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第八話:勝利の夜と、賑やかなハーレム

 ロザリア侯爵邸での一件を終え、俺たちは屋敷へと凱旋した。


 ベルフェゴールの影響から解放された使用人たちは、多少ぼんやりしてはいたものの、意識ははっきりしており、俺の【神の恩寵:全知全能】が、彼らの生命力と精神状態が急速に回復していることを示していた。


 侯爵邸の者たちは、突然現れた俺と、魔王を瞬時に討伐したその力に、驚きと感謝の念を抱いていた。


「勇者様、本当にありがとうございました……!これで、ロザリア様も救われました……」


 アルフレッドは、深々と頭を下げた。彼もまた、ベルフェゴールの影響下にあったとはいえ、以前の傲慢さは影を潜め、どこか憔悴しきった様子だった。


 今回の「ざまぁ」は、彼にとっても大きな教訓となったことだろう。


 屋敷に戻ると、既に夜の帳が降りていた。


 執務室では、フローラがこの度の報告書をまとめ、セレスティーナは今日の出来事を熱心に語り、そしてエミリアは、ロザリア侯爵邸での一件で得た新たな情報を整理していた。


「勇者様、お疲れ様でございました」


 フローラが、温かいハーブティーを差し出してくれた。彼女の指先が、わずかに俺の手に触れる。聖女の魔力が、疲労を癒すようにじんわりと体に染み渡っていくのを感じた。


「ふふ、王子様がいらっしゃるから、すごくスムーズに事が運びますね!」


 セレスティーナは、俺の隣に座り、まるで猫のようにすり寄ってきた。


 その瞳は、昼間の戦場での頼もしい姿を思い出したのか、きらきらと輝いている。俺の魅了の歌声だけでなく、実際の活躍が彼女の心を鷲掴みにしているようだ。


「アルフレッドも、ようやく目が覚めたでしょう。これで、王都の貴族社会も少しは浄化されるかと……」


 エミリアは、淡々とした口調ながらも、どこか満足げな表情を浮かべていた。


 彼女は自身の復讐を果たしただけでなく、この国の闇を暴く一端を担ったことに、静かな達成感を覚えているようだった。


 俺はハーブティーを一口飲むと、至福のため息をついた。昼間は魔王との戦い、夜は三人の美女たちに囲まれての団らん。まさに「全部盛り」の異世界ライフだ。


「しかし、勇者様。ベルフェゴールは討伐できましたが、『七つの大罪』はまだ六体残っています。そして、魔神王ヴァルファスも健在です」


 フローラが、真剣な表情で話しかけてきた。やはり聖女だけあって、危機意識が高い。


「分かっている。だが、焦る必要はない。むしろ、これからは積極的に攻めに転じる」


 俺は真剣なまなざしで言った。【無限の図書館】で、七つの大罪それぞれの特性と、魔神王の弱点も掴みつつある。


「『傲慢』のルシファーは、強力な精神支配能力を持つ。だが、彼の弱点は……」


 俺が次の戦略を口にしようとすると、セレスティーナが突然、俺の腕に抱きついてきた。


「もう! 王子様ったら、お堅いお話ばかりです! たまには、私たちとゆっくりして欲しいです!」


 セレスティーナは、俺の耳元で甘えた声を出す。吐息が耳にかかり、くすぐったい。


「そうですわよ、あなた様。今日の勝利を祝して、盛大な宴を開きましょう。わたくしが、とっておきのワインを用意してきましたわ」


 エミリアが、執務室の片隅にあるワインセラーを指差した。彼女も、今日の成功を喜んでいるようだ。


 フローラは、わずかに頬を赤らめながらも、二人の言葉に同意した。


「……たまには、息抜きも必要でしょう。勇者様も、お疲れのことと思います」


 三人からの誘いに、俺は思わず苦笑した。だが、悪い気はしない。むしろ、この賑やかさこそが、俺が望んだ「全部盛り」のハーレムだ。


「よし、分かった。今夜は、俺と、みんなの勝利を祝して、盛大にやろうじゃないか」


 俺はそう言って、グラスを手に取った。セレスティーナは嬉しそうに俺の腕を掴み、エミリアは上品な笑みを浮かべ、フローラはどこか安心したように微笑んだ。


 夜は更け、屋敷は歓声と笑い声に包まれた。最高のチート能力で敵を圧倒し、昼間は世界を救う英雄。夜は美女たちに囲まれ、酒を酌み交わす。こんな「全部盛り」の生活が、まさか手に入るとは。


 しかし、俺は知っている。


 この束の間の平和も、いつまで続くかわからない。


 次の「大罪」が、あるいは魔神王が、どんな新たな試練を仕掛けてくるのか。だが、どんな困難が訪れようとも、俺は俺らしく、この「全部盛り」の世界を生き抜いてみせる。


 明日の戦いに向けて、今夜は存分に彼女たちのハーレムを堪能するとしよう。

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