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第二十四話:凱旋と、未来への思案

魔神王ヴァルファスを打ち倒し、終焉の渓谷に平和が訪れた。


俺は、王都軍と共に凱旋し、王都の住民たちは、熱狂的な歓声で俺たちを迎えた。道行く人々は「勇者様!」「神の化身!」と叫び、花を投げ、涙を流しながら俺を称えた。


その光景は、日本で誰からも必要とされなかった俺には、想像を絶するほどのものだった。


王城では、国王陛下が盛大な祝宴を開き、俺を労った。バルド将軍をはじめとする騎士団員、そしてセレスティーナ、エミリア、フローラも、誇らしげな顔で俺の隣に立っていた。


「勇者殿! 貴殿の功績は、この国の歴史に永遠に刻まれるであろう! 貴殿は、まさにこの世界を救った真の英雄だ!」


国王陛下は、高らかに宣言した。続いて、居並ぶ貴族たちも、将軍や兵士たちは、皆が俺に頭を下げた。


「勇者殿、貴殿には、この王国の宝全てを捧げても足りぬ。望むものは何でも申しつけよ!王国の半分の領地でも、最高の爵位でも、あるいは……私の愛娘であるセレスティーナを娶ることも……!」


国王陛下の言葉に、セレスティーナが顔を真っ赤にして俺を見上げた。彼女の瞳は、期待と恥じらいに揺れていた。


俺は、静かに国王陛下を見つめた。確かに、チート能力でなんでも手に入れられる俺にとって、物質的な報酬は必要ない。


しかし、国王陛下が与えようとしているのは、単なる物質的なものだけではない。


それは、この世界における最高の栄誉と地位、そして、セレスティーナという、俺が愛する女性との未来だ。それをこの場で無下にするのは失礼だし、かといってどう言って良いものか、迷ってしまう。


「陛下……温かいお言葉、痛み入ります」


俺はそう言って、深く頭を下げた。


「しかし、この功績は、俺一人のものではありません。セレスティーナ様、エミリア、フローラ、そしてバルド将軍率いる王都軍の皆の力が結集した結果です。そして、何よりも、この国の民の希望があったからこそ成し遂げられたことです」


俺の言葉に、国王陛下は満足げに頷き、周囲の者たちも感銘を受けたようだった。謙虚でも卑屈でもない。ただただ本当のことを言ったまでだ。


「報酬の件ですが……今すぐには決めかねます。一晩……一晩だけ、考える時間を与えていただけませんか?」


俺はそう返事をし、国王陛下も快く承諾してくれた。




その夜、俺は屋敷へと戻った。執務室のソファに、セレスティーナ、エミリア、フローラとともに体を沈み込ませる。


「王子様……お父様のいうとおり、何か望むものがあれば、わたしたちは全面的にします。その……わたしのすべてをささげることも……」


セレスティーナが、照れくさそうに俺の顔を見上げた。


「爵位も領地も、あなた様にはふさわしいでしょう。しかし、あなた様が何を望まれるのか……」


エミリアは、俺の意図を測りかねているようだった。


フローラは、静かに俺の前に座ると、その聖なる光で部屋を優しく照らした。


「勇者様……貴方の心は、今、何を求めていますか?」


俺は、彼女たちの言葉に耳を傾けながら、大きく息を吸った。そして、三人の手を取り、優しく握りしめた。


「みんな……今の俺は、きみたちを求めている」


俺の言葉に、三人は安堵したように微笑んだ。


その夜の逢瀬は、もはや逢瀬と呼べるものではなく、純粋な夜の営みだった。


これまでで最も激しく、そして、最も満たされたものだった。魔神王を倒したという達成感と、彼女たちとの揺るぎない絆。俺たちは何の憂いもなく愛と体をぶつけあった。


セレスティーナは、無邪気な愛を全身で表現し、俺の存在を心から求めた。俺は彼女の小さな体に宿る大きな母性に身をゆだねながら、そのやわらかさを堪能した。セレスティーナはそんな俺を赤ん坊のように抱きしめてくれる。彼女の甘い吐息が俺の理性を溶かしていく。


エミリアは、普段の冷静さを忘れ、情熱的な瞳で俺を見つめ、全てを捧げるように俺に身を委ねた。貴族令嬢としての立場や態度などをすべて忘れ去り、情熱的なキスを交わした。離れるとひとすじ、お互いの唇に橋が架かり、それを再度求めて再び唇を重ねる。彼女のすべてを味わうように、俺のすべてを味わってもらえるように。


フローラは、聖なる慈愛に満ちた指先で、俺のからだのあらゆるところに触れた。しかし、触れ続けるうちに彼女の指はどんどん熱を帯び、俺の体を焼くようになぞっていく。俺も彼女のすみずみまで触れ、彼女の肌のなめらかさを味わう。その行為は俺の魂の奥底まで癒しを与えてくれた。


そして、三人はそれぞれ、無邪気な体、美しい体、慈愛の体で、俺の本能を受け入れてくれた。


三人の体が与えてくれる、人間のもっとも原始的な愛のかたち。


どれだけ彼女たちを愛しても、俺の本能は失われず、そのうちに彼女たちも本能で答えてくれるようになった。


愛していると呟きあい、肌と肌が触れ合い、焼けるような熱を感じ、心を震わせるような恍惚の波が襲い、甘く艶めかしい吐息が混じり合う。


言葉などもう忘れてしまったかのように、愛と熱と快楽だけで、互いの心と体が深く結びついていることを実感した。それは、愛する三人との、究極の幸福だった。


朝方まで続いた営みを終え、三人が安らかな寝息を立てる中、俺は静かに体を起こし、窓の外を見つめた。朝焼けが始まり、王都に新しい一日をもたらす。




これから、どうするか。




俺が本当に求めているものは、もう手に入れている。


それは、己への自信であり、愛する人たちとの絆だ。


俺は、日本でのろくでなしだった過去を思い出した。


あの頃の俺には、何もなかった。だが、この世界で、俺は役に立っているという実感と、人々の幸せに貢献しているという実感を手に入れた。


そして、何よりも、彼女たちとの愛と未来がそこにある。


国王陛下に何を伝えるべきか。俺は、朝日を見上げながら、その答えを決めていた。

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