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この話を詳しく聞きたいだって?僕から振っておいてなんだけど好奇心旺盛なんだね、君は。
こんな話を聞いてもしょうがないよ。なんにも楽しくないよ。人が人を傷つけたって話をするだけだよ。ただそれだけ。
それでもいいっていうんなら……。話を始めよう。
僕の学年には江田という奴がいた。そいつはいわゆるいじめっ子ってやつだ。だけど教室でいじったり、陰口を言ったりってそんなレベルじゃない。校舎の裏に連れ出してカツアゲや脅迫をしていた。
中学からちょいと名の知れたヤンキーでね。ちょっとした問題児だった。気に入らない生徒にはガンを飛ばして教師の見えないところで脅したり暴力を働いていた。
タッパもとてもあってね。高校一年生なのに遠藤と同じくらいの体格だった。教師も彼の行動は把握していただろうけど何も言えなかったんだろうね。
それが関係したのだろうか。ある日、問題が起きた。僕の友達が被害にあったんだ。
平山というクラスメイトの男子生徒がいた。席が近かったからすぐに仲良くなった。僕の高校友達第一号だ。彼は穏やかなやつで話していてすごく落ち着いた。
そんなある日の昼休み。授業まであと5分を切っても平山は席に戻ってこなかった。几帳面な彼がこの時間に来ないのは今までなかった。
だから不審に思って教室を出た。嫌な予感がしたんだ。他のクラスにもトイレにもいない。自分が間に合わないのは癪だと思い戻ろうとした。
そうしたら彼の声が聞こえたんだ。廊下の窓の外から。何を話しているか聞き取れなかった。でも急いで窓を開けた。悲鳴に近い声だったから。
急いで窓を開けた。聞き覚えのある音が聞こえる。肉がぶつかる音。誰かが殴られていることを悟りそこから外へ出た。
僕らの学年は一階で、廊下は校舎の裏に面していた。そこを抜けてちょうど窓から死角になっているところまで走り抜けた。声を頼りに。
そこで僕は見たんだ。二人の男。背の高い男とそれより少し低い男。その高い方が低い方の胸ぐらを掴んでいて。低い方はダランと腕から力が抜け切っている。平山の顔は腫れ上がっていた。