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「…だって、小崎くんとしゃべってると、ドキドキしちゃって困るんだもん……」
「!!」
素でそんなかわいいことをいう水野さんに、僕までドキドキしてきた。
「…僕だって、今ドキドキしてるよ?」
薄暗くてよくわからないけど、きっと、今二人とも真っ赤な顔をしてるんだろう。
「………じゃあ、帰ろうか?」
僕はそう言うと、うつむいてる彼女の左手をとりそっと手をつないだ。
水野さんが顔を上げて不思議そうに僕を見つめる。
僕は水野さんの手を一度ぎゅっと握って、ちょっと照れながら言う。
「…しゃべらないから、このまま玄関まで行こう」
「えっ……?」
僕は彼女から否定が帰ってくる前に、手を引いて歩き出した。
僕たちは人のいない一階の廊下を静かに歩いた。
辺りは静まりかえり、僕たち二人しかいないみたいだ。
夜の学校で彼女と手をつないで歩いてるなんて、なんだか不思議な感じがする。
人に見られるかもしれないと、ちょっと下を向いて歩いてる水野さんが可愛い…。
僕は彼女を安心させるように言った。
「大丈夫だよ。
もう校内の生徒はみんな帰ってるみたいだし。
玄関までは誰にも会わないよ」
「………うん」
彼女が安心したように僕をみて笑う。
僕も彼女に笑い返す。
でも、水野さんにはああ言ったが、もしかしたら誰かに見られるかもしれないというスリルで、僕の胸は速いリズムを刻み続けていた。
無事に誰とも会わずに玄関までたどりついた僕たちは、靴を履き替えてから暗い夜道を歩き出す。
水野さんは僕の半歩後ろを歩いていたが、ふいに、僕の右手に温かいものが触れた。
ドキン!
初めて、水野さんから手をつないできた…。
温かい彼女の手を握り、僕の胸は再びドキドキと高鳴り始めた。
「誰かに見られるかもしれないよ?」
「………いいの…」
僕が訊くと、水野さんは恥ずかしそうにしながらも答える。
かわいい…。
胸がキュンと疼いて、僕は彼女の手をぎゅっと握る。
すると彼女も、僕の顔を見上げ、僕より少し小さな手できゅっと握り返してきた。
つないだ彼女の手のぬくもりが僕の心まであったかくする。
僕たちは水野さんの家につくまで、ずっと手をつないで帰った。
寒い夜道を歩きながら、僕は幸せな気持ちで隣にいる彼女のぬくもりを確かめていた。