第7話 結城湊の固有呪術
突如として街のど真ん中に人妖が出現した。しかも人語を人間のように流暢に話せるほどに人妖の強さは跳ね上がり目の前にいる人妖は最強クラスといえる。しかしそんな人妖を相手に全く引かずに互角どころか優勢に戦えてるのが【現代最強の呪術師】【冥府ノ王】特級呪術師・結城湊。
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ドン!バン!
「みなさん!慌てずに!速やかに避難してください!」
「大丈夫です!人妖の相手をしているのはあの結城湊です!数度出現した人妖を討伐してきた実績があります!安心して避難してください!」
現在は二級呪術師の恭平と美鈴をはじめとした出動した呪術師たちが人々の避難誘導を行っている。ちなみに綾人は母親・美鈴が固有呪術【雪達磨】にて避難させている。
「すっげ~……これが最強同士の戦い……」
雪達磨はあまりにも美鈴から離れすぎると存在し続けることができないためギリギリの範囲までしか離れられない。だがその甲斐あって綾人は遠目から最強同士の戦闘を見ることができている。
「最初は速すぎて見てもわかんなかったけど……だんだんと見えるようにはなってきたかも……」
ちなみに雪達磨は大人よりも高いため綾人は雪達磨の肩に乗っている肩車態勢。
「でも……なんか……思ってたよりも余裕そうだな……」
それは当初は戦闘スピードが速すぎて動体視力が追い付かずに見ることがかなわなかった綾人も慣れたのか呪力の無意識な効果なのか徐々に戦闘風景が見えだしてきた。それは戦闘をする両者の表情まで。綾人の目には湊が余裕な表情をし人妖が反対に焦って見えた。
「……たぶん……本当に余裕なんだ……。人妖の最強クラスですら現代最強には必死になるレベルにないってことか……」
その綾人の考えは正解だった。それは理由もきちんと存在するが結城湊が現在も人妖の戦闘に使用しているのが基礎呪術であり固有呪術を使用した本気の戦闘を見せていないのがその証拠。
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「くっ!?まさかこれほど!?」
「どうした?俺の強さが予想以上だったか?」
空中に呪力の足場を作りそこに立ち人妖を相手に挑発めいた言葉を吐く結城湊。しかし内心では彼もまた困っていた。
〈さて、どうするか。周りの建物や人に被害が出ないように戦っていると決めてきかけるか〉
結城湊が戦っている人妖は実力でいえば湊が本気を出せばすでに討伐されている程度の実力しかない。人妖の最強クラスといえど"安倍晴明に迫る強さ"を持つ湊にしたら本来なら悩みを抱えることはないのだが環境が悪かった。
〈ここまで街のど真ん中だと下手に強力な術を使えば建物や人に被害が出るかもしれない。だがそれを回避するために遠くへ吹き飛ばしでもしたらこいつの能力だと逃げられかねない。人妖をみすみす逃がすような真似だけは避けたい。 中途半端に強いのと俺の対策をしてきているのがめんどくさいな。能力も含めて〉
湊が言っている能力とは一部の呪妖が持つ力のこと。呪妖はたくさんの人間を殺していくと大呪妖に進化するのだがその手前である程度でそれぞれ固有の能力を持つことになる。まるで呪術師の固有呪術のように。さらにそれが人妖ともなればより強力な能力へと変貌する。そして目の前の人妖の持つ能力はといえば・・・空間転移だった。
「我を舐めるなよ!我は最強だ!我こそが全呪妖の王に立つにふさわしいのだ!決してあのような存在ではない!」
「……」
人妖のその言葉に湊は少し神妙な表情となる。それは人妖の放ったあのような存在というものに心当たりがあったから。
「貴様をここで殺し!それを我は証明する!」
ギュイン!
そう宣言した人妖が連続転移を繰り返しながら高速で湊の周囲を飛び回る。それは連続転移の効果なのかそれまでよりもより一層の速さがあった。
ギュイン!ギュイン!ギュイン!ギュイン!
「……」
その速度は音を超え雷を超え光に迫った。一方で湊は中心にてじっと微動だにせずに立ち尽くす。それに人妖が不気味に思っていると湊が一言つぶやいた。
「……来いよ……」
「っ!?結城湊ーーー!!!!」
光に迫る速度となった人妖の拳が湊に振るわれようとしていた。
「【閻魔ノ裁キ】」
そうして現れたのは巨人のような両腕だった。その両腕は光に迫る速さの人妖を正確に捉えその両手を合わせることで人妖をつぶした。
バン!!
「がっ!?」
その両手に挟まれ潰された人妖はそのまま地面に落ちていく。
これこそが結城湊が【冥府ノ王】と謳われる所以。結城湊の固有呪術【黄泉】とは地獄に干渉する呪術であり、今の巨人のような両腕も【閻魔ノ裁キ】という名の通り閻魔の両腕を召喚する呪術。この固有呪術【黄泉】があるからこそ結城湊は【現代最強の呪術師】と呼ばれるようになっていた。
「ふう」
湊は人妖を周囲の建物や人的被害などをなく討伐できたことに安堵のため息。
「人が死なないのはもちろんだけど……建物とか壊すと書類の束が……」
どうやら【現代最強の呪術師】と謳われる結城湊でさえも恐怖することは存在するらしい。しかしその安堵は人妖が虫の息ながらも生きながらえていることに気づくことを遅らせた。そしてそれが悲劇を生む。
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