表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/32

第九話:夜の帳と、愛の宴、そして生きる自信

 賑やかな宴が終わり、王都の屋敷には静寂が戻っていた。広いベッドの上で、俺はセレスティーナ、エミリア、フローラの三人に囲まれて横たわっていた。


 宴の熱気が冷めやらぬまま、月の光が窓から柔らかな光を差し込ませていた。グラスを傾け、他愛のない話で笑い合った後、自然と身体が求め合った。


 俺は屋敷をもらったときに四人で寝られるような大きく丸いベッドを設えてもらっていた。日本で言う、ラブなホテルにあるあれのことだ。


 俺はセレスティーナとエミリアを両脇に、フローラを体の真ん中に抱きながら、ベッドに転がり落ちた。


 三人全員がベッドに仰向けになり、仲間ではなく「女」としての視線を送ってくる。


 もう我慢できない。俺の中の「男」が目覚め、俺たちはさきほどの宴とは違う、愛の宴を始めた。


 セレスティーナは無邪気な瞳で俺を見つめ、細い腕を俺の首に回してきた。その柔らかい唇がそっと俺のそれに触れ、甘い吐息が交じり合う。


 エミリアは、普段の冷静さを忘れ、熱に浮かされたように頬を染めていた。俺の呼びかけに、はにかむようにその身を寄せてくる。彼女の指先が俺の胸元を辿り、秘めた情熱が伝わってくるようだった。


 フローラは、聖女としての厳かさを解き放ち、その白い肌は月光を吸い込み、どこか幻想的だ。慈愛に満ちた眼差しで俺を見つめ、そっと手を握ってくれた。その掌から伝わる温もりが、互いの心を結びつける。


 言葉はなくとも、眼差しと触れ合う肌が全てを語り合った。それぞれの体が求めるままに、優しいキスを交わし、互いの温もりを感じ合った。それは激しい情熱というよりも、安堵と信頼に満ちた、月明かりのような穏やかな愛の交わりだった。互いの吐息が混じり合い、魂が共鳴し合うような、満たされた時間が流れていく。彼女たちの存在が、俺の過去を優しく包み込み、未来への希望を灯してくれる。


 そして今、安らかな寝息を立てている三人の髪をそっと撫でる。セレスティーナは無邪気に俺の腕にしがみつき、エミリアは少し離れてはいるものの、穏やかな寝顔を見せ、フローラはまるで聖母のような微笑みを浮かべていた。


 俺は、そんな彼女たちの髪をそっと撫でる。昼間は世界を救うために奔走し賞賛を我が物にし、夜はこうして最高の美女たちに囲まれる。まさしく、夢のような「全部盛り」の生活だ。


 俺は日本にいた頃は、全くのろくでなしだった。特に取り柄もなく、社会の役に立っているという実感もないまま、ただ漠然と日々を過ごしていた。


 親には心配をかけ、友人には呆れられ、仕事も転々としていた。そんな俺が、異世界に転生し、際限なしのチート能力によるものとはいえ、こうして多くの人の役に立っている。魔神王を打ち倒し、王国の不正を暴き、悪役令嬢の汚名を晴らす。今までしてきたことや、これからやるべきことが、俺自身の喜びになっていることに気づいた。


 特に、エミリアが安堵したように息を吐き、これまでの苦しみから解放されたような表情を見せた時、俺の心には、これまで感じたことのない温かい感情が湧き上がった。


 俺は彼女の人生を良い方向に変えることができた。それは、俺が日本でいくら努力しても得られなかった、確かな自己肯定感だった。


 この世界では、俺の「全部盛り」のチート能力が、そのまま人の役に立つ。人々は俺を英雄と呼び、感謝し、尊敬の眼差しを向ける。


 それは、日本で得られなかった承認欲求を満たしてくれるだけでなく、俺という存在が、この世界で確かに必要とされているという実感を伴っていた。


 セレスティーナの寝顔を見つめる。彼女は王女としての重責を背負いながらも、俺の前では年相応の少女のような表情を見せる。俺が彼女を守り、彼女の国の未来を切り開くことができる。そのことが、俺の自信になっている。


 フローラは、神聖な存在でありながらも、時に人間らしい感情を見せる。彼女が俺に寄せる信頼は、俺が単なるチート能力者ではなく、一人の人間として認められている証拠だと感じられた。


 俺は、静かに夜の帳に包まれた部屋を見渡した。窓の外には満月が輝き、王都の灯りが瞬いている。この平和は、俺が手に入れて、みんなが俺にくれたものだ。


「俺は、この世界で、生きていていいんだ」


 俺はぽつりとつぶやいた。チート能力は与えられたものであって、確かに俺自身の力ではない。だが、それを使って人々を救い、笑顔を取り戻すことができたのは、俺自身の選択であり、行動の結果だ。


 この「全部盛り」の異世界は、俺にとっての再生の場所だった。かつてのろくでなしだった俺は、もういない。ここにいるのは、自分の力で世界を良い方向へ導き、大切な人々を守ることができる、新しい俺だ。


 三人の美女たちの寝息を聞きながら、俺は深い満足感に包まれた。明日は、また新たな試練が待ち受けているだろう。しかし、もう恐れるものはない。俺は、この「全部盛り」の世界で、堂々と生きていける。


「ありがとう、みんな」


 俺は三人を起こさないように、静かにベッドに戻りながら、そうつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ