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第十話:強欲の魔王と、王都の新たな危機

 夜が明け、俺は清々しい気分で目覚めた。三人の美女たちが隣で眠っているのを確認し、そっとベッドを抜け出す。新たな自己肯定感を胸に、俺は今日の任務へと意識を切り替えた。


【無限の図書館】で次に特定したのは、「強欲」の魔王、マモンだ。各地で不自然な金銭トラブルや、貴族間の争いが激化しているという情報があった。特に、王都の商会で不正な取引が横行しているという報告が上がっていた。


「マモンは、人間の強欲を増幅させ、富への執着心を狂気に変える……か」


 執務室で朝食を摂りながら、俺は資料に目を通していた。この「強欲」の魔王も、また王都のど真ん中にいるらしい。そして、今回のターゲットとなる商会は、かつて宰相と学園長が資金横領に利用していた組織とも繋がっているようだ。なるほど、やはり「全部盛り」は繋がっている。


 そこに、セレスティーナが元気いっぱいの声で入ってきた。


「王子様! おはようございます! 今日はどちらへ向かわれますか?」


 彼女は完全に俺に懐いており、もはや行動を共にすることが当然のように思っているらしい。


「おはよう、セレスティーナ。今日は、強欲の魔王を討伐しに行く」


 俺がそう告げると、エミリアとフローラも部屋に入ってきた。フローラはいつものように冷静な表情で、エミリアは少し顔を曇らせていた。


「強欲の魔王……また、王都の貴族が関係しているのでしょうか……」


 エミリアの言葉に、俺は頷いた。


「ああ。どうやら、例の商会が絡んでいるようだ。宰相の不正と繋がりがある可能性がある」


 エミリアは複雑な表情で息を呑んだ。彼女にとって、それは自身の過去と向き合うことにも繋がる。


「わたくしも、参ります。この国の膿を、徹底的に出し尽くさなければなりません」


 彼女の目に、強い決意が宿っていた。


「私も同行させていただきます。魔王の力は、聖女の浄化の力で弱めることができるかもしれません」


 フローラも静かに申し出た。彼女は常に冷静だが、その内には世界を救おうとする強い使命感を秘めている。


「よし、決まりだ。今日も、俺たち全員の最強(全部盛り)パーティーで、魔王を打ち倒す」


「はい!」三人の美女はそろって返事を返してくれた。




 目指すは王都最大の商会、「ゴールドアーク商会」。その巨大な建物は、表向きは繁栄の象徴のように見えたが、【覇王の眼】で見れば、そこからは禍々しい魔力が渦巻いているのがはっきりと見て取れた。


 商会の中に入ると、客も店員も、誰もが異常なほどの焦燥感と金への執着を露わにしていた。互いを出し抜こうと必死になり、わずかな利益のために罵り合い、契約を破棄する光景がそこかしこで見られた。


「これは……なんてひどいことを……!」


 セレスティーナが顔をしかめた。彼女の純粋な心には、この光景は耐え難いものだっただろう。


「マモンは、人間の心の隙に入り込むのが得意だ。この商会は、奴の巣窟と化している」


 俺はそう言いながら、商会の奥へと進んでいく。役員室らしき部屋から、特に強い魔力を感じた。


 扉を開けると、そこには商会の会長と、数人の役員たちがいた。彼らは、目の前に山積みにされた金貨を前に、狂ったように笑い合っていた。


 その中心に、醜悪な姿の魔王、マモンが鎮座していた。


 どうやら普通の人間には、マモンの姿が見えていないらしい。まあ、仮に見えていたとしても、今の状態ではその目が金貨以外を見ることは決してないだろう。


 そのとき、マモンがぴくりと反応し、こちらに振り返った。


 ここにくるまでに見た人間たちの狂気を集めてもかなわないであろう、醜悪な魔王がそこにはいた。


「おやおや、お邪魔が入ったようですな。せっかく、この人間どもを最高の強欲の淵へと誘っていたというのに……」


 マモンは、金貨の山に埋もれるようにして、だらしない笑みを浮かべた。


「この強欲の魔王め! 人々の心を惑わすなんて、許さない!」


 セレスティーナが剣を抜こうとしたが、俺はそれを制した。


「セレスティーナ、エミリア、フローラ。奴の精神支配には注意しろ。特に、金への執着心が増幅される」


 俺はそう告げると、マモンに向かって一歩踏み出した。


「お前が作り出したこの歪んだ世界は、ここで終わりだ、マモン」


「ふん、小癪な人間め。この金銀財宝に目がくらまぬとでも言うのか? 貴様も所詮、凡庸な存在に過ぎまい……」


 マモンは不敵に笑い、金貨の山を俺に向けて投げつけてきた。しかし、俺には【神の恩寵:全知全能】がある。金貨一つ一つの軌道まで完璧に見えていた。


「つまらないやつだな」


 俺はそう呟き、軽く手を振った。すると、金貨の山はまるで霧散するかのように消え去った。俺の新たなチート能力、【無尽蔵の創造】が覚醒していたのだ。あらゆるものを無から生み出すだけでなく、逆に消滅させることも可能だ。これは「強欲」の魔王にとって、最も相性の悪い能力だろう。


「な、なんだと!? この、この魔力が……!?」


 マモンは驚愕に目を見開き、金貨が消えた空間を凝視している。


「貴様のような、人の心を歪めるだけの存在は、この世界に必要ない」


 俺は静かにそう言い放ち、マモンに向かって手を翳した。そして、その巨大な強欲の権化を、【無尽蔵の創造】の力で、まるで塵のように消滅させた。跡形もなく。


 マモンが消え去ると、商会の会長や役員たちは、正気に戻ったかのように茫然自失となっていた。


 彼らの狂気に満ちた笑みは消え去り、その顔には深い後悔の念が浮かんでいた。


「あ……私は、一体何を……」


 エミリアは、その様子を静かに見つめていた。彼女の表情には、怒りよりも、むしろ深い悲しみが宿っているようだった。


 エミリアは彼らに話しかけ、ことのあらましを話してまわった。その様は、まさしく人々の幸せを願う貴族としての姿に他ならなかった。


「これで、また一つ、この国の膿を出したな、エミリア」


 俺はそう言って、彼女の肩に手を置いた。エミリアは、ゆっくりと頷いた。


 フローラは、再び俺の力の深さに驚きを隠せない様子で、俺を見上げていた。


「勇者様……貴方の力は、まさしく無限ですね……」


「そうだ、無限だよ」


 俺は穏やかに笑った。この「全部盛り」の世界は、俺のチート能力を存分に振るうための舞台だ。そして、その力を振るうたびに、俺自身の存在意義もまた、確固たるものになっていく。そしてなにより、愛する三人や、多くの人々が幸せになっていく。こんなにうれしいことはない。


 今回の件で、王都の経済は一時的に混乱するだろうが、不正が取り除かれたことで、長期的には健全な発展へと向かうはずだ。これもまた、俺の「全部盛り」の恩恵だ。


 俺は、王都の空を見上げた。まだ「七つの大罪」は残っている。そして、最大の脅威、魔神王ヴァルファスも。


(さあ、次の『大罪』を討伐してみせよう……)


 俺の「全部盛り」の異世界は、止まることなく、さらなる深みへと進んでいく。

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