第8話 綾人の大冒険①
--結城湊vs人妖の戦闘が終盤に差し迫った時--
「おう!?はっや!?人妖が分身してるみたいだな」
相も変わらず母親・美鈴の生み出した雪達磨に肩車をしてもらい戦闘場所からは少し離れた地点で戦いを見ていた綾人。もはや綾人の目ですら人妖の動きを正確にとらえることができないでいた。
「湊さんはどうするんだろう?っていうかあの人は固有呪術を使わないのかな?見たいんだけど」
綾人は完全に試合を観戦する客といった状態。それはほかの人たちも同じであり恭平や美鈴を含めた駆けつけた呪術師による避難誘導がなかなか進んでいないようす。
「みなさん危険ですから避難してください!」
「ここは戦闘に巻き込まれる可能性が高いです!危険です!」
そんな声に耳を傾ける者は少なく一定数の者たちが携帯を手に取って撮影しているものも。それもこれも結城湊という日本が誇る最強が負けるわけがないと確信しているから。
そしてバトルは最終盤。人妖の光速に迫る攻撃を湊の固有呪術【黄泉】による【閻魔ノ裁キ】にて巨大な両手に挟まれて人妖の敗北で終わりを迎えた。
「は?え?……終わった、のか?……何が起こった?なにあの巨大な手?あれがもしかしなくても湊さんの固有呪術ってこと? ほとんど何が起こったのかわかんなかった……これが【現代最強の呪術師】か……」
綾人や呪術師も含めたその場にいたすべての人の視界に映っていたのは、突如として巨大な腕が両手を合わせた状態で現れたところ。その直後に人妖が落下していく様に結城湊の勝利という結果だけが理解できた。
「「「うおおおおおおおお!!!!」」」
巻き起こる歓声。多くの人たちの視線は勝利した結城湊に注がれるが綾人だけはそちらではなく落下していく人妖に目が行った。その理由は・・・自身の近くに落ちてきたから。
「……なんかやばい気がする……」
自身では天地がひっくり返ってもかなわない存在が目の前にいるという事態に目の前の人妖は結城湊によって倒されたのだから大丈夫と余裕を持てはしない。綾人がその場から離れようとした瞬間に人妖は目を開ける。
「ぐっ……がはっ…………まさか…………これほどに…………」
目を開けてそう呟いた人妖。まだ綾人はその場から逃げ出そうとして雪達磨に頼もうとしていたところ。そんな綾人と人妖の視線がぶつかる。
「あ……どうもこんにちは……」
「……我はここで死すとも……せめてあの人間が苦しむために……」
そう言ってもはや立ち上がることもできずその命もあと数秒というときに人妖は最後の力を振り絞り空間を支配する能力を発動。それは丸い物体となって綾人の前方に落ちようとしていた。そんな状況に遅れて気が付いた湊に両親の恭平と美鈴。
「まずいっ!?」
「「綾人!?」」
ダン!!!
3人が駆け付けようとする。しかしいくら【現代最強の呪術師】と謳われる結城湊でさえもこれには間に合わなかった。
「……お父さん……お母さん……」
その言葉を最後に綾人はその場から姿を消した。
「くっ!?」
「いや……いやあああああああああ!?!?!?!?」
「……綾人……」
一歩遅く綾人が消えた直後にたどり着いた湊は悔しそうにその場で地面を叩き、母親・美鈴はその場で泣き崩れ、父親・恭平は膝から崩れ落ち茫然と。そこはそれまでの歓喜の状態から一転静まり返った。
果たして綾人はどうなったのか?死んだのかそれとも・・・
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「……どこここ?……」
綾人は死んだわけじゃなかった。そのことに安堵しつつも気になるのは周囲の環境。それまでは都会のど真ん中にいた綾人は一転して見渡す限り砂砂砂の大砂漠に雪達磨に肩車されながら存在した。
「う~ん……これは……たぶんというか絶対あの人妖の影響だよな?」
あの人妖が転移を行っていたため空間系の能力を持っていることは綾人も理解していた。そのため綾人は人妖の能力によってどこかに飛ばされたのだと思っている。しかしそれは半分正解で半分不正解。
「どうしようか雪達磨さん?」
そうして話し相手もいないため母親・美鈴の生み出した雪達磨に語り掛けようと下を向くとなぜかその体が溶けかけていた。
「え?うそ?暑さに弱いの?さすがに知らない土地に一人は寂しすぎるって!」
肩車から降りて雪達磨をどうにかできないかとその体に呪力を流してみる。
「あれ?なんだこれ……なんか……」
初めて呪力を流したため本来ならなにもわからずそのまま消えるはずの雪達磨。そもそもとして雪達磨は暑さに弱いから溶けるわけではない。それは雪達磨が主である美鈴の影響外に行ってしまったために呪力が供給されずに消滅しようとしていた。それは"ならば呪力を補充すればいい"という簡単なことではない。1人1人で呪力には違いがあり当然ながら雪達磨の主である美鈴以外の呪力を注いだとしてもなんの意味もない。綾人と雪達磨で呪力のつながりを作ろうとしても"自身とは別の人物の呪力にまったく遜色なく変化させないと"不可能。
そしてそのことを知らないはずの綾人はなんとなくの直感でありえない・前代未聞の方法で不可能を可能にした。
「よし!これでいけるんじゃないか?どう雪達磨さん?」
「……」
雪達磨は消滅せず元の姿を取り戻し再び綾人を肩車しだした。
「ははは!よかった!なんとかなった!なんとかなった!」
綾人は自分がとんでもないことをしたことに気が付いていない。そしてそれを成せたのも星脈に選ばれている【星紋の呪術師】としての才能がゆえ。
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