第5話 公園へ
裏呪術師には特A~Dという危険度がある。その危険度は強さはもちろんその残虐性なども考慮されてのランクとなる。
ショッピングモールにて現れた裏呪術師組織"烏獄"の事件に関して警察はその多くの謎を解明できずにいた。いったい誰が撃退し拘束したのか?・烏獄のボスである危険度Bに認定されている十文字吉延はどこに消えたのか?・数人の構成員たちが口にする"子供怖い"はなんなのか?。
そしてあれから数日が経過してこれらをやった張本人は現在公園に向かっている。
「早く公園であそびた~い!」
「ふふっ。そうだね。友達ができるといいね?」
「うん!」
子供らしく笑顔で母親・美鈴に返答する綾人。しかし心では別のことを考えていた。
〈しっかしよく生きてたな俺。そもそもが考えなしに動きすぎなんだよな~。 監視カメラとかあっちが壊してくれててよかった~〉
綾人はあの時は気が付いていなかったが翌日となりショッピングモールの監視カメラが壊されていたと知って、もし烏獄が監視カメラを壊していなければ大人を相手に暴れまわる三歳児がバッチリと映っていたことにその時なって初めて気が付いた。そこは烏獄に感謝である。
〈にしても……ぜんっぜん操作できなかったな。本当はほんの少しの星脈を呪力弾のように丸状で放つつもりだったのに触れた瞬間に気絶しちゃったし。 しばらくは封印かな……〉
綾人が思い出すのはニュースでやっていたショッピングモールの現状。ところどころに銃弾の跡があったりするがそんなことよりも目立つのは太く長い地面を大きく抉っている跡のほう。こちらに対しての修繕のほうが時間がかかりお金も嵩むとのことでそれを見たときの綾人は心の中で謝罪した。
「ほら綾人!公園についたわよ!」
ちなみに綾人はこの公園にやってくるのは初めてのこと。少し離れた位置にあり今までそこに公園があることを知らなかった神護家は少し歩くことになったがやってきた。
「すいません。この子も一緒に遊んでもいいですか?」
その公園内にはすでに複数人で遊ぶ子供たちとそれを見守る大人がベンチで座っている。美鈴はそんな大人たちに話しかけた。
「もちろんいいわよ」
そう言った母親が立ち上がる。
「晴羅!この子を入れたあげて!」
「は~い!」
母親の言葉でそれまで砂場で遊んでいた女の子が立ち上がり綾人のほうへとやってくる。
「こっちだよ!いこう!」
「あ、お母さん!行ってくる!」
「ええ。遊んでらっしゃい」
そうして綾人は晴羅と呼ばれた女の子に腕を引っ張られながら砂場へと連れていかれる。
〈こういうときって名乗ったりしないのか子供は?とりあえずテンションを合わせ気味で行こう〉
綾人は周囲に子供がいなかったため今世では一緒に遊ぶ友達はいなかった。なので幼児を演じながら探り探り様子を見る。するとさっそく晴羅ちゃんが自己紹介を始めた。
「せいらは"さおとめせいら"だよ!きみは?」
「僕は神護綾人っていうんだ!」
こうして綾人は晴羅に引っ張られながらも一緒にほかの子たちとも遊ぶことに。その間の母親連中はベンチにて座りながら話し合い中。
〈とりあえず星脈についてはいったん置いておいて。あの戦いからの学びとして俺に足りないのは戦闘経験値の不足と気配の察知だな〉
綾人が考えるのは最後に戦った烏獄のボス・十文字吉延戦。
〈あの時に勝てたのは完全に星脈があったからこそ。自力では完全に敗北してた〉
その時の光景を思い出して今でも顔が青ざめる綾人。するとその様子を察知したのか晴羅ちゃんが綾人の顔を覗き込んで心配そうに見る。
「どうしたの?だいじょうぶ?」
「う、うん!大丈夫だよ!ほら見てみて!家作ってみたんだ!どうかな!」
頭では思考しながらも手は動かしていた綾人。砂場でみんながなにかしら作っていたので綾人も家を作ってみた。すると一番最初に褒めたのは晴羅ちゃんではなく別の女の子。
「しゅご~い!!」
パチパチパチパチ!
その子は綾人や晴羅よりも1歳下の2歳の天草阿沙ちゃん。小学生の子供1人いる中で一番の年下の女の子。
「ははは。ありがとう阿沙ちゃん」
その舌足らずなかわいさについ頭を撫でたくなったが綾人は自身の手が土で汚れていることを思い出して少しだけ呪力にて手を形作り撫でることにした。
「ふぇ?」
呪力を見えないように薄くしているために阿沙ちゃんにも周囲にも綾人がなにをしているのかは見えていない。そのため阿沙ちゃんは頭をかしげる。
〈とりあえず課題の戦闘経験値の不足はどうにもならないとして気配の察知はどうにかしたいな~。なんかいい感じのが思いつかないかな?〉
気配察知の方法について思考を巡らせながらも子供たちと一緒に遊んでいる綾人。そんな器用なことをしていた綾人の腕を掴み阿沙ちゃんが滑り台のほうへと引っ張っていく。
「あやとおにいしゃん!すべりだいいこ!」
「うん!行こう!」
子供らしく一緒に滑り台へ。するとその場にいたみんなも一緒に滑り台へと向かう。するとその場の最年長の天草刀利くん(9歳)が阿沙ちゃんの手を握る。
「阿沙?僕と一緒に滑ろうか?」
名字からもわかる通り阿沙ちゃんと刀利くんは7つ年の離れた兄妹だった。そしてそんなお兄ちゃんの刀利くんは兄としていつものようにそう提案したが返ってきた言葉は刀利くんを失意の底に沈めた。
「や!あやとおにいしゃんといっしょ!」
「な!?そんな!?」
ガーン・・・
わかりやすいように手と膝をついてショックを受けている刀利くん。
〈なんかごめんね?〉
心の中で謝りながらも沈んでいる刀利くんを放っておいて子供たちは滑り台へ。そして一回目の滑り。
「やー!」
「わー!」
綾人が阿沙ちゃんを前にして抱える形で一緒に滑った。そのあとにみんなも並んで滑っていたのだが問題は二回目の滑り台の頂上で起こった。
「つぎはせいらといっしょにすべろう!あやとくん!」
「う、うん。いいよ」
「だめ!あやとおにいしゃんはあしゃといっしょにすべるの!」
「あさちゃんはさっきすべったじゃん!かわりばんこだよ!」
「や!やだやだやだやだ!」
なぜか急に喧嘩をしだした晴羅ちゃんと阿沙ちゃん。まだ会って十数分ほどでなぜか2人からなつかれた綾人はどうすればいいか困惑中。そしてこんな時に仲裁役に入るはずの最年長の刀利くんは沈んでいてそこにはいない。
「お、おちついて。みんなで楽しく遊ぼうね!」
なんとか落ち着くように言葉をかけるも2人はさらにヒートアップ。特に阿沙ちゃんが駄々っ子のように手足をバタバタさせる。しかしそこは滑り台の頂上でありそこは1人分のスペースしかなく狭い。そんなスペースに3人でいるもんだから阿沙ちゃんのバタバタさせている手足が晴羅ちゃんにあたり押す形に。
「きゃ!?」
「晴羅ちゃん!?」
晴羅ちゃんは阿沙ちゃんの手に押される形で1m以上はありそうな滑り台の頂上から身体が投げ出され落ちそうになっている。刀利くんや大人たちはやっと気が付くも到底間に合いそうにない。唯一二級呪術師である美鈴もいま立ち上がろうとしているところ。
「しまっ!?」
しかし落ちたのは呪力を使い晴羅ちゃんを滑り台へと押し戻すことに成功した綾人だった。
ドン!
「綾人!?」
駆けつける母親・美鈴。しかし地面に落ちた綾人は奇跡的に無傷の様子。
「綾人!?大丈夫なの!?ケガは!?」
「だ、大丈夫だよお母さん!僕はどこもいたくないよ!」
〈あぶねー。咄嗟に呪力を身体強化してないと助けられなかっただろうしこの体も無事じゃすまなかったかもな〉
綾人は咄嗟に呪力を使用したためにことなくを得た。そして自身を助けて綾人が落ちた晴羅ちゃんや自身が暴れたせいで綾人が落ちた阿沙ちゃんは泣きじゃくり綾人に抱き着く。
「「ふぇええええ!?」」
「よ、よしよ~し」
綾人が大変だったのは助けることよりも2人が泣き止んだ後も自身を放そうとしなかったところ。
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