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第二話:最初の選択と、盛り上がりの兆し

「ふざけんな、この世界!」


 俺の叫びは、魔神王の高笑い、テンプレお姫様セレスティーナの熱烈な視線、悪役令嬢エミリアの涙声にかき消された。いや、むしろ、俺の叫びが引き金になったかのように、状況はさらに加速していく。


 まず、お姫様が宝石のようにキラキラとした瞳で俺に駆け寄ってきた。


「ああ、王子様! 改めまして、私、セレスティーナと申します! 王子様のお声は、まさに神の御声! どうか、この魔神王から私たちの国をお救いくださいませ!」


 お姫様は、まるで物語の定石のように、俺の腕にしがみついてくる。この「魅了の声色」、強すぎるだろ。どっかの漫画にこういう魅了の術使う女いなかったか?


 しかし、俺が「神の御声」とか言われてる間に、魔神王の城からは黒い魔物が次々と地上に降り立ち、騎士団と衝突し始めた。


 その騒乱の傍らで、エミリアが再び俺を見上げた。


「あなた様……わたくしは、この理不尽な追放を許せません。どうか、わたくしに力を……」


 エミリアの声は震えていたが、その眼差しには強い意志が宿っていた。どういう状況だったのかはさだかではないが、彼女に非がないのはほぼ確実だろう。


 となれば、ざまぁ悪役令嬢である彼女がお救いくださいと懇願してきた相手、つまり俺が助けるのは自然なことだ。


 それに、この混沌とした状況で、彼女の知識やコネクションが役に立つ可能性もゼロじゃない。まあいずれチートですべてのことがわかるようになったりするのだろうが、いまはそうじゃない。


 俺は頭を高速で回転させた。チート能力は確かに万能だが、別に神様になれるわけじゃない。この「全部盛り」の世界で、果たしてどのように立ち回るべきか。


 このままお姫様の言うがままに魔神王を倒せば、一躍世界のヒーローになれるだろう。だが、その後は?


「ざまぁ」の対象である悪役令嬢を放っておけば、新たな厄介事を引き起こすかもしれない。


 ここで、俺は一つの方針を立てた。どうせ「全部盛り」なら、その「全部」を最大限に利用してやろう。


「お姫様……いえ、セレスティーナ様。承りました。魔神王を倒すことを、ここに誓いましょう。しかし、そのためにはまず、やらなければならないことがあります」


 俺は腕から離れようとしないセレスティーナと共に、エミリアの方へ向き直った。


「そして、エミリア嬢。あなたの詳しい事情もお伺いしましょう。この理不尽な追放劇の裏には、何か隠された真実があるのかもしれない。俺が、必ずあなたをお救いし、本当の令嬢へ返り咲かせてみせましょう」


 セレスティーナは少し不満そうな顔をした。俺がエミリアと話していたのが気に入らないのか。テンプレお姫様プラスやきもち焼きと、属性がさらに増えるぞ。そうなるとさらに俺のモノにしたくなるぞ、いいのかお姫様。


 エミリアは俺の真剣な眼差しに、やがて頷いた。


「……かしこまりました。あなた様のおっしゃる通りに。わたくしは、あなた様が指し示してくださる道を、必ず歩き切ってみせますわ」


 エミリアはすうっと息を吸い込んだ後、意を決したように大きく吐き出した。その吐息はまさに令嬢という形容詞がふさわしい艶やかな香りで、俺の鼻腔と脳をなまめかしくくすぐった。


「感謝いたします、あなた様……!」


 よし。まずは一つ目の選択はクリアだ。


 俺は、ハーレム要素とざまぁ要素を、それぞれの思惑を刺激しつつ、自分のコントロール下に置くことをに成功した。


 魔神王の侵攻を止めることが最優先事項ではあるが、その過程で起こるであろう「お約束」のイベント全てに、俺が介入してやる。


 俺は再び空を見上げた。魔神王の城からは、黒い魔物が次々と生み出されている。そして、地上では騎士団と魔物の激しい戦闘が始まったばかりだ。


「よし、やるか……」


 俺は覚悟を決め、第一歩を踏み出した。この「全部盛り」の世界で、「全部盛り」の俺は俺なりのやり方で、生き残ってやる。いや、生き残るだけじゃない。この混沌を、俺にとって都合の良い「全部盛り」に変えてやる!


 俺は、まず手始めに、一番近くで暴れている魔物の群れに視線を向けた。チート能力の一つ、【覇王の眼】が、俺の視界を拡張し、魔物の弱点を明確に映し出す。


(よし、最初の獲物は、お前らだ!)


 俺の異世界での戦いが、今ここに始まった!

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