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第六話:屋敷とハーレム、そして新たな能力の覚醒

 王城での騒動から数日後。俺はあっという間に、王都の一等地に位置する豪華な屋敷の主となっていた。


 宰相の失脚と学園長の不正が明るみに出たことで、王家は俺に莫大な報酬と、居場所を提供したのだ。チート能力で悪事を暴いた結果、たちまちに権力と財産が転がり込んできた。


 素晴らしいことだ、ありがとうチート、ありがとう全部盛り。


「わぁ……! 本当に立派なお屋敷ですね!」


 セレスティーナが、目を輝かせながら屋敷を見上げていた。王女であるセレスティーナの居城のほうがはるかに立派な気がするが……。


 彼女は、王女という立場でありながら、何かと俺の屋敷に顔を出すようになっていた。


 もちろん、建前は「魔神王対策の打ち合わせ」だが、その実、俺と会いたいと思ってくれているのは明白だ。何しろ、今はもう【魅了の声音】を使っていないのだから。


 彼女の素朴な好意を得られているような気がして、俺はとても嬉しかった。


「ここが、あなた様のお屋敷……!」


 エミリアもまた、感慨深げに呟いた。彼女は宰相たちの不正を暴いた功績で、汚名を完全に返上し貴族としての名誉を回復し、今では王家から信頼される立場となっていた。


 しかし、彼女は自分の一族のもとには戻らず、何故か俺の屋敷に住み込むことを選んだ。


 これもまた、ざまぁ対象のはずが、ハーレム対象に転身する「全部盛り」展開ってことか? それとも、セレスティーナのように……いいや、いまは序盤も序盤だ。過度に期待するのはやめておこう。


「あれ、わたくしたちそんな関係だったかしら?」と言われたら立ち直れないかもしれない。


「勇者様、こちらの部屋が、貴方様の執務室となります。どうぞ、ご自由に」


 フローラが、俺を執務室へと案内する。


 彼女もまた、魔神王と七つの大罪の脅威について話し合うため、頻繁に屋敷を訪れていた。


 聖女が異性の屋敷に滞在するというのは異例中の異例だが、俺が「世界を救う勇者」という大義名分があるので、誰も文句は言わない。これもチートの恩恵だ。


 俺の屋敷は、王都でも指折りの広さで、庭には美しい泉が湧き、豪華な調度品が並んでいた。そして、セレスティーナ、エミリア、フローラという、タイプの異なる美女たちが、俺の周囲に自然と集まってくる。まさしく、ハーレムの完成だ。


「しかし、勇者様。魔神王の動きは活発化しています。そして、七つの大罪の兆候も、各地で報告され始めています」


 フローラが真剣な表情で言った。彼女の言う通り、国内では、魔神王の眷属による襲撃が頻発しているという報告が上がっていた。そして、各地で「怠惰」「傲慢」といった人間の負の感情を象徴するような事件が起こっているらしい。


「ああ、分かっている。だが、焦ってはいけない。焦ればやつらの思うつぼだ」


 俺はそう言って、執務室の窓から外の景色を眺めた。王都の喧騒が聞こえる。この平和も、いつまで続くかわからない。だからこそ、今のうちにできることを全てやっておく必要がある。


 その時、俺の脳裏に、新たな力が覚醒した。


「【領域展開:無限の図書館】」


 俺の目の前に、突如として無数の書物が浮かび上がった。それらは、この世界のあらゆる知識、魔法、歴史、地理、そしてごくわずかではあるが未来の出来事までをも網羅しているのだ。


 本当はパソコンの複数モニターのようにしたかったのだが、この世界の影響を受けてしまったらしい。さすが全部盛り世界。たしかに、この世界ではこういう古風な図書館のほうが存在しやすいだろう。


「これは……!?」


 セレスティーナとエミリア、フローラが驚きの声を上げる。彼女たちには、俺が世界から引き寄せている情報が視覚化されたものが見えているようだった。


「俺の能力のひとつだ。これがあれば、この世界のあらゆる情報や知識を瞬時に手に入れられる」


 俺は【無限の図書館】の中から、七つの大罪に関する書物を引き抜いた。たちまち、その書物の内容が脳に流れ込んでくる。七つの大罪とは、人間の負の感情を司る強力な存在であり、それぞれが特有の能力を持つ。そして、彼らは魔神王に完全に服従し、人間に害悪をなす、恐るべき魔王だと。


「なるほど……これは厄介だな」


 俺はそう呟いたが、口元は僅かに笑っていた。この能力があれば、七つの大罪の出現場所や能力、弱点までも把握できる。そして、彼らが引き起こすテンプレイベントにも、先手を打って介入できるだろう。


 しかし【無限の図書館】があれば、魔神王だけでなく、七つの大罪の動向も完璧に把握できる。あとは出向いて戦うだけだ。さらにチート能力で俺の力は彼らの力を完全に上回っている。何も問題ない。


「さて、まずはどの『大罪』から手をつけるか……」


 俺はそう言って、三人の美女たちを順に見渡した。セレスティーナは期待に満ちた目で、エミリアは頼もしい視線で、フローラは穏やかな表情で俺を見つめていた。


 俺の「全部盛り」の異世界生活は、快適な屋敷と魅力的なハーレムを手に入れ、さらに新たなチート能力までも覚醒させた。だが、世界は相変わらず「全部盛り」の混沌に満ちている。


 さて、まずはどの「七つの大罪」を討伐するか決めなければ。必ず奴らを討伐してみせる。そう、人々のため、この国のため、そして何より俺のハーレムのために!


 全部盛りの世界の混沌と、俺の物語は、ますます加速していく。

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