第6話 現代最強の呪術師
その日、神護家に人がやってきた。
「いやー。帰ってきたらまさか子供を産んでるなんてな~。なんで言わなかったんだよ?」
「すいません。湊さんには直接会ってびっくりしてほしくて」
「私はメールだけでも知らせたほうがいいって言ったんですけど……。すいません夫が」
そんな仲良さそうに会話をしている3人。しかし両親が敬語を使うその人物を綾人は知らなかった。
〈誰だこの人?年は30代ほどか?少なくとも共に26歳の両親よりは年上っぽい。というか湊さんって言ってたけど……なんか聞いたことがあるような……なんだっけ?〉
湊という言葉に記憶の中に引っかかるものがある綾人。しかしすぐには思い出せない。そんな悩んでいると父親・恭平が綾人を持ち上げて男の前へ。
「ほら綾人。あいさつしなさい」
「……神護綾人です。おじさんだれ?」
記憶に引っかかるものがあるが思い出せない綾人は子供という利点を生かして素直に聞いてみた。
「お?賢い子じゃないか。そこは美鈴ちゃん似か」
「なんですかそれ!俺を馬鹿みたいに!」
「うふふ♪」
〈いや……こっちが名乗ったんだからそっちも名乗ってもらわないと……〉
そんな綾人の思いが表情に出てたのか相手の男も名乗った。
「おっと。俺も名乗らないとな。俺は結城湊。君のお父さんとは仲良くさせてもらってるんだよ」
〈結城湊?・・・ああ!?あの結城湊か!?テレビの特集で見たことある!?たしか……史上最も安倍晴明に近づいた現代最強の呪術師……〉
安倍晴明とは呪術師の祖にしてその語り継がれる実力は千年を超えた現代においても史上最強の呪術師の座に君臨している。【星紋の呪術師】と呼ばれ綾人以外で星脈に触れ完璧に扱えた唯一の人物。
「しっかし随分大きいけど……この子はいつ生まれたんだ?」
「綾人が生まれたのは湊さんが海外遠征をしだしてからですよ」
「へえ~。ってことは綾人くんは3歳か?」
「うん、そうだよ。おじさんは?」
「おじっ!?……まあ年齢的にもおじさんか。 俺は35歳だよ」
おじさんと呼ばれて少し落ち込んでいる現代最強の呪術師。どうやら今まで3年間も会いに来なかったおは海外に行っていたためらしい。
「とりあえずそうと分かれば少し遅いかもしれないけど出産祝いは出さないとな」
「ありがとうございます!いただきまーす!」
「ちょっと恭平!少しは遠慮しなさいよ!」
少しふざけた態度を見せる恭平に怒る美鈴。
「いいんだよ美鈴ちゃん。こいつはこれで」
〈現代最強と随分気安い間柄なんだなお父さんは。兄貴分と弟分てきな感じか?〉
2人の会話や態度からなんとなくそう感じ取った綾人。
/////
そうして数日後。結城湊から出産祝いと称して超高級料亭へ連れて行ってもらった。
「こ、こんな高級なお店……緊張しちゃいます……」
「ほ、本当にいいんですか?私と綾人まで?綾人は賢い子ですけど3歳なのでなにか粗相をしてしまうかも……」
お店が予想以上の超高級料亭だったため緊張している様子。美鈴にいたっては綾人がなにかやらかした場合を考えて顔面蒼白。
「ははは!なにも気にする必要はないよ。ここは昔にちょっとした縁があってな。その時のことを恩に感じてくれていて多少の融通はきくんだよ」
笑ってなんでもないかのように言う結城湊だがそんな言葉では恭平・美鈴の緊張は解れることはないらしい。
〈お店の外観とか立地とか内装も……どれをとってもテレビでしか見ないような超高級料亭ってのがわかるな……別になにかするつもりはないけど子供らしさは捨てたほうがいいか?〉
綾人もいつもなら食事の際には子供らしくテーブルマナーなどは無視して食べているのだがそんなことが許されないような雰囲気に子供らしさを捨てようかと悩みだす。
「失礼いたします」
そうして襖の外から声がかけられ食事が運ばれてくる。すると綾人の目の前の料理だけほかの3人とは違う。
「特別に子供用の料理も作ってもらった。これで綾人くんも食べやすいだろ?」
〈特別にってことは本来は子供用メニューは提供してないってことか……本当に融通がきくんだな〉
食事中にここの料理長がやってきた。その料理長から話を聞くとどうやら昔に特Aの裏呪術師に命を狙われたことがあるらしい。その時に料理長の命を助けたのが偶然にそこに居合わせた結城湊その人だった。相手が特Aという世界最強格の裏呪術師だったため結城湊も苦戦したがなんとか勝利。
「私がいるのは湊くんのお陰なので」
そんなこんなで結城湊の遅れた出産祝いの食事会は最初こそ緊張していた神護家だったが最終的には料理のおいしさに緊張を忘れ食べ続けていた。ちなみに大人3人幼児1人の食事代では神護家3人の目ん玉が飛び出ていたということだけ言っておく。
〈……特級呪術師ってそんなに儲かるんだ……〉
しかし事はお店を出て別れるというタイミング起こる。
「今夜はありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
家族3人で頭を下げる綾人。綾人も子供のふりを忘れ2人と一緒に深々とお辞儀をする。
「喜んでくれたのならよかったよ。それじゃあ今日はここで」
「はい!また連絡します!」
そうして別れようとして歩き出そうとしたその瞬間に今までの笑顔だった結城湊の表情が険しくなる。
「……」
その視線は4人のほうへ顔を俯かせながら歩いてくる1人の男性へと注がれている。しかしそこは人通りも激しい歩道であり男性が歩いていてもなにもおかしなところはない。
「湊さん?どうかしたんですか?」
「湊さん?」
突然の雰囲気の急変に恭平も美鈴も困惑。
〈なんだ?あの人になにかあるのか?〉
綾人が結城湊が視線を送る男性を見ていた瞬間に綾人の目にはその男が顔を俯かせながらもニヤリと笑うのが見えた。
「察しがいいな……さすがは【冥府ノ王】……」
その男が喋りだし顔を上げるとなんと眼球がすべて真っ黒となっていた。その特徴と喋りだしたことで醸し出した異様な雰囲気に恭平と美鈴も気が付いた。
「……こ、こいつって……」
「……あの黒い眼球にこの異様なまでの雰囲気……」
〈……人妖……〉
呪妖には段階が存在する。一番弱く最も出現するのが呪妖。そんな呪妖が大勢の人々を殺し進化したのがビルほども大きくなる大呪妖。しかし呪妖が大呪妖へと至る前に人間の死体へと取り憑いた呪妖は人妖と呼ばれその強さは大呪妖の数倍と呼ばれている。
〈確か人妖ってのは特殊で滅多にそうはならないって聞いたことがある……それに流暢に喋るほどにその強さは桁違いに高くなるって……〉
ここに【冥府ノ王】とも呼ばれる【現代最強の呪術師】結城湊が人が多い街のど真ん中で最凶の人妖と戦闘を行う。
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