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襲い掛かってくるモンスター。
両手をあげて立ち上がるので隙はある。
知能はあまり高くないのだろう。
ただ隙があるのと倒せるのは別問題だ。
槍の長さは1メートルくらい。腕の長さは1メートルもない。
目測で眼球まで4メートル。純粋に高さだけ考えると2メートル弱。
要するに、だ。
間合いがあると、届かない。
超・接近しないと眼球は狙えないということだ。
しかもジャンプしないと届かないんじゃないだろうか。
それだと力があまり入らず、威力がないのでは。
となると、モンスターに倒れて貰うしかない。
問題はどうやって倒れて貰うかだ。
自然に獣が転ぶことはないので、転ばせるなら罠しかない。
罠を仕掛ける時間はない。
「あ」
逆、だ。
賭けてみるしかない。
槍とショートソード以外の荷物をモンスターの顔面目掛けて投げ捨て、走った。
走る、走る。
目的の場所まで。
普通の大きさの木はモンスターに薙倒される。
出来るだけ、大きくて丈夫そうな木を探す。
周りの木の倍以上ありそうな木があった。
これならば、もしかすると・・・。
それに見つかるまでは少し休めるかもしれない。
急いで登り、息を潜める。
しかしモンスターはすぐそこだ。
ちらりとイチイの姿は見えていただろう、イチイの登る木の下へやって来て、イチイを見上げた。
――――――今だ。
イチイは眼球目掛けて槍を突き出した。
見事命中、痛みで苦しみ悶えるモンスター。
残酷?
そんなこと知るか。まだ死にたくない。
もう片方の眼球目掛けて、槍を突く。
両目を失ったモンスター。絶叫。耳が劈く。
どうやって留めをさせば良い。
方法は一つしか思い浮かばない。もしうまくいけば・・・。
モンスターにも脳はあるだろう、外皮からは貫通しない。
口内から斜め上部に突けば、貫通するかもしれない。貫通しないかもしれない。
イチイは屈伸で勢いをつけ、口内に槍を突いた。
「助かった・・・」
モンスターはやがて、絶叫をとめ、痙攣し、動かなくなった。
消滅はしない。
素材がどこかわからないため、だけど上級モンスター、稼げそうなので死体を分解する。
グロイ、キモイ、そう思いつつも、死にそうになったのに収穫なしは悔しいと、眉をしかめつつも分解を進める。
やがて死体は消滅し、鱗と爪が残った。
「もう、無理・・・」
大木に凭れかかり、あとで荷物の回収に行こうと、束の間の休息を取った。