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第十八話:賢者の助言と、軍との共闘

 アスモデウスとの戦いで、俺の心には深い傷が残った。しかし、三人の愛しい女性たちの言葉が、その傷を癒し、俺の心を支えてくれた。彼女たちの愛は本物だ。その確信が、俺を再び立ち上がらせる。


 夜が明け、俺は執務室に籠もり、【無限の図書館】を広げていた。残る「七つの大罪」は、「暴食」のベルゼブブと、「傲慢」のルシファー……いや、ルシファーは討伐済みだ。


 残るはあと二体。そして、最大の敵、魔神王ヴァルファス。


 俺は、ベルゼブブの項目を注意深く読み進めた。


「ベルゼブブは、あらゆる生命の根源を食らい尽くす。物理的な捕食能力に加え、魂をも喰らう……その破壊力は、これまでの大罪の中でも群を抜く」


 書物の記述に、俺は眉をひそめた。ベルゼブブは、単なる魔王ではない。その影響は、食糧不足や飢餓、さらには生命力の枯渇として現れるという。


 そして、奴の潜伏場所は、王都の郊外にある豊かな穀倉地帯。既に、農作物の生育不良や家畜の病死が報告され始めていた。


(これまでの「大罪」は、俺のチート能力で単独でも対処できた。だが、ベルゼブブは違う。奴の破壊力は、広範囲に及ぶ。これでは、俺一人の力では限界がある……)


 俺は【無限の図書館】で、ベルゼブブに関するあらゆる情報を集め、対策を練った。その中で、ある賢者の記述が目に留まった。


「ベルゼブブは、その強大な破壊力ゆえに、並々ならぬ数の眷属を従える。その眷属の一体一体が、通常の魔物とは比較にならぬ力を持ち、数の暴力で相手を圧倒する。ゆえに、単独での討伐は不可能に近い。総力戦で挑むべし」


 その賢者の言葉は、俺の胸に重く響いた。俺のチート能力は確かに万能だ。しかし、この世界は「全部盛り」。俺一人で全てを解決できるほど、甘くはなかった。時には、人々の力、組織の力が必要になる。


「……軍の力を借りよう」


 俺は静かに呟いた。これまで、俺は自分一人の力で解決しようとしてきた。それは、日本での経験が、俺にそうさせていたのかもしれない。誰にも頼らず、自分で解決する。だが、この世界では、その考えは通用しない。


 俺はすぐに、王宮へと向かった。会議室には、国王陛下と新たに任命された宰相、そして騎士団長バルド将軍が揃っていた。俺の姿を見ると、彼らは一様に驚きの表情を見せた。


「勇者殿、どうなされましたか?まさか、また新たな魔王が……」


 バルド将軍が、険しい顔で尋ねた。


「ええ。その通りです。次の敵は、『暴食』の魔王、ベルゼブブ。奴は、これまでの大罪とは比べ物にならないほど強力です。広範囲にわたる破壊をもたらし、膨大な数の眷属を従えています」


 俺の言葉に、会議室の空気が張り詰めた。


「なんと……! ベルゼブブとは……! それは、古の文献にも記される、最悪の災厄の一つ……!」


 宰相が、青ざめた顔で呟いた。


「ゆえに、今回は皆様の協力が必要です。俺一人では、奴を止めることはできません。王都の軍の力を結集して、総力戦で挑みたい」


 俺がそう告げると、バルド将軍は目を見開いた。


「勇者殿が、我々の力を望むとは……! これは、まさに光栄の極み!」


 将軍は、力強く頷いた。これまで俺が単独で次々と魔王を討伐してきたことで、軍内部でも俺への信頼は絶大だった。


 国王陛下も、深く頷いた。


「勇者殿がそこまで仰るなら、この国の全てを懸けて、貴殿に協力しよう。バルド将軍、全軍に最高警戒態勢を敷き、勇者殿の指揮に従うよう命じよ!」


「はっ!」


 将軍は、力強い返事と共に、部屋を後にした。


 会議室に、セレスティーナ、エミリア、フローラが入ってきた。


「王子様……軍の協力を……」


 セレスティーナが、少し驚いた様子で俺を見つめた。


「ああ。今回の敵は、俺一人では無理だ。それに、この世界を救うのは、俺一人じゃない。みんなの力が必要だ」


 俺の言葉に、三人は安堵したように微笑んだ。


「勇者様が決断されたことなら、わたくしたちは全面的に協力いたします」


 フローラが静かに言った。


 エミリアは、俺の隣に立ち、力強く頷いた。


「わたくしも、この国の一員として、できる限りの協力をさせていただきます」


 セレスティーナは、俺の腕にそっと触れ、その瞳を輝かせた。


「王子様と、皆と一緒なら、どんな困難も乗り越えられますわ!」


 俺の心は、彼女たちの言葉と、軍の協力に、確かな手応えを感じていた。アスモデウスとの戦いで生じた心の傷は、まだ完全に癒えたわけではない。だが、彼女たちの愛と、この国の軍という確かな力が、俺を支えてくれる。


「全部盛り」の世界は、依然として俺に試練を与える。しかし、俺はもう孤独ではない。俺には、愛する彼女たちがいる。そして、共に戦ってくれる仲間たちがいる。


 俺は、王都の空を見上げた。今、新たな戦いが、始まろうとしている。

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