第二十三話:希望を懸けた最終決戦
『創世の輝石』の力を得た俺は、まさに神域に達したことを実感していた。
身体の隅々まで力が漲り、俺のチート能力が限界を超えて増幅されているのが分かる。
そして、何よりも、セレスティーナ、エミリア、フローラ、そして王国軍との揺るぎない絆が、俺の心を支えていた。
最終決戦の地は、王都から遠く離れた、古の魔神王ヴァルファスが封印されていたとされる「終焉の渓谷」だ。黒い瘴気が空を覆い、大地は魔力によって荒れ果て、おびただしい数の魔物の軍勢が蠢いていた。彼らが、ヴァルファスの真の眷属たちだ。
王都軍は、バルド将軍の指揮のもと、すでに渓谷の手前で展開していた。俺の【軍勢強化:神域】によって、兵士一人ひとりが聖騎士のような輝きを放ち、その士気は最高潮に達している。
「勇者殿! 準備は整いました!」
バルド将軍が、力強く叫んだ。彼の目には、確かな勝利への意志が宿っていた。
俺は、軍の最前線に立った。隣には、純白の鎧を纏ったセレスティーナ、黒いローブを翻すエミリア、そして聖なる光を放つフローラが立っていた。
セレスティーナは、俺の【軍勢強化:神域】によって、その身体能力と剣技が飛躍的に向上していた。彼女の瞳には、王女としての覚悟と、俺への信頼が宿っている。
エミリアの目は、常に冷静に戦場全体を見渡している。彼女の類い稀なる洞察力は、敵の動きや戦況の変化を瞬時に見抜き、俺の戦略をサポートしてくれるだろう。
フローラの体からは、これまで以上の神聖な力が溢れ出ていた。彼女の浄化の力は、魔神王の瘴気を打ち消し、兵士たちの負傷を癒す。
「みんな……いよいよだ」
俺の言葉に、セレスティーナは力強く頷いた。
「王子様……わたし、怖くありません。王子様と一緒なら、どんな敵にも立ち向かえます!」
エミリアは、静かに俺の隣に並び立った。
「この世界を救うため、わたくしは全てを捧げます」
フローラは、そっと俺の手に触れ、その聖なる力で俺の心を落ち着かせた。
「貴方の光が、私たちを勝利へと導きます。勇者様」
俺は、彼女たちの手を握り、心の中で確信する。この絆こそが、俺の真の力だ。
「総員! 突撃ぃぃぃいいい!!」
バルド将軍の号令と共に、強化された王都軍が一斉に魔物の軍勢へと突入した。
戦場は、一瞬にして混沌の渦と化した。
兵士たちは、聖騎士のように獅子奮迅の戦いを見せる。
彼らの剣は、魔物の甲殻を容易く貫き、魔法は、群がる魔物を一瞬で消し飛ばした。
一人ひとりが、まるで伝説の英雄のように躍動し、魔物の波を押し返していく。
俺は、戦場の中心で、ひときわ強大な魔力を放つ存在に視線を向けた。
それが、魔神王ヴァルファスだ。彼は、これまでの七つの大罪の魔王たちとは比較にならないほど巨大で、その体からは、怠惰、強欲、嫉妬、憤怒、傲慢、暴食、色欲……全ての魔力が同時に放たれていた。
「愚かな人間どもめ……貴様らの力など、この私には届かぬ!私は、この世界の全てを統べる者!七つの大罪の力は、私のほんの一部に過ぎぬわ!」
ヴァルファスの声が、終焉の渓谷に響き渡る。その声だけで、大地が震え、兵士たちの心が怯みそうになった。
「させるか!」
俺は、ヴァルファスに向かって一歩踏み出した。
「【絶対零度:凍結】!」
俺が能力を発動すると、ヴァルファスの体が一時的に凍りつき、動きが止まる。その隙に、強化された王都軍の集中砲火がヴァルファスに降り注ぐ。
「【無尽蔵の創造】!」
ヴァルファスの体から、新たな魔物の大群が吐き出されようとした瞬間、俺はそれを発生する前に消滅させた。
「【心の浄化:無垢】!」
ヴァルファスの放つ、嫉妬や憤怒の精神攻撃が兵士たちの心に届く前に、フローラがその聖なる力で打ち消す。エミリアは、ヴァルファスの次の動きを正確に予測し、バルド将軍に指示を出す。将軍は、その洞察力に基づいた指示で、軍を巧みに動かし、ヴァルファスの攻撃を避けていく。
「【理性の回復:鎮静】!」
ヴァルファスが、兵士たちの心を狂気に陥れようとした瞬間、俺の力がそれを打ち消し、彼らの冷静さを保たせる。
「【絶対支配:服従】!」
ヴァルファスの傲慢な魔力が、俺の精神を支配しようとしたが、俺の【絶対支配:服従】の能力がそれを弾き返す。
そして、ヴァルファスが、愛する者の幻影で俺の心を惑わそうとしたその瞬間、俺の【真実の瞳:破邪】が、その幻影を瞬時に粉砕する。
「な、なんだと!? この、この力は……! なぜ、貴様は私の全ての力を……!」
ヴァルファスは、驚愕に叫んだ。七つの大罪の力を同時に打ち消され、彼の内に統合された力が混乱に陥っていく。
「貴様は確かに『七つの大罪』すべての力を……それよりはるかに上回る力を持っている。だがそれがお前の心臓とつながっている以なら、俺はそのすべてを攻撃できる! お前の一番忌み嫌う方法でな!」
俺は、ヴァルファスに向かって駆け出した。その手には、『創世の輝石』の力が宿った剣が握られている。
セレスティーナが、俺の隣で剣を振るい、ヴァルファスの眷属を薙ぎ払う。彼女はもう、怯える王女ではない。俺と共に戦う、真の聖騎士だ。
エミリアは、冷静に戦況を分析し、俺に最適な攻撃ルートを指示する。
フローラは、俺の背後から聖なる力を送り続け、俺の力を増幅させる。
ヴァルファスは、全ての魔力を同時に放出し、俺を押し潰そうとする。だが、彼の力は分散され、個々が俺のチート能力によって打ち消されていく。
「これで、終わりだ……ヴァルファス!」
俺は、全ての力を込めて剣を振り下ろした。『創世の輝石』の力が剣に集中し、まばゆい光を放つ。その一撃は、ヴァルファスの核へと吸い込まれていった。
「ぐぅあぁぁぁあああああ!! まさか……まさか、人間ごときが……この私を……!」
ヴァルファスは、断末魔の叫びを上げた。その巨大な体が、ゆっくりと、しかし確実に崩壊していく。黒い瘴気が晴れ、終焉の渓谷に、再び光が差し込み始めた。
魔神王ヴァルファスは、消滅した。
その瞬間、戦場には、歓喜の雄叫びが響き渡った。兵士たちは、互いを抱き締め合い、勝利を分かち合う。
俺は、膝をついた。全身から力が抜け、へとへとだ。だが、心には、深い達成感が満ちていた。
セレスティーナ、エミリア、フローラが、俺に駆け寄ってくる。
「王子様……! やりました……! 本当に……!」
セレスティーナが、涙を流しながら俺に抱きついてきた。
エミリアは、静かに俺の顔を見つめ、そして、優しい微笑みを浮かべた。
「これで、世界は救われました。あなた様のおかげです」
フローラは、俺の頭をそっと撫でた。
「貴方は、まさしくこの世界の、真の勇者です」
俺は、彼女たちを抱き締め返した。この「全部盛り」の世界で、俺は英雄として世界を救い、最高の愛を手に入れた。そして何よりも、確固たる自信と、愛する人たちとの確かな絆を手に入れたのだ。
全てが終わった。これで、俺の「全部盛り」の異世界生活は、新たな段階へと進む。




