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誕生日のプレゼント

正直まだ設定が固まりきっていないので、とりあえずプロローグとなるお話の投稿です

俺は今日、10歳になった。


俺の家はどこにでもある一般家庭であり、父は様々な依頼をこなす冒険者として、我が家の家計を支えている。


この間、ランクが3になったと喜んでいた。


母はいわゆる専業主婦。父が職業柄あまり家に居ないので、1人で家事全般をこなし、俺の面倒を見てくれた。


家族仲は良好。父はしっかり母を労うし、母はいつも父の心配をしていた。


父も今日は仕事を休み、2人で俺のお祝いをしてくれた。


危険なモンスターが蔓延るこの世界では、10歳に満たずに命を落とす子供も少なくない。


そんな世の中なので、10歳の誕生日は盛大にお祝いするというのが一般的だ。


「リオンももう10歳か!早いものだなぁ」

父がしみじみと言う。

「あと5年で成人なのねぇ やっぱり冒険者になるの?」

母が少し心配そうに言う。


冒険者家業は危険と隣り合わせだ。モンスターの討伐に始まり、古代文明の遺跡調査、はたまた隣町までの運び屋など、依頼は多岐にわたるが、やはり危険が多い。


母としては本当は反対したいんじゃないだろうか。それでも俺を尊重して応援してくれる。


「物心ついた時からの夢だからね。やっぱり叶えたいと思うよ」


俺はそのためにずっと父さんに色々教わってきた。そしてこれから5年間もしっかりと身体を鍛え備えるつもりだ。


「リオンはやっぱりエルネアのギルドに登録するのか?」

「そのつもりだよ」


ギルドとは冒険者が依頼を受けるために登録する組織だ。依頼主から直接依頼を受けることもあるらしいが、一般的にはギルドを仲介して依頼を受ける。


もちろん仲介手数料はかかるが、直接の依頼だと何かとトラブルになりやすいのでよっぽど訳ありでもない限りみんな登録するだろう。


俺ももちろん登録するつもりだ。エルネアとはここから馬車で5日ほどの距離にある大きめの都市だ。俺が住んでるここの村にもギルドはあるが、やはり依頼が多く来るのは都市ということで、15歳になったらエルネアに行こうと考えていた。


父さんも初めはエルネアで依頼を受けていたそうだ。俺が生まれた時に村に帰ってきたらしい。


「確かにしっかり稼ぐならエルネアが1番だろうな。王都のギルドまで行くとなると結構な距離があるし、依頼の難易度も高めって話だ」


「エルネアで冒険者の経験を積んで気が向いたら王都にも行ってみるつもりだよ」


「俺は王都のギルドは行ったことないからな。もし王都のギルドに行ったらどんな感じか教えてくれ」


父さんは冒険者家業が好きだという。些細なことでも人の助けになるのは嬉しいそうだ。俺にはまだ分からない感覚だな。


「それはそうとあなた、プレゼントがあるんでしょ?」


「おお!そうだそうだ!実は蔵の奥から出てきてな、いつのものかは分からないんだが貴重なもののようだからリオンに渡そうと思ってたんだ」


「プレゼント?」


父さんは別の部屋から1本の杖と1冊の分厚い本を持ってきた。魔法を使う時の補助として用いられるのが杖だが、一般的な杖は整形した木材にモンスターが持つ魔石を組み込んだものが多い。金属製のものや、薙刀のように先端に刃をつけ、近接戦でも武器として使えるようにカスタマイズしたものなんかもある。


薪に火をつける程度の弱い魔法ならわざわざ杖は使わないが、戦闘においてモンスターを焼くような強力な魔法は杖がないと厳しいって感じ。


だがこの杖は不思議な作りだった。長さは俺の身長ほどあるいわゆるスタッフと呼ばれる長いタイプの杖のようだが、素材がまるで分からない。色は黒で少し光沢があるが、金属って感じの光沢ではない気がする。杖の先端には円柱のような透き通った石がついているが、魔石では無さそうだ。


本の方もあまりにも作りがいい。表紙は革だろうか。金色の装飾が施されているが、主張しすぎない上品な感じだ。


「俺と母さんは魔法のことはさっぱりだからな。リオンは魔法好きだっただろ?」


父の言う通り俺は魔法が好きだ。5歳の頃に蔵にあった魔法入門という本を両親に読んで貰いつつ初級の魔法をいくつか習得していた。エルネアに行きたいひとつの理由でもある。エルネアには大きい本屋があり、魔法関連の本もいくつか取り扱っているらしい。


俺は机に置かれた杖を手に取った。金属のような見た目に反して結構軽い。


『所有者の情報を確認します』


なんだ!?頭の中に感情を感じない無機質な声が聞こえる。


『所有許可を確認中...管理者権限を確認しました。』


『続いて”鍵”を確認中...確認できませんでした。”鍵”に触れていることを確認してください』


なんだ?鍵??そう思いながら俺はふと机に目を向ける。そこには杖と一緒に父が置いた本がある。俺は本を手に取った。


『再度”鍵”を確認中...確認しました』


『新規所有者の情報を登録します』


『所有者、リオン

所有許可、管理者権限”世界の書”

登録完了しました。これより初回起動を開始します』


その声とともに先端の石が赤く光り、点滅しだした。両親を見ると2人とも驚いて固まっている。2人とも何も知らないようだ。しばらくして石の点滅が止まり、色が青色になる。


『初回起動完了、使用可能になりました』


その声が聞こえた時、俺は突然頭痛に襲われた。なんだこれ...


「う...うぁああ!」


あまりの痛みに俺は叫んだ。これはやばい俺死ぬのか...?


両親が慌てているのが微かに分かる。しかしそれに反応する余裕は無い。そのまま俺は意識を手放した。


―――


俺は不思議な空間にいた


上も下も分からない


見渡す限り真っ白な空間


「ここは...」


俺は呟いた。


「俺は死んだのか?」


『否、あなたはまだ生きています。』


その声が聞こえた時目の前に人影が現れた。


「あなたは...?」


俺は不思議と冷静だった。なぜならここを知っている気がしたからだ。


『私は世界の書、あなたと生まれながらに共にある存在』


そう言うと人影が形を変えた。人影がいた場所には1冊の本がある。


「世界の書...」


俺はその本に近づく。本はひとりでにパラパラとめくれだした。そこに書かれているのはおそらく文字。しかし俺が知っている文字ではない。


読めなくても頭の中に意味が自然に伝わってくる。不思議な感覚だ。


その本が閉じた時、俺は目を覚ました。



「「リオン!」」


両親が涙を流しながら俺の顔を覗き込んでいる。そうだ俺は頭痛に襲われて意識を失ったのか。


俺はベッドに寝かされているようだ。上半身を起こしてみる。ふむ、問題なさそうだな。頭痛もすっかり消えていた。


「お、おい、大丈夫なのか!?」


「無理しないでね」


「大丈夫だよ。父さん母さん」


2人を安心させつつ、俺は部屋を見渡す。あった。


少し離れた机に杖と本が置いてある。俺はそっちに手を伸ばした。すると杖の先端が青く光り始め、ひとりでに俺の方へ浮遊してくる。


杖は俺の手に収まり、本は近くに浮いている。


「これはいったい...?」


両親が非常に驚いている。世界の書に教えて貰ったとはいえ実際に浮遊してるのを見るとなかなかおもしろい。


そう、俺はこの杖と本がどういうものなのか分かっていた。


2人に簡単に説明する。

「これは古代文明の遺産。そして超級魔法の触媒だよ」


「超級魔法だって!?実在するというのか...!」


父は魔法に詳しくないとはいえ、冒険者なので知っているようだ。母はよく分からなそうに首を傾げている。


「超級魔法は古代文明時代の魔法なんだ。もう失われたと言われている」


父が言うと、よく分からないがなんだかとんでもないものということが母にも伝わったようだ。驚いた顔をしている。


「と言ってもまだ扱える魔法はそんなに多くないみたいだ」


そういうと本がひとりでに開いた。そこに書かれているのは古代文字。これは呪文だ。一般的な魔法は行使する時に術者が詠唱する必要がある。無詠唱や短縮詠唱といった技術もあるが、基本的には詠唱する。


俺は近くのグラスを見た。すると古代文字の1行が光り、グラスが浮かび上がる。


「まぁ!」

「これは...」


両親が驚く。2人とも驚きっぱなしだな、まあ仕方ないけど。


「これは浮遊の魔法。詠唱は本が肩代わりしてくれるんだ」


浮遊の魔法は現代魔法だと上級魔法の中でもかなり上位の魔法だ。


「それに触媒をかえした超級魔法は魔力を消費しない」


「魔力っていうと、魔法を行使する時に消費するエネルギーだったか?それを消費しないとなると...いやはやとんでもないものをプレゼントしたようだな」


母は若干置いてきぼりだが、父は驚きを通り越してもはや冷静になっていた。


「まだ扱える魔法が少ないというのはどうゆうことなんだ?」


さすが冒険者、ひととおり驚き終わると冷静に気になることがでてきたようだ。


「この本...魔導書は完全じゃないみたいなんだ。超級魔法を生み出した古代人たちはたいそう喜んだ。古代文明にもともと魔法と言う概念はないからね。今で言う超級魔法はいわば原初の魔法、初めて生まれた概念だった。はじめは生活にうまいこと利用していた。でも今も昔も人は争う」


「つまり魔法の軍事利用か...」


「そう、魔法は手軽で強力な兵器として運用され始めた」


魔法を生み出した古代人たちは人々をより豊かにするために研究していたはずだった。しかし結果はより多くの人が傷つくようになってしまった。その悔しさといったら俺が想像できるものじゃないだろう。


「そこで古代人は考えた。信頼できる人だけが魔法を扱えるようにしようと。そのために生み出されたのが」


「その杖と魔導書ってわけか」


さすが父は察しが良い。母は冒険者ではないが、話の概要はなんとなくわかったようで、真剣に話を聞いている。


「そう、そして魔導書は分割して世界各地にバラしたんだ」


これが俺が世界の書に教えてもらったことだ。まだわからないことも多いが、とりあえずこれらが何なのかがわかったのはよかった。


「父さん。俺はこれを冒険者家業で使いたいんだ。でも今話したとおりとても危険なものでもある。それでももらっていいかな」


父は少し考える素振りを見せたが、すぐに笑顔で頷いた。


「もちろん!それは誕生日プレゼントだし、お前なら使い方をまちがえないと信じているよ」


「母さんは?」


「わたしでもそれが危険なものなのはわかったわ。でもリオンなら大丈夫よ」


「...ありがとう」


俺は少しばかり涙をながした。


「さあ!暗い話はこれくらいにしましょう!今日はめでたい日なんだから」


母の言葉に俺と父さんはうなずいた。

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