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第二十五話:新たな誓いと、新たな幕開け

 激しい愛のぶつけ合いを朝方まで続け、一寝入りした後、俺は清々しい気持ちで目覚めた。


 隣には、愛おしいセレスティーナ、エミリア、フローラが、それぞれ安らかな寝息を立てていた。昨夜、本能同士をぶつけ合った残滓のように、シーツは乱れ、彼女たちもまた、その肌をさらけ出したまま眠っている。


(さて、これからどうするか……)


 俺は、国王陛下に何を伝えるべきか、少し考えた。チート能力で手に入れられないもの。


 物や名誉は、もちろんあれば嬉しいが、それは決して一番にはなりえない。


 俺が本当に望むものは、ただ一つだった。というか、それしかありえなかった。考えるまでもなかったな。


 しばらくして、三人も同時に目を覚ました。


「勇者様……おはようございます。あのように激しく求めてくださって、光栄でした」


 フローラが、優しい微笑みを浮かべた。


「とても素晴らしかったですわ、あなた様」


 エミリアが、そっと俺の髪を撫でた。


 セレスティーナは、顔を真っ赤にして俺の腕に抱きつき、まるで子猫のように小さな声でつぶやいた。


「王子様、はじめてなのに、あんなになってしまってすみません……でも全部、本当です……」


 そんな彼女たちを見つめ、俺は決意を固めた。


「なあ、みんな……」


 俺が真剣な顔でそう切り出すと、三人は不思議そうに俺の顔を見た。


「俺は、お前たち三人全員を妻として迎えたいと、国王陛下に伝えたいと思う」


 俺の言葉に、三人は一瞬、目を丸くして固まった。そして、セレスティーナの頬がみるみるうちに赤くなり、エミリアは少し驚いたような表情を見せ、フローラは穏やかな笑みを深めた。


「しかし……それは……一夫多妻制は、この国では法に抵触するかもしれませんし、何より、世間の目も……」


 エミリアが、冷静にそう告げた。彼女の言う通り、この国の法律では一夫多妻は認められていない。


「ええ。それに、わたしたちの未熟が、時に諍いを生むこともあるかもしれません……」


 フローラが不安げにつぶやく。


「ごめんなさい、王子様……たぶんわたし、自分が一番愛されていないと感じたら……怖いです。エミリア様のことも、フローラ様のことも大好きなのに……」


 セレスティーナが、体を震わせながら目に涙を浮かべる。


 俺は、そんな彼女たちに優しく微笑みかけた。


「そんなことは、心配しなくていい。俺が必ず、どんなことがあってもみんなを守るし、みんなを愛すると誓う。絶対に傷つけさせない。俺には、みんなが、三人全員が必要なんだ。誰一人として失いたくない。……みんなを愛しているから」


 俺の言葉に、しばらくの間、三人は顔を見合わせ、そして、互いに小さく頷いた。


「王子様が、そうお望みなら、私は喜んでお答えします!」


 セレスティーナが、満面の笑みで答えた。


「わたくしも……あなた様が望むのなら、喜んで……」


 エミリアが、少し恥ずかしそうに目を伏せた。


 フローラは、俺の顔にそっと手を添え、慈愛に満ちた眼差しで俺を見つめた。


「勇者様が望むのなら、私たちも望みます。貴方の隣で、貴方と共に歩めるのなら、どんな困難も乗り越えましょう」


 三人の揺るぎない愛の言葉に、俺の心は温かい光に満たされた。




 *****




 太陽が真上に上がりきる前に、俺は、国王陛下に謁見した。何人かの重臣とバルド将軍も同席している。


「陛下。私の報酬の件ですが……希望を素直に述べてもよろしいですか?」


 国王陛下は、俺の言葉に、深く頷いた。


「うむ。貴殿の功績は、この国の歴史上、類を見ぬもの。故に、望むものを改めて聞こう。この国の王位さえも……」


「陛下。王位はご遠慮いたします。私は、この王国の平和を見守り、必要とあらば持てるすべての力でこの国と民をお守りします」


 俺はそう告げると、国王陛下は困惑の息を吐いた。王位より欲しいものとはなんだろう、という表情だった。


 そして、次の瞬間、俺は真剣な眼差しで、国王陛下に告げた。


「私が望むものは、ただ一つ。セレスティーナ様、エミリア、そしてフローラ。この三人を、妻として娶らせていただきたい」


 それは、魔法もチートも、魅了の声も使わない、俺の心を振り絞った言葉だった。


 俺の言葉に、国王陛下は沈黙し、重臣たちも目を見開いた。会議室に沈黙が訪れる。国王陛下の顔は、驚きと困惑でいっぱいのようだった。


 重臣のひとりがぼそぼそと話し始める。


「勇者殿……それは……それは、この国の法には抵触する……」


 その声をさえぎるように、国王陛下とバルド将軍が大声で笑ってみせた。


「なんたる豪放にして無法! そして勇気と愛! 英雄色を好むというが、勇者殿の場合は違う、その眼には色などではない、真実の愛が宿っている!」


 と、バルド将軍。


「貴殿の決意、見事なり! 貴殿の行い、今の法には合致せぬが、時代も人も、世界はすべて変わりゆく。それに、貴殿ならば、その三人を幸せにできると、儂は確信している。法や制度を見直すいい機会にもなるであろう!」


 と、国王陛下。


「それでは!」俺は自分が笑顔になるのを抑えられなかった。


「うむ、国王の名において、貴殿と三人の淑女の婚姻を認める!」


『やった!』心の中で喜びがはじけたその瞬間、


「伝令! 伝令にございます!」


 扉が勢いよく開き、一人の兵士が血相を変えて駆け込んできた。彼の息は荒く、その顔には恐怖の色が浮かんでいる。


「隣国グラディオラス王国より緊急の報! 西方大陸に、新たな魔物の群れが出現した模様! その規模は、これまでの魔物災害とは比較にならず、大地が割れ、空が歪み、世界樹の根が枯れ始めていると……!! 自国の軍だけでは対処できず、我が国に救援を求めています!」


 兵士の言葉に、会議室の全員が凍り付いた。新たな危機。それも、これまでの魔物災害を遥かに凌駕する規模の脅威。


 俺は、心の中で呟いた。


(なるほど……全部盛りなら、第二章が始まるのもお約束だよな……!)


 魔神王を倒したことで全てが終わったと思っていたが、どうやらこの「全部盛り」の世界は、俺をさらに深く、そして広く巻き込むつもりのようだ。だが、もう、俺に迷いはない。


 俺は、会議室の扉から顔を覗かせているセレスティーナ、エミリア、フローラの三人に、ゆっくりと手を伸ばした。


「みんな……! 一緒に来てくれ!」


 俺の言葉に、三人は迷うことなく、俺の元へと駆け寄ってきた。セレスティーナは無邪気に、エミリアは覚悟を秘めて、フローラは慈愛に満ちた表情で、俺に抱擁を捧げた。


 さあ、新たな冒険と戦いが、俺たちを待っている!

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