそも放棄している。関係ない」
そういう問題だろうか。
もしやあの視線、王子だし有名だからの注目だったのでは。
それに気付くと恥しい。
王子が女連れだ、っていう視線だよね。
「母上がイチイの作った菓子が食べたいからお茶会にすると」
「え」
「城の厨房を貸し出す予定だそうだ」
なんてこった。
「ついでに菓子の作り方を料理人に教授してほしいと」
うわぁ。
それって大丈夫なのか、料理人のプライド的なものは。
こんな小娘に教わるってどうよ。
「大丈夫だろう。他国の菓子の作り方だ、知らなくて当然のことを教わる」
「はーい・・・」
憂鬱だ。
城の厨房は、勿論広かった。
料理長・副料理長・以下5名の7名を前に菓子作りだ。
緊張する。
チガヤのデザートで一番人気はクレームブリュレもどきらしい。
もどきなのはあのカラメル部分がないからだ。
イチイはまず、自分の故郷ではカラメルがぱりっとしていることを伝える。
実際に作り置きのあったブリュレに砂糖を振り火魔法で焦がす。
赤砂糖がないので白砂糖なのはまぁ許容範囲ないである。
チガヤにはゼラチンがない。
そこでイチイはヘーリングの名産であるゼラチンを料理長らにプレゼントした。
これでレアチーズケーキ、パンナコッタの作り方を教える。
チーズケーキも、もっと生クリームをたっぷり使った滑らかなものや、どっしりと濃厚なものとバリエーション豊かに。
プリンやシュークリームなども作る。
その後、庭園の小屋に魔方陣を設置。
実験の結果、店との相互転移に成功した。
「成功したのねっ!」
「はい」
「嬉しいわ、これで色々送って貰えるわ~」
「母上・・・」
どうやら色々送って貰う気でいるらしい。
「うふふ、果実酒、嬉しいわ。飲み終わったら違う味のものを送って頂戴ね」
「は、はい」
「こちらからも乳製品をたくさん送るわ。そうね、自販機も設置したら良いじゃない!」
何でそんなにノリが良いんですか。
「遠距離の転移魔方陣成功だなんて、快挙だわぁ。イスフェリアに男爵位を貰ったっていうのなら。そうね、チガヤは子爵位をプレゼントっ!」
「は・・・」
軽ッ!