3 後悔
2025.11.6
2エピソードを結合しました。
遠藤ジムでの練習の日々は割愛しよう。本来の本題にはあまり関係しないことだからね。
初めて試合で勝ったこととか。難しい技を成功させたこととかはこれから話すことには何も関係ない。だから割愛する。
でもこれだけは言っておく。
ここでの三年半はすごく楽しかったよ。遠藤さんに怒鳴られながら練習したこととか。
他の同僚たちと切磋琢磨しながら鍛えていったこととか。さっき話した山田さんもすごく面白い人で。
稽古がない日でも飯に連れててってくれたりしたよ。
思い出が詰まってる。かけがえのない思い出が。だからもし聞きたくなったらまた声を掛けておくれよ。
いっぱいに語ってあげるからさ。
でも結論から言うと高校に入学したころに辞めてしまったんだ。辞めてしまったと言うのは間違いかな。辞めさせられてしまった。
破門された。
一つの大切なルールがあったんだ。それは鍛えた技を競技以外で使わないこと。暴力として一般人に振るわないこと。
ただそれだけが絶対の掟だったんだけどね。僕はそれを破ったんだ。
何があったかだって?簡単なことだよ。
同級生の顎を砕いたんだよ。磨き上げた技を使って。それは僕の人生の中でも三本指に入る過ちさ。思い返すのも苦々しいけど是非とも聞いてほしい。懺悔のためにも。
◇
江田という生徒がいた。
彼はいわゆるいじめっ子という立場である。
しかし教室でいじったり、陰口を言ったりという部類ではない。
格下の生徒を校舎の裏に呼び出してやカツアゲや脅迫をしていた。
江田は中学からちょいと名の知れた不良であり問題児だった。
気に入らない生徒には脅しをかけて、教師の見えないところで暴力を働いていた。
身長もとても高かった。
高校一年生で遠藤と同じくらいの体格だった。
教師も彼の行動は把握していただろうけど何も言えなかったんだろうね。
それが関係したのだろうか。
ある日、問題が起きた。
僕の友達が被害にあったんだ。
◇
平山というクラスメイトの男子生徒がいた。
圭一とは席が近かったからすぐに仲良くなった。
圭一の高校友達第一号で、物静かな彼にとって話していて落ち着く人物である。
ある日の昼休み。
授業まであと5分を切っても平山は席に戻ってこなかった。
几帳面な彼がこの時間に来ないのは今までなかったので心配になった。
圭一は不審に思って教室を出た。
嫌な予感がしたのだ。
他のクラスにもトイレにもいない。
自分が間に合わないのは癪だと思い戻ろうとした。
そうしたら彼の声が聞こえた。
廊下の窓の外から聞こえるが何を話しているかまでは聞き取れなかった。
しかし圭一は急いで窓を開けた。
悲鳴に近い声と殴打する音がが同時に聞こえた。
圭一はそこから外へ出た。
一階での廊下は校舎の裏に面していた。
そこを抜けてちょうど窓から死角になっているところまで声を頼りに走り抜けた。
そこで圭一は見た。
二人の男。
背の高い男とそれより少し低い男。
その高い方が低い方の胸ぐらを掴んでいて。
低い方はダランと腕から力が抜け切っている。
平山の顔は腫れ上がっていた。




