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後編 「事件の全容」

 さて、かのゴーストライターに会ったので、話した内容を書こう。


 まず、最初に断っておくが、ゴーストライターは刑期を終えて今は普通の暮らしをしている。当事者の生活の安全と昨今のポリコレやコンプラ事情を考慮して、M氏とさせていただきます。つまり、守秘義務というやつです。


 また、私がなぜ、M氏とコンタクトをとれたことも秘密にさせていただく。


 私:「こんにちは、まずはこの機会を頂けて感謝します」


 M氏:「こんにちは、私も10年の時が経って、真実を私の口から話したいと思ってました」


 私:「まずは、2009年からの経緯をお願いします」


 M氏:「私は当時、ボカロや洋楽にハマるただのオタク大学生でした。覚えてます?…当時、ニコニコ動画のほうが流行っていて、日本ではYoutubeの人気がない時期でしたよね」


 私:「確かに、あの当時はニコニコ動画が流行っていましたね。コメントが流れるのとか、他の人と一体感があってよかったですよね」


 M氏:「実は、私あれが苦手で、Youtubeで活動していたんですよ。でも、再生数もあんまりなくて...」


 私:「時代が時代でしたからね」


 M氏:「大丈夫です。まあ、私の歌唱力自体、お世辞にも高いものではなかったので(笑)」


 私:「その...その活動がY@MIKAさんの楽曲制作をすることにつながったのですか?」


 M氏:「実は...Y@MIKAは私のサークルの姫だったんですよ」


 私:「え」


 私:「Y@MIKAがサークルの姫って、どういうことですか?」


 M氏:「いや、正確には元サークルの姫なんです。もともと、私とY@MIKAは同じ大学に通っていて、彼女はすぐに大学を辞めたんですけど、彼女とは、私の所属していたサークルの中でちやほやされていた姫でしたね」


 私:「踏みいって恐縮ですが、なんで辞めたか聞いても...」


 M氏:「スーパーフリー事件って知ってますか?あれと似てますよ」


 私:「確か、大学生サークルで酒を飲ませて女性に乱暴していた...」


 M氏:「彼女ね。別な大学の学生と一緒になって、女の子を集めて同じようなことして、お金を稼いでいたんですよ」


 確かに、男性から誘うと警戒されるが、女性から勧誘すると、警戒されない。


 M氏:「それで、それが大学にバレる前にやめた。ただ...私、彼女と連絡先交換していたんですよ」


 私:「サークルの姫だからですよね」


 そういうと、M氏は苦笑した。


 M氏:「そうなんですよ。それに彼女、歌が途轍もなく上手かったんです。それが、姫になった理由かも(笑)」


 まさに歌姫ってやつか。彼はそれが言いたいのだろう。


 M氏:「それで、彼女が退学してちょっと経った頃かな。彼女から連絡が来たんですよ」


 私:「それが楽曲提供のきっかけ?」


 M氏:「そうなんです。『Mくんの歌、動画で聞いたよ。あたしにも一曲作って~』。正直、嬉しかったです。で、頑張って作ったんです。その当時、流行っていた洋楽とか趣味でやっていた電子音楽とかボカロとか参考に...」


 私:「その曲が?」


 M氏:「彼女のデビュー曲ですよ。でも、それからが地獄でしたよ」


 私:「地獄ってどういうことですか?」


 M氏:「その通りですよ。あの一曲を皮切りに次々曲提供を依頼してきたんですよ彼女」


 私:「え...それじゃあ。あのファーストアルバムは?」


 M氏:「ほぼほぼ私が書いた曲ですよ」


 私:「でも、それじゃあ。なんで黙っていたんですか?あれだけヒットしたんですよ。普通言いますよ」


 M氏:「いや...その彼女がいろいろ初めてだったんですよ」


 M氏は俯いて答えた。もしかして...。


 私:「その当時、出来ていた?お二人が?」


 M氏:「はい。まあ、俺の女がこれだけ有名になっている。その陰で頑張る俺カッコいい。当時はそんな青臭い中二病的な感情で頑張っていましたよ」


 そんな過去があったなんて...。


 M氏:「1年間だけ、彼女のために頑張って、それからはかなり大変でしたよ。大学の単位がきつくて。ほぼ単位を落として、頑張って残りの大学生活で取り戻して...」


 私:「だから、彼女は1年で活動を中止したんですね。楽曲提供者がいなくなって...でもその間、彼女とは?」


 M氏:「『お互いに忙しいし、今は会わないで我慢しましょう』ですって...まあ常套手段ですよ。」


 苦笑しているが、どこか当時の自分も笑っているようだった。


 M氏:「それから、3年間。彼女と音沙汰はほぼなくなって、俺が就職したときですよ。Y@MIKAの再デビュー」


 私:「Y@MIKAさんから連絡が来た。それも就職してから」


 M氏:「酷いですよね。勝手に事務所から発表して、連絡するなんて...」


 利用しようとしていたのだろう。事務所が知っていたかはわからないが、彼女はM氏を利用していたのだろう。


 私:「それで...連絡を?」


 M氏:「正直。迷いましたよ。それで連絡を先延ばしにしていたら、あれですよ」


 私:「既婚者との浮気報道ですよね。」


 M氏:「正直。仕事も忙しくて、あれでプツンきましたよ。彼女に連絡しても『事務所が言っている通り』だなんて...」


 それが、真相なのか。彼女の裏切りでキレて、あんな脅迫文を...。


 確かに、報道にある彼女の個人情報や家族に関する驚愕の情報も納得がいく、それに彼女にゴーストライターがいるなんてこと、公にされれば、今までの彼女のヒットメーカーとしての知名度もなくなる。


 M氏:「俺もかなり頭にきて、いろいろ書きましたけど、まさか大事なことは隠して警察に伝えるなんて、芸能界も闇が深いですね...」


 私:「確かに、警察の公表で、ゴーストライターがいることが分かりましたよね」


 芸能事務所はY@MIKA事件の最中、ファーストアルバムの楽曲の着うたなども含めて売り上げが伸びたという。いわゆる、炎上商法だろう。


 私:「ありがとうございました。お忙しいところ、お時間頂いて」


 捕まってからのことは、守秘義務として書かないこととする。最後に、私は気になる質問をした。


 私:「今のY@MIKAさんについて、何か知ってますか?」


 M氏:「知りませんよ。携帯番号も替えてますし、一生かかってこないことを願います(笑)」


 以上がY@MIKA事件の全容だ。いかがだっただろうか。


 注)この話はフィクションです。実在の人物や団体、出来事などとは関係ありません

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